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第6977号

【主な記事】

初年度は2952億円
郵便局ネット維持の交付金


 郵便局ネットワークを維持するための交付金制度が4月から実施される。総務省は2月25日、日本郵便への「交付金」と関連銀行・関連保険会社から徴収する「拠出金」について、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構(天野藤男理事長)の申請を認可した。交付金の総額は年間約2952億円で毎月、日本郵便に交付される。算定は毎年、前年度の決算データに基づき行われ、今後は毎年11月末に翌年4月からの認可を受ける。

 同申請は、郵便局ネットワークを維持・支援するために昨年6月に成立した同機構法改正に伴うもので、「交付金の額と交付方法」「拠出金の額と徴収方法」については総務省の認可が必要と定められている。
 同機構は、ユニバーサルサービス確保のために不可欠な費用に、事務費をプラスしたものを拠出金としてゆうちょ銀行とかんぽ生命保険から徴収し、事務費を差し引き日本郵便に交付する。拠出金・交付金には消費税は掛からない。同制度は窓口業務を対象としており、配送業務は対象外。
 金融2社の年間の拠出金額は、総額約2954億円で、ゆうちょ銀行が約2378億円、かんぽ生命が約576億円。同機構の事務費は今年度が8000万円、来年度が9000万円で、毎年4月に一括で支払われる。
 算定方法は、2人体制(局長と窓口社員各1人)の郵便局をモデルにしており、①人件費(人件費単価に直近の郵便局数を掛けたもの)②賃借料・工事費、その他郵便局の維持に必要な費用(水光熱費など)③現金の輸送や管理に必要な費用④固定資産税と事業所税⑤簡易郵便局の窓口業務委託手数料の基本額に直近の簡易郵便局数を掛けたもの。
 これらを基にユニバーサルサービス確保に不可欠な費用全体を算出。その費用を郵便局ネットワークの利用状況や業務区分別収支などからその利用の度合いを算定し、郵便、銀行、保険に按分。郵便分を不可欠な費用全体から除いたのが交付金額となる。
 不可欠な費用は2017年度の決算に基づいていたもので、全体額は約4267億円、日本郵便の郵便窓口業務は約1314億円で、交付金額は約2952億円。消費税については、これまでゆうちょ銀行とかんぽ生命が日本郵便に支払っていた委託手数料約1兆円のうち、約3割に当たる交付金部分には掛からないことになる。
 それを来年度の交付金額でみると、消費税相当額は236億円(8%で計算)となるが、事業に掛かる消費税額は、売上から仕入を引いた額が基本。グループ全体での負担額の減少は、金融2社の課税売上割合によって変動するが、制度の導入前と比較して200億円程度とみられる。 総務省は同日、「交付金の額と交付方法」「拠出金の額と徴収方法」について、情報通信行政・郵政行政審議会(多賀谷一照会長)に諮問した。第59回同審議会郵政行政分科会(樋口清秀同分科会長/早稲田大学国際学術院教授)が開かれ、審議の結果、「諮問の通り、認可することが適当である」との答申があった。
 同分科会では佐々木百合委員(明治学院大学教授)から「2人局の維持を前提にしているということだが、現実には都市部の規模の大きなところもあり、場所によって固定資産税や賃借料にも違いがある。算定に規模や大きさは考慮されているのか」との質問があった。
 総務省は「大きい局では数百名の所もあり、実際とモデルとは違いがある。同制度は必要最低限の維持費用ということで考えている。不可欠な費用を制度で賄い、それ以外の費用は民間の業務委託費で賄ってもらう。賃借料や固定資産税が場所によって違うことについては、全国の郵便局でどのくらいかかっているかを基に計算し、それを2人局の面積として、補正をかけて単価を出している。実績は反映されている」と回答した。
 郵政行政分科会長の会見が開かれ、通信文化新報の「機構の事務費については、どのように算定しているのか」との質問に、総務省は「人件費や賃借料など算定に必要な実費用で毎年、認可される」と回答した。
 総務省では同日、佐藤ゆかり総務副大臣から天野理事長に認可書が手渡された。


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