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第6977号

【主な記事】

ゆうちょ営業手当の廃止で意見
JP労組 “労使協議が必要”

 日本郵政グルーブ労働組合(増田光儀・中央執行委員長、以下JP労組)は、総務省と金融庁が1月19日から2月18日まで実施した「ゆうちょ銀行の限度額引き上げのための郵政民営化法施行令の一部改正」のパブリックコメントに意見を提出した。郵政民営化委員会は同限度額の引き上げに当たり、貯金獲得のインセンティブ制度の廃止を求めているが、JP労組は「社員の営業へのモチベーションや働き方、生活への影響が大きく、丁寧で慎重な労使協議が必要」と要望している。

 郵政民営化委員会は「郵政民営化の進捗状況の総合的な検証」の中で、ゆうちょ銀行の限度額を通常貯金と定期性貯金をそれぞれ別枠で1300万円とするに当たり、日本郵政グループと政府に対して「貯金獲得のインセンティブを他の評価項目に振り替えるなどで撤廃すること」を求めている。同インセンティブ制度は労働協約が結ばれており、廃止するには、JP労組と会社側との協議が必要となる。
 今回のパブリックコメントでJP労組は「現在の営業手当制度は約5年間かけて、労使協議で確立してきた制度であり、ゆうちょ銀行の基盤を支えるためのインセンティブとなっている。見直しは社員の営業活動に対するモチベーションや働き方、社員の生活への影響が大きい」とコメント。
 営業の現状については「総貯金残高の増加に向けてニューマネーを積極的に集める営業活動は行っておらず、ご愛顧いただいているお客さまにご利用を継続していただくための営業活動を展開しており、それは重要な取組み」としている。
 貯金のインセンティブ制度は、「労働規約に基づく営業手当」と日本郵便が目標達成の度合いに応じて支払う「業績手当」がある。
 業績手当は会社側の判断で可能だが、労働規約に基づく営業手当は会社とJP労組間で交わされたものであるため、変更するにはJP労組の全国大会での承認が必要となっている。
 2007年10月の民営化を機に、人事給与制度について労使間で協議が行われてきた。「頑張った人が報われる制度にしよう」と約5年かけて協議が進められ、2010年に営業手当制度が創設された。
 営業手当の見直しはその後も協議が続けられ、2015年度からは渉外営業社員については基本給の12%を手当ての原資にする方法での営業実績連動型のインセンティブが導入された。
 営業手当は、営業実績に応じて毎月支給されるものとコンプライアンスの順守への評価を基に半年に1度、支給されるものがある。渉外社員、内務社員ともにあるが、渉外社員は営業実績連動型の支給割合が多くなっている。JP労組では「変えるのなら、組合員の生活を守るために、不利益のない形にしていきたい」という。
 JP労組の増田光儀中央執行委員長は、2月14日に東京で開かれた「第19回中央委員会」でインセンティブ制度廃止について「限度額の引き上げは前向きに受け止めつつも、経営判断に委ねられる部分にまで政治的意向が反映されてくる状況に、強い問題意識を持たざるを得ない」としたうえで、「仮に現在の貯金が流出していくような事態となれば、将来にわたり、どのように銀行サービスを維持・提供していくのか。営業手当を見直すのであれば、営業推進のあり方も見直す必要がある。金融窓口事業の持続性についても真剣に検討しなければならない」と述べている。
 同パブリックコメントでJP労組は「ユニバーサルサービスを維持し、良質なサービスを提供するとともに、健全な経営の推進を図っていくためには、経営の自由度を担保していただく必要がある。新商品・サービスの認可、限度額の上乗せ規制の早期撤廃が必要不可欠」と更なる規制緩和を求めている。


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