「通信文化新報」特集記事詳細

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第6987号

【主な記事】

前島密翁 没後100年
[墓前祭]偉業を偲び受け継ぐ


 没後100年となる「前島密墓前祭」が、神奈川県横須賀市芦名の浄楽寺で4月27日に挙行された。「日本文明の一大恩人前島密翁を称える会」(吉﨑庄司会長/元・鎌倉材木座局長)が主催し、毎年行われている。前島密翁の没後100年目に当たり、墓前祭に集まった参列者は改めて偉業を偲び、偉大な遺産の継承を誓い合った。

 浄楽寺本堂の前には称える会、生誕の地・上越市の「前島密翁を顕彰する会」(堀井靖功会長)をはじめ、親族の髙田興治さん、日本郵政の長門正貢社長、日本郵便の髙橋亨会長、横山邦男社長、大澤誠副社長、諫山親副社長、ゆうちょ銀行の小野寺敦子常務執行役、かんぽ生命の植平光彦社長、通信文化協会の斎尾親徳理事長、全国郵便局長会顧問の徳茂雅之参院議員、浦野修顧問、青木進会長、山本利郎副会長、長谷川英晴副会長、浦瀬孝之副会長、渡邊伸司専務理事ほか、日本郵政グループ、全国郵便局長会の多くの会員、OBら約400人が参列した。
 吉﨑会長が「平成最後の没後100年の墓前祭に参列いただいたことに感謝。称える会は平成11年の没後80年に設立し、墓前祭開催に向けて、墓所や参道の工事・改修を行い、無事に初の墓前祭を開催して以降、毎年開催している」と強調。
 「本年は没後100年の節目の年、墓前祭との関係が深い会社や団体のほか、全国から多数の方々の参列をいただくとともに、全国郵便局長会ほか多数の方々の尽力で盛大に開催することができ、心から感謝申し上げたい。今後も郵政事業の発展に努力して翁の遺徳を偲び、長く後世に伝えてまいりたい」とあいさつした。
 横須賀市の上地克明市長は「偉業の本質は二つに表せられる。一つは後世にその存在が意識されなくなるもの。わが国の郵便制度はまさにその通りで、誰もが当たり前のことと考えている。二つ目は偉人の遺志を継ぐ者が現れること。ここに参集の皆さまをはじめ、大勢の方々によってしっかりとその遺志が受け継がれて今日がある」と祝意を述べた。
 上越市の村山秀幸市長は「前島密翁の生誕の地であることを誇りとしながら、翁にゆかりがあり、主体的に活動に取り組んでいる皆さまと共に、功績をしっかりと顕彰しながら、後世に伝えていくことが必要と考えている。『縁の下の力持ちになることを厭うな。人のためによかれと願う心を常に持てよ』との翁の言葉は、今を生きる我々の心にも響く普遍性がある」と語った。
 長門社長は「日本郵政グループが日本を代表する企業グループになれたのは、148年前の新暦4月20日に東京・大阪間に官営の新式郵便システムを開始した前島密翁ほか先人たちのおかげだ。現在仕事を担っている経営陣は、駅伝のランナー。この時代に経営を預かっている我々は、翁の初心、覚悟、志を常に胸に刻んで、恥じないような仕事をやっていきたいと思っている」と述べた。
 徳茂参院議員は「前島翁の偉業は、郵政事業に留まらず、鉄道や大学、新聞、電信など近代国家の礎となるものだ。にもかかわらず、その偉業を多くの日本人が知らないのはなぜか。それは『縁の下の力持ちになることを厭うな』との名言にあらわれている。国を支える、世のため、人のために尽くす、この気持ちを多くの郵政事業に関わっている皆さまが遺志を引き継いで、郵政事業・郵便局が発展してきた」と語った。
 次いで、郵便局の木に制定されているタラヨウ(多羅葉)の記念植樹が行われ、吉﨑会長、浄楽寺の土川妙真住職ほか来賓代表がスコップを手に苗木に土を盛った。その後、参列者は本堂前に設けられた焼香台の前で前島密翁・なか夫人を偲んで手を合わせた。
 天候の影響もあり、横須賀市の佐島マリーナに会場を移し催しが続けられた。日本郵便の髙橋会長は「郵政事業の足元は順調だが、時間軸を長く取ってみると、急速な世の中の流れにより、様々なことがこの先に待ち受けていると心している。100年という大きな節目に、前島密翁のかつての取組みに想いを共にする皆さんが多く集まった。これから郵政事業を皆さんと一緒に大きく変えて乗り切ってまいりたい」と語った。
 全特の青木会長は「没後100年に当たる今回の墓前祭には、12地方会の会長全員が出席した。翁の精神は今も郵便局長に脈々と引き継がれている。目標を抱いている者はどんな艱難辛苦にも耐えなければならず、耐える者が目標を達成できる。翁の信念に思いを馳せ、一丸となって艱難辛苦を乗り越えていくということを墓前の前で祈った」と述べた。
 早稲田大学の佐藤宏之理事は「早稲田大学には80人を超える校賓の方々がおられるが、校賓名鑑の最初に掲げられているのが前島密翁。早稲田大学は、翁の草創期の尽力なくしては存在し得なかった」と明かした。
 称える会の高原耕三顧問は「前島翁が目指した精神は、国力の強化と庶民の救済。そのためには、逓信事業の一体化のほか、全ての事業の総合が翁の考えるところだった」と語った。
 親族の髙田氏は「今日の墓前祭があるのは、称える会をずっと一生懸命やってこられた吉﨑会長のおかげ」と功績を称えた。
 早稲田大学横須賀三浦稲門会の渡辺重博会長は「早稲田大学の前身の東京専門学校は前島密翁が創設されたものと私は思っている」と語った。
 通信文化協会の斎尾理事長は「迷った時は原点に帰れという言葉がある。民営化が決まった平成にあって、前島密翁の創業の精神がこれほど強く意識された時代はなく、翁の創業の精神に支えられた時代はなかった。本当に感謝したいと思う」と述べた。
 全特顧問の柘植芳文参院議員、ゆうちょ銀行の池田憲人社長のレタックスが代読された後、記念撮影が行われた。 南関東支社の清水不二雄支社長の発声で献杯。称える会の北風雄副会長が中締めを行った。
 参列者は前島翁の精神を次代に受け継ぐことを誓い散会した。


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