「通信文化新報」特集記事詳細

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第6988号

【主な記事】

ユニバの持続的な確保を
郵便局活性化委 土曜休配で議論

 情報通信審議会郵政政策部会第17回郵便局活性化委員会(米山高生・主査=東京経済大学経営学部教授)が5月8日開かれ、「日刊紙の土曜配達や当日配達」「速達郵便料金改定」「パブリックコメントに対する同委員会の考え方」について活発な議論が行われた。日本郵便からは「日刊紙の土曜配達は対応したいが、料金はコストを分け合う形で、割増料金にする」「速達料金の1割程度値下げ」の2つの意見が提案されたが、両方とも赤字幅拡大につながることから、委員からは「新聞だけ特別扱いすること」や「ユニバーサルサービスの持続的な確保を優先させる」など、必ずしも賛成できないという意見が大勢を占めた。

 「郵便サービスのあり方に関する検討 論点整理案」のパブリックコメントは3月9日から募集が始まり4月8日に締め切られた。その結果、52件の意見が寄せられた。内訳は個人22件、団体29件、匿名1件。団体は全国郵便局長会や日本郵政グループ労働組合、日本メーリングサービス協会、日本新聞協会、日本新聞販売協会、新聞各社、ヤマト運輸など。
 これらの意見のうち40件が日刊紙の関係機関で、土曜休配に反対の立場。その理由の大半は「新聞は日本の民主主義や文化を支えており、発行日に届いてこそ価値がある。第3種郵便物は社会の発展に資するための制度で、民営化後も維持されている。日本社会や文化への影響を含めて土曜配達に対応してもらいたい」というものだ。
 全国郵便局長会は、土曜休配や送達日数の1日繰り下げなどの制度変更について「ユニバーサルサービスの将来にわたる安定的確保や働きやすい環境の整備の急務という観点から、制度対応を早急にしていただくことが重要」との意見を提出した。
〈日刊紙の土曜配達は継続。速達体制の中でコスト吸収〉
 日刊紙の土曜配達について日本郵便の諫山親執行役員副社長は、同委員会で「日刊紙の引受当日配達については、引き続き実施したい。土曜休配についても、現在引受当日配達を行っているものについては続ける。費用の負担は、コストを分け合うという発想も必要だという意見を踏まえ、新聞社、新聞販売店に一定の負担をいただきたい」と提案。
 料金については、200グラムまで59円の低料3種郵便物(月3回以上発行)で、約1・5倍の90円程度を想定しているという。
 土曜配達に伴う業務の内部体制とコストについては「土曜の新聞配達は、速達体制の中でコストを吸収していきたい。配達に間に合う時間までに持ち込んでもらうことで、何とか対応したい。第3種は赤字で、90円にしてもコストは賄われていない料金だが、経営判断した」と説明した。
 藤沢久美委員は「時間軸を長く取り、目線を広くした場合、止めるという選択肢もあるのではないか」、根本直子委員は「情報通信の多様化、電子化など社会が変わる中で、日刊紙だけ特別扱いをするのがよいのか。土曜配達による追加負担や労働力は確保できるのか」との意見。
 関口博正専門委員からは「費用負担について考えれば、例えば鉄道運賃の場合、学割や障害者割引などの割引制度がある。その理由は、教育は国の将来的に必要な人材を育てるからというもの。割引分は利用者の内部補助で払っている。これは全国民に効果があるという外部効果によるもの」と指摘。
 そして「国全体のものを特定の利用者に払わせるのはおかしいのではないかと思っている。郵便も同じで、新聞が知る権利や文化、健全な民主主義のために必要というのであれば、国家全体に対して重要な役割があるとして、利用者ではなく国が払うべき。新聞だけ特別に安い料金にして、特定の利用者に払えというのであれば、費用負担についてはもっと議論すべき」と意見を述べた。
〈速達料金は1割引下げを検討、損益は10億円悪化〉
 速達料金についても日本郵便では、値下げで検討している。
 諫山執行役員副社長は「料金を1割程度引き下げる方向で検討している」と割引率を明らかにしたうえで、その根拠として「速達は年間で8100万通あり、値下げと土曜休配により、その1割程度の800万通が速さを求めて速達に移行する」との見込みの数字を挙げた。
 また、速達の利用と収益については「速さというよりは重要な郵便物を示すために利用する場合が多く、値下げによる利用増はあまり大きくない。価格弾力性が低いサービス。速達の利用数を8900万通と仮定すると、値下げによる収益減は9億円弱。損益は10億円弱悪化する。大幅な値下げは難しい」と述べた。
 東條吉純主査代理の「料金は一端、下げると次に値上げするのは大変。速達に価格弾力性がないのになぜ、1割下げる経営判断をしたのか」との質問に、諫山執行役員副社長は「サービスレベルを見直した時に、それを補う形で埋もれたニーズに対応できるよう、使い勝手の良い料金にすることが必要と判断した」と説明した。
 東條主査代理は「特殊取扱は虎の子の黒字。郵便全体が恒常的に赤字になれば税金投入しかなくなるので、きちんと考えてもらいたい。ユニバーサルサービスの持続的な確保が唯一のミッションだ。土曜休配や送達日数の繰り下げは、速達料金引下げの交換条件ではない」、根本委員は「国民が望んでいるのは、採算が取れる状況でユニバーサルサービスを長期的に維持できることだ」と意見を述べた。
 また、速達の値下げとサービスレベルの関係について、諫山執行役員副社長は「普通郵便と速達は速度という点で、サービスレベルの差がなくなっている。そういう中で、速達料金は下げてこなかった。速達のニーズは、翌日配達と重要な郵便物であることを示すことにある。普通郵便に占める速達の割合は、これからも少なくなっていく。値下げにより利用割合は増えると思うが、値下げによる速達のニーズの掘り起こしは考えていない」と発言した。
〈選挙運動用も土曜配達。選挙期間の長いものは検討〉
 土曜休配と送達日数の1日繰り下げにより、選挙運動用のはがきも影響を受ける。投票日が日曜日のため、現在なら金曜日に出せば土曜日に届くが、見直し後は水曜日に出さなければ、投票日前には届かない(土曜は配達しないので金曜日に届かなければならない)。
 このまま制度通りの配達をすれば、既にリストを持っているベテランとリストが整備されていない新人では差が出ることから、公平性が担保されないという問題が起きる。選挙関係ではこのほか、病院や施設に入居している人が利用する郵便による投票についても、投票用紙を1日前倒しで請求しなければならない。
 選挙用はがきについて諫山執行役員副社長は「選挙用はがきについては土曜配達を行いたい。ただ、選挙期間が長いものと短いものがあるが、長いものまで翌日配達を維持する必要があるのか、国の考えをお聞きしたい。それを踏まえたうえで対応したい」と意見を述べた。
 選挙運動用通常はがきについては、今後も総務省の郵政行政部と選挙部、日本郵便の3者で対応策を協議する。


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