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第6970号

【主な記事】

利用者利便を更に向上
[日本郵政]長門社長 
民営化委検証に沿い対応

 日本郵政の長門正貢社長は昨年12月27日の定例記者会見で、2017年を振り返って「グループを取り巻く環境は厳しいものだったが、各事業において工夫を凝らして乗り切ってきていると感じている」との感想を述べた。また、郵政民営化委員会が民営化の進捗状況についての総合的な検証に関する意見書を明らかにしたが「意見書の今後の課題と期待を踏まえ、引き続き新中期経営計画に掲げた様々な取り組みを着実に進める。ゆうちょ銀行の限度額についても、利用者利便にかかわる支障の解消や郵便局等の事務負担の軽減との観点も踏まえ、滞りなく準備を進めていく」と強調した。

 会見では2018年を振り返り「5月に2018年3月期決算を発表したが、低金利など厳しい経営環境のなか、郵政グループでの連結純利益は4606億円となり、前中期経営計画の目標4000億円を達成できた。同時に新たな中期経営計画2020を発表、歴史的低金利時代で最も厳しい3年間になると言ったが、11月に発表した中間決算では業績予想を3800億円に500億円上方修正した。おおむね順調なスタートだったと考えている」との認識を示した。
その中間決算の好調要因として「郵便・物流事業とかんぽ生命の資産運用。郵便・物流事業はeコマース市場の拡大によるゆうパック、ゆうパケットの取扱い個数の増加が収益に大きく貢献した」とした。
 一方で「労働力の確保難という側面もあり、働き方改革への対応が急務。ゆうパックの配達希望時間帯の拡充等のサービス改善を行い、深刻なドライバー不足や再配達によるコスト増などの課題に対応している。さらには、ドローンを目視補助者なしで運行する全国はじめての取組みや、自動運転の実証実験など先端技術を活用した荷物輸送の実現も積極的に行っている」ことを強調した。
 また「新中期経営計画では、不動産事業を第4の事業とするよう取り組んでいる。4月に日本郵政不動産株式会社を設立、不動産事業をより効率的に推進する体制を構築した。五反田の旧ゆうぽうと、森ビルとの共同プロジェクトである虎ノ門・麻布台案件、旧大阪中央郵便局などグループ保有資産の開発も進んでおり、将来的には収益物件の取得など新たな事業領域にも取り組む」と述べた。
 成長投資についても注力していくとし「日本郵政キャピタル株式会社では、郵政グループの新事業の種を探すため、ネットワークやブランド力などを活用して、成長を期待できる会社への出資を継続的に行っていく」とした。
 日本郵政とアフラックインコーポレーテッドおよびアフラック生命保険株式会社との資本関係に基づく戦略提携については「これまで双方で築きあげてきた信頼関係をより強化し、ウィン・ウィンの関係をより強固にするものとして、持続的に成長していくサイクルの実現を目指す」との考えを明らかにした。
 さらに、課題となっていた国際物流事業については「トール社において大幅なリストラなどの効率化施策を行ってきた。加えて10月にJPトールロジスティクス株式会社を設立し、コントラクトロジスティクスを中心に日本国内のBtoB事業を拡大、日本国内外での総合物流事業の展開による一貫したソリューションを提供して収益改善を図っていく」と語った。
 そして「総じてこの1年、郵政グループを取り巻く環境は厳しいものだったが、各事業において工夫を凝らして乗り切ってきていると感じている」と振り返った。
 26日には郵政民営化委員会から郵政民営化の進捗状況についての総合的な検証に関する意見が出されたことに関しては「意見書の今後の課題と期待を踏まえ、引き続き新中期経営計画に掲げた様々な取り組みを着実に進める。ゆうちょ銀行の限度額についても、意見書で示された利用者利便にかかわる支障の解消や郵便局等の事務負担の軽減との観点も踏まえ、滞りなく準備を進めていく」と述べた。
 このほか「郵政グループ4社の本社を移転した。民営化して11年、上場から3年、拠点もビジネス街の真ん中に移した。改めて気持ちが引き締まる思い。グループ一体の本社機能移転でチームJP、グループ一丸となって、これまで以上にお客さま、株主などすべての方に選ばれる会社へと発展していきたいと考えている」と強調した。
 記者からの限度額についての質問には「当初よりお客さまの利便性向上を第一としてきた。(限度額がいっぱいになると)毎月、ゆうちょ銀行から1万通くらいのレターをお客さまに出している。これに基づいてお客さまがいろいろと動かなければならず、郵便局の窓口も混乱するなどの問題があった。通常と定額が別枠になり、限度額も上がるので事務的にも楽になると思う。お客さまの利便性も増す」と歓迎した。
 営業に関するインセンティブについては「今回の限度額見直しの議論の冒頭から貯金をもっと集めたい、資産を増やしたいとは言っていない。金利の状況からも率先して貯金を増やしていこうという経営方針で動いていない。新中計でもゆうちょ銀行の保有総資産を増やすことは、ほとんどを投信でカバーしようという計画。インセンティブは指摘された方向で速やかに対応する。一部、従業員の生活給に関わる部分があり労働協約改定マター、これについては組合と誠意ある対話を通じて合意していかなければならない」と答えた。
 株の売却については「経営の自由度をあげるために、なるべく早く行っていきたいとかねてより申し上げている通り。株価の状況、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、あるいは郵政グループ全体の業況の問題、日本全体の市況、ユニバーサルサービスをグループ全体できちっとできているのかの検証、こうした前提に則って進める」とした。


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