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第6956号

【主な記事】

国際物流事業を強化
[日本郵政]長門社長
「JPトール」を設立

 日本郵政の長門正貢社長は9月29日の定例記者会見で、日本国内における一体的な国際物流サービスを提供する日本郵便の子会社として「JPトールロジスティクス株式会社(JPトール)」を設立することなどを明らかにした。日本郵便とトール社が出資する。出資比率は各50%。BtoB事業を拡大、10年で売上高1000億円をめざす。

国内外でBtoB事業を拡大
売上高1000億円を10年で

 今回の記者会見は東京・大手町の新社屋に移転して初めての会見となった。長門社長は「会見場の前島ホールは日本近代郵便の父、前島密に由来している。これまでの本社社屋には郵政省時代を含めて49年間となった。官庁街の霞が関から、ビジネス街の大手町にやって来た。郵政民営化から11年、上場から3年、次の50年、100年を見越して、さらに飛躍してまいりたい」と改めて決意を語った。
 また、6月から9月にかけて地震、台風、大雨などによって災害が発生したことに対し、「日本郵政グループは、災害救助法適用地域で非常取扱いや義援金の無料送金、契約者貸付および入院保険金の特別扱いを実施している。一部の地域には車両型郵便局を派遣している。引き続き被災された地域に寄り添った取組みを行ってまいる所存。被災された方々に心からお見舞い申し上げる」と述べた。
 JPトールロジスティクス株式会社の発足について公表。本社は郵政グループと同じ大手町プレイス・ウエストタワー。社長は日本郵便の国際物流を担当する小野種紀専務執行役員が兼務、常勤の副社長は6月まで日本郵便で常務執行役員として郵便・物流事業の営業を担当していた津山克彦氏が就任する。出資比率は日本郵便とトール社がそれぞれ50%。日本郵便は86億5000万円を出資する。
 トール社については昨年に減損処理を公表し、経営改善に取り組んできた。2000人規模の大幅なリストラ、削減を伴う組織再編など効率化施策を行った結果、収益面、営業利益ベースで効果が上がり始めている。海外のBtoBを中心に事業展開するトール社、日本国内に顧客基盤を持つ日本郵便が、共同で収益拡大を目指す。長門社長は「海外発、日本発ともに倉庫物流事業の展開による一貫したソリューションの提供を行う企業をさらに成長させたい」と強調した。10年で売上高1000億円、将来的には5000億円を目指すとしている。
 シェアハウス融資で多額の不正があったスルガ銀行問題について言及。スルガ銀行とゆうちょ銀行は、個人の住宅ローンなどで提携関係にある。9月7日にスルガ銀行第三者委員会の調査報告書が公表されたが「報告書に記されているような実態が判明したことは大変に残念」と遺憾の意を表した。
 そして「ゆうちょ銀行はじめ郵政グループとしても法令遵守の徹底、顧客本位の業務運営、内部管理の強化、健全な企業文化の醸成に改めて注力していく。住宅ローンの媒介ルールについては、ゆうちょ銀行が適切な営業目標設定など適切に運営してきていると考えているが、スルガ銀行問題が社会的に注目を浴びていることもあり、ゆうちょ銀行においても媒介業務について自主的な点検に着手している」ことを明らかにした。
 8月31日、ゆうちょ銀行の取締役会を経て調査委員会を発足させ、調査中とした。「現時点ではゆうちょ銀行の社員が不正に関与したとの事実はない」と強調した。今後の対応については「調査が完了後、スルガ銀行新経営陣による今後の経営の方向性、その他の状況を見定めて、適切に判断してまいる」とした。
 記者からの「郵便配達の土曜日休止との報道があるが」との質問には、「総務省の情報通信審議会の郵便局活性化委員会で、経営資源が限られている中で郵便サービスを安定的に提供するにはどのような取組みが考えられるかとの議論が始まっており、しっかりと注視してまいりたい。国民生活にも密接に関連する。広い議論を承り考えていきたい。働き方改革への対応もある。現状では方向ははっきりと決まっていない」と答えた。
 また「金融庁の新たな方針の中で、日本郵政のガバナンスの発揮状況をモニタリングするという言葉が入ったが」との質問があった。長門社長は「資産が210兆円のゆうちょ銀行、80兆円のかんぽ生命は日本で大きな組織。そこについて金融庁がしっかりと他の金融機関と同じように、常時コミュニケーションを取る対象にしたということだと思う」とした。
 今後も「密にコミュニケーションを行っていく。日本郵政も金融持ち株会社の側面も持っており、一緒に見ていきたいというのは、当然なのではないかなと思っている。しっかり対応して、強い銀行、持ち株会社になっていきたい」と述べた。
 さらに「日本郵政とゆうちょ銀行で限度額についての戦略に齟齬が出ているとの報道があったが、同じ意見であり、ギャップはないと理解いただきたい。我々も金融庁とはコミュニケーションを図っていく」と補足した。


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