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第6985・6986合併号

【主な記事】

株価、連結業績などで判断
[日本郵政] 長門社長 かんぽ生命の株式売出し

 日本郵政の長門正貢社長は4月22日の定例記者会見で「ゆうちょPay」のサービス開始、かんぽ生命株式の第2次売出し、日本郵政株式の第3次売出しで財務省が主幹事証券会社の募集を開始したことなどについての所見を明らかにした。かんぽ生命の株式では「株価や日本郵政の資金需要、連結業績への影響を勘案し売出しを決定した」と強調した。また、日本郵政の株式についても「早期売却は郵政民営化法に沿うもので、復興財源の確保に直結することから、必要に応じて事務的な準備を進める」との考えを示した。

 会見では、まず5月8日からスマートフォンを活用した新しい決済サービス「ゆうちょPay」の取扱いを開始することを明らかにした。大手家電、スーパー、飲食店などで広く利用でき、ゆうちょ銀行口座から代金が即時に引き落とされる。クレジットカードの登録や事前チャージが必要ない銀行口座直結型のサービス。
 先着100万名に現金500円プレゼントやSNSを活用したキャンペーンを実施する。長門社長は「日本郵政グループの強みである郵便局ネットワークを活用、利用者や使える店舗の拡大に取り組み、次代のキャッシュレス社会においても重要な社会的役割を果たせるよう努めてまいる」と強調した。
 かんぽ生命株式の第2次売出しについては「郵政民営化法の方針に従い、かんぽ生命の株価、日本郵政の資金需要、連結業績への影響を勘案し売出しを決定したもの。特段の問題もなく、23日をもって投資家への受け渡しが完了する予定」とした。さらに、4月9日に財務省から日本郵政株式の売出し準備として、主幹事証券会社の選定手続き開始の発表があったが、「事務的な準備は相当な期間を要し、まずは準備を進めるものと聞いている。郵政民営化法で、できる限り早期に減ずるものとされており、政府は時々の市場動向等を勘案しつつ、売却時期について検討することと理解している」とし、「早期売却は郵政民営化法に沿うもので、復興財源の確保に直結することから、必要に応じて事務的な準備を進める」との考えを示した。
 また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同表明を明らかにした。2月の会見でダボス会議の印象について「気候変動に立ち向かうイノベーションによる問題解決が必要ということで、日本は自由で開かれたルールに基づき、国際秩序の維持、強化に取り組みたいとの意欲を示している。また、環境に配慮するなどのESGとして、長期的視点に立った経営戦略についても、多くの投資家を中心に大事なテーマとして浮かび上がってきている」と話したことをあげ、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命が金融安定理事会(FSB)により設置されたTCFD提言に賛同するとした。
 日本郵政グループはCSR基本方針で「気候変動による影響に適用した事業運営に努めるとともに、地球環境への負荷低減に配慮した事業活動および環境保全活動を積極的に推進」と宣言している。中期経営計画2020でも、SDGsの達成に向けた一環として、温室効果ガス排出量の削減をかかげるほか、グリーンボンドへの投資など、持続可能な社会の構築への貢献を進めている。
 これらに加え「今後はTCFDの提言を踏まえ、気候変動がグループ各社の事業に与える影響についての分析を深め、更なる情報開示に取り組む」と強調した。TCFDはG20の財務大臣・中央銀行総裁からの要請で、FSBの下に設置された気候関連財務情報開示タスクフォース。企業の財務報告において気候変動要因をどのように取り扱うべきかの枠組みについて、2017年6月に提言した。
 このほか、改めて10連休での配達や、「令和」への改元を記念したフレーム切手の発売、第86回郵政記念日中央式典などについて述べた。
 記者からの「かんぽ生命の株式売却後の議決権比率を65%程度としたのは」との質問には、「ゆうちょ銀行の時価総額が約5兆円、かんぽ生命が約1.5兆円。かんぽ生命を優先したのは、新規公開時(IPO)と売出しを決定した時の株価の水準を見ると、残念ながらゆうちょ銀行の方はIPOの価格をかなり下回っていることが判断に影響した。だが、不振の銀行株の中では一番良いのも事実だ」とし、「5割を切れば新規業務等々は届出でよく、経営の自由度が増すという面もあるが、一気に行くと相当数の株がマーケットに出る。慎重にマーケットの反応も見極める必要や日本郵政の収益への影響など総合的に考えて決断した」と語った。
 ゆうちょ銀行の限度額が4月1日に引き上げられたが、その後の動向についての質問には「リアルタイムで数字を把握しているが、貯金がいたずらに増えているようなことは全くない。現状で懸念するような水準ではないと思っている」と強調した。


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