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第6960号

【主な記事】

郵便輸送にドローン
[日本郵政]長門社長 UPU事務局長選で支援

 日本郵政の長門正貢社長は10月26日の定例記者会見で、日本郵便の目時政彦執行役員が万国郵便連合(UPU)の国際事務局長選挙に立候補することを明らかにし、日本郵政グループとしても支援するとした。また、ドローンによる郵便局間輸送の試験実施を福島県の郵便局間で行うとし、先端技術を活用した荷物輸送手段として大きな一歩を踏み出したと意義を強調した。このほか、ゆうパックに関して、投入するコスト分に合った価格を求め、単に取扱量を拡大することはしないとの考えを改めて示した。

 会見では、まず日本郵便の目時政彦執行役員が万国郵便連合(UPU)の国際事務局長選挙に立候補することを明らかにした。目時執行役員はスイスのベルンで26日(現地時間25日)に開催されたUPUの管理理事会後に、正式に立候補を表明した。
 UPUは郵便業務の効果的運営によって、文化、社会および経済の分野における国際協力に寄与することを目的に1874年に設立され、1947年に国連の専門機関になった。19ある国連の専門機関の中でも古い歴史を持つ機関の一つで、現在は192の国と地域が加盟している。
 長門社長は「eコマースの発展や開発途上国の経済発展の効果と相まって、国際郵便の重要性はますます増大していく。目時執行役員は国際郵便分野をはじめ、郵便業務全般に精通しており、UPUでは2012年から6年間、郵便業務理事会の理事長を務めるなど国際的な経験も豊富。こうした経歴を持つ日本郵便の出身者が世界を牽引する立場に就くことができれば、世界の郵便事業のさらなる発展の大きな原動力となる。日本郵政グループとしても支援する」と期待を寄せた。
 また、ドローンによる郵便局間輸送の試験実施をするとした。「これまで何度か、試験飛行してきたが、いよいよ実用化の第一歩を踏み出す。福島県の小高郵便局から浪江郵便局への約9キロの郵便局間輸送を実施。目視外かつ飛行経路に補助者を配置しない運行としては全国初の取組み。まだ緒に就いた状態だが、先端技術を活用した荷物の輸送手段の一つとして、大きな一歩を踏み出した」と意義を強調した。
 2019年用年賀はがきの販売については「11月1日から販売。すでに10月1日から東京2020大会の公式マスコットをあしらった年賀はがきを販売しているが、数週間で数百万枚を買い上げていただいた。お年玉くじの賞品に東京2020大会への招待もラインアップしており、オリンピックの機運を盛り上げていきたい」と語った。
 かんぽ生命に関しては終身保険、養老保険、総合医療特約の引受け基準を緩和した商品、先進医療特約について「10月16日に認可申請した。来年4月の販売を予定しており、2017年10月以来の新商品となる。超高齢化社会が到来するなか、引受け基準緩和型の商品を提供することで、健康上の理由から加入できなかったお客さまにも保障を提供していきたい。先進医療特約は総合医療特約と合わせて低廉な保険料で保障を提供、先進医療の負担に備えたいというニーズに応えることができる」と述べた。
 「生命保険会社にとっては低金利での厳しい経営環境が続いている。多様なライフスタイル、ライフステージに応じた商品を提供することで、新契約を増加させ、収益確保による経営の安定化、企業価値の向上に努めてまいる」とした。
 スルガ銀行の媒介ローン業務に関するゆうちょ銀行の社内調査では「現時点では、ゆうちょ銀行の社員による不正への関与は認められないとの報告を受けている」とし、調査結果が出た際には別途報告することを明らかにした。
 記者からのゆうちょ銀行の限度額についての質問には「郵政民営化委員会で鋭意、意見を聞いてまとめていると伺っている。その結論を見守って待っている」との考えを改めて示した。
 目時執行役員の立候補、またアメリカのトランプ大統領がUPU脱退を示唆したことに関しては「国際機関のトップに日本人が就任するのは歓迎。とりわけUPUについては郵便で、メールやソーシャルネットワークが進んでいくなかで、郵便としてどのようにアプローチしていくのかなど様々な課題がある。日本人が、しかも我々の同僚がリードしていくことは大歓迎。米国への対応は一義的には政府の仕事だろうが、日米の郵便活動に支障が出ることがないようにしっかりと見極め、側面支援をしっかりやっていきたい」と述べた。
 通信文化新報の「交付金制度の省令改正では、ユニバーサルサービスコストの実費に配慮していただきたいと意見を出されていたが、総務省は最低限の費用ということだった」との質問には、「総務省はこういうところが交付金の対象の金額ではないかと書いているが、精査すると他の部分の経費もユニバーサルサービスを提供するために必要なので、それらも入れたらどうかという意見だった」とした。
 また「著しく総務省と見解が違って、こちらが不満だが、折れたという話ではない。今後、費用も時代とともに変わってくるところもある。時期が来たら、そういうものも反映してほしいというのが意見。総務省も(見直すことについては)終わりというように言っていないと理解している」と語った。
 ドローンの効果や期待については「具体的に運ぶことでどんな問題が起こるか実証する。実際に郵便物を運ぶとなると設備投資も必要になる。費用対効果はという議論になると思うが、法制の問題もあり、一歩進めた具体的な実験が始まるという段階。テクノロジーを使って経費を抑える、足りなくなっている分野への労働力供給といった意味では、自動運転の車やロボット配送も実験している。そうした一連のものも含めて、実際に数字として現れるのは時間がかかると思っている。しかし、行っていかないとそういう時期は来ないので、着実に進めていきたい」とした。
 ゆうパックに関して「昨年に比べ取扱いの伸びが落ちて来ているという話があったが」との質問には、「昨年9月から増えてきたが、それが落ち着いてきているというのは当然で焦ってはいない。3月1日から小口、ボリュームは全体の約1割に過ぎないが平均12%の値上げをした。法人については常時、見直しをしている。かなり大胆に値上げをしようというので、まだ確定の数字を申し上げる段階にはないが、いよいよ効果が出てきているなという手応えを感じている」ことを明らかにした。
 そして「価格を上げたから当然、日本郵便だけでなく他の会社とどのように配分しようかと考えるはずだ。一方的に日本郵便だけに来るとは思っていないので、ボリュームがある程度落ちるのは構わない。大事なのは価格で、ここは明確にやっていきたい。少なくとも投入するコスト分はしっかりいただくという構えでやりたい。損をしてまでボリュームを取るということはやめる方針。値段についても、今後も相応に上げていけるというように思っている」との考えを示した。


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