「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

6966・6967合併号

【主な記事】

郵便局活性化委 日本郵便が収支見通し
郵便事業は200億円の赤字
土曜休配なら黒字に

 日本郵便は12月7日に開催された「情報通信審議会郵政政策部会の第13回郵便局活性化委員会」(米山高生・主査=東京経済大学経営学部教授)で、2020年度以降の郵便事業の収支の見通しを明らかにした。来年度以降の営業損益は200億円赤字になるものの、土曜日の普通郵便の休配などの郵便法の改正が実施されれば、2020年度と21年度は黒字になる見通し。

 郵便物の減少傾向は止まらず、日本郵便では2019年度以降は毎年、3・6%ずつ減少すると予測。
 郵便物の減少による収益の落ち込みは年間約300億円。費用は、郵便物減少に伴う業務量の減少により年間で約100億円減少、機械化や人の配置の工夫などの効率化により約30億円の削減を見込む。
 一方で、賃金単価の上昇により費用は年間約30億円増えると予測する(2020年度までは年率2・5%増、2021年度以降は年率1・25%増)。営業損益は差し引き200億円の赤字となる。
 営業収益は2019年度に初めて50億円の赤字、2020年度は370億円の赤字が予想されるものの、同社が提案している「土曜日の郵便物の配達休止(速達・特殊郵便を除く)」や「送達日数を現状の3日から4日に変更する」などの郵便法の改正が施行されれば、約600億円が改善される。実施された場合の2020年度の営業損益は230億円黒字となる見込み。
 更に郵便物が減少すれば、補てんしても2022年度には再び赤字となる。次なる対策として、同社では2020年度から▽内務事務効率化のための新技術の導入▽DMや手紙の振興による需要拡大▽不在持ち戻りの削減などの対策を実施することで、2022年度は営業損益を赤字からゼロに改善できる、としている。
 次なる一手はAIやビッグデータを活用した効率的な業務運営や局内作業の自動化、自動運転による地域間輸送などを2023年度から導入することで、黒字化。しかし、その効果も限定的で、シミュレーションでは2~3年で再び赤字となる。
 対策を取らなければ赤字は拡大する一方だが、対策を取っても改善額は限定的で、赤字は繰り返される構造となっている。
 今回の郵便法改正の要望に当たり日本郵便では、料金の値上げではなく郵便サービスの見直しを選択したが、「全国あまねく戸別配達」「郵便ポスト18万本の維持」については確保することを明確にした。
 その理由として、「受取人の住所や住居に届けるのは、郵便サービスの基本で、外出が困難な人がいることにも配慮した」「郵便ポストへの投函は対面での引受コストの削減になる」「配達ルート途中の郵便差出箱を削減しても全体の距離が変わらなければ効率化の効果は大きく見込みにくい」を挙げている。
 このほか、同委員会では海外の郵便サービスについて、送達日数や配達頻度などについての比較を紹介した。また、郵便物の減少に対する対策として、フランスの「ラ・ポスト」では郵便配達員の多機能化を事業戦略にしている事例や、デンマークの「ポストノルド・デンマーク」では、電子私書箱の運営を共同で行う事例が紹介された。
 ラ・ポストでは郵便外務員を四つの業務レベル(1は通常業務、2は見守りサービスが可能、3は携帯端末の使い方を教えることやパソコンの設置ができる、4は高齢者の税務手続きの手伝いができる)に分けて、そのレベルに応じて業務を行っている。


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