「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6955号

【主な記事】

郵便局の価値を高める
[北陸地方会]地方創生フォーラム

 北陸地方郵便局長会(山本利郎会長/金沢扇町)は9月15日、石川県金沢市のホテル金沢で「平成30年地方創生フォーラム」を開催した。北陸地方会役員、地区会副会長・理事・部会長ほか150人を超す参加者があり、皿澤三雄専務理事が総合司会を務めた。
 石井晴夫東洋大学経営学部教授を講師に招き、来賓に全特の渡邊伸司専務理事、原田喜延理事(信越地方会副会長/浅川)、いしかわ結婚・子育て支援財団の打田正嗣専務理事、石川県企画振興部地域振興課の小林匡課長補佐、北陸支社の西嶋優支社長、山根鉄郎経営管理本部長ほかを迎えた。
 村本吉広地域貢献・地方創生専門委員会委員長(理事/小松大川)が開会のあいさつ。全特の原田理事は、各地で発生した災害被害に触れ「1日も早い復旧・復興を願う」と述べ、「地方創生については、これからの郵便局の存在価値を高める重要なテーマ。全国の地域特性に合った活動の成果が出てきているところだ。地域全体で地方創生を考えることが重要」とあいさつした。
 村本委員長に司会がバトンタッチされ、「地方創生によって日本が変わる〜今、郵便局に求められる機能と役割〜」をテーマに、石井教授が基調講演を行った。
 講演内容は▽日本における地方と都市の現状と課題▽北陸新幹線金沢開業による経済波及効果▽新しい公民連携(PPP)の概念とその確立▽地方創生の背景とその必要性▽まち・ひと・しごと創生法の概要▽郵便局ネットワーク利活用の今後の展開など22項目に上った。
 どんな災害に遭っても地方が生き残れる手段として、水道、プロパンガス(燃料)とともに郵便局を挙げ、「民間金融機関では不可能な役割を担う」と指摘。「郵便局の役割をもう一度しっかり精査して、その役割を国会等で議論するよう各方面に要望している」として、「横串に刺して地域経営全体・地域モデルの中で位置づけることが重要」と強調した。
 また「郵便局を核にした町づくり」を提唱、「郵便局は町づくりのプランナーの役割を果たせる」と述べた。「郵便局をプラットフォームにしよう。それぞれの局、部会、地区会が地域に合った取組みを推進できる。郵便局プラットフォームは地方を作り、日本を作る」と結んだ。 地区会の取組み発表が行われ、富山県呉東地区会の潮由加子局長(西布施)が「婚活および買物支援」、石川県南加賀地区会の表谷直樹局長(加賀松が丘)が「婚活」についてそれぞれ発表した。
【潮由加子局長】
《呉東地区会の婚活支援事業(ミラコン)への参画》▽潮局長は評議員として関与▽これまでの開催実績は10回▽ミラージュランド(魚津市施設管理公社)の事業▽単マネ局、エリマネ局の郵便局管理者に協力要請▽自治体等による地域活性化施策への理解・浸透を企図▽郵便局管理者がスタッフとして活動▽郵便局が担当する仕事(受付・誘導・駐車場案内・会場案内・テーブルの後片付け・参加者への声掛け・DJの補助)▽郵便局が参画するメリット―短期(地元の魅力を発信・若者との会話から考え方を知り生活様式等の傾向を把握・自治体等への協力体制の関係構築)。中長期(移住・定住にともなう地域の人口増による活性化・郵便局が弱い若年層の取り込み・地域活性化施策への積極的な参画と継続)▽課題(施策中における郵便局のアピール不足・郵便局への集客につなげる活動の充実)
《魚津市西布施地区の買物支援》▽背景(公共交通機関の廃止・商店の廃業/撤退・高齢者ドライバー問題・要介護者の増加)▽富山県のとやま地域包括ケアシステムに県内の全局が2017年度に参加▽富山県ではケアネット活動が活発→魚津市が買物支援に参画▽魚津社会福祉協議会および地区社会福祉協議会による検討▽平成26年度に魚津市全域で買物についてのアンケートを実施▽調査結果=約3割が買物に不便を感じている―「移動販売車」を希望する回答が多数▽西布施地区(450世帯・70歳以上のいる世帯は245世帯317人)では「乗合買物カー」形式を選択
▽若い世代の理解と協力を得るため「西布施サポートプロジェクト」立ち上げ▽潮局長は地域振興会副会長として若い世代の意見を尊重しながら計画・実行▽利用者の自宅とショッピングモール間を送迎する買物タクシーを導入▽実施日は毎月第3木曜日・70歳以上のひとり暮らし・事前登録制(8月末時点で10人の登録)▽2018年度(9月15日時点)の実施は4月19日・5月17日・6月21日・7月19日・8月23日▽買物スケジュールに郵便局前の停車を組み込む
【表谷直樹局長】
《南加賀地区会の郵便局の婚活「ポスコン」〜手紙から始まる恋物語〜》▽2018年02月合同専門委員会(地方創生・中堅若手専門委員会)で開催を決定▽代表者8人(地区会長・担当理事・各部会代表者・オブザーバー)による協議・検討▽粟津温泉「法師」で9月8日に開催決定▽参加者募集―金沢市含め金沢以南の市町・年齢25〜45歳・募集人数男女各20人▽経費―小松市と粟津温泉観光協会から協賛金・横展開する婚活モデルとして会社経費を支出▽女性目線の必要性→代表者に女性局長等3人を追加▽男性・女性ともに22人合計44人の参加が決定▽3組のカップルが成立
【パネルディスカッションを実施】
 村本委員長と石井教授をモデレーターに、打田いしかわ結婚・子育て支援財団専務理事、小林石川県企画振興部地域振興課課長補佐、潮局長、表谷局長、南加賀地区会の細野幸伸局長(大聖寺菅生)をパネラーにパネルディスカッション。
 打田専務理事は①結婚を希望する独身男女に出会いの機会を提供する「縁結びist」(活動実績=お見合い設定1万5120件・交際5191組・成婚686組)②結婚に関する無料相談「婚カフェ」③45歳までの独身男女対象の「コミュニケーション力アップセミナー」④平成30年度ゆるやかな出会いの機会の提供事業=交流イベント開催情報の無料メディア掲載・交流イベント開催経費の助成⑤結婚に係る経済的負担の軽減を図る「石川しあわせ婚応援パスポート」制度⑥「いしかわ婚活応援企業」の募集について説明した。
 小林課長補佐は、郵便局長が移住をサポートする「郵便局長移住サポーター制度」を解説。同制度は①移住者・移住希望者がスムーズに生活していくための声掛けやサポート②県外に家族を持つ人に対して「ILAC」(いしかわ就職・定住総合サポートセンター)や「Iパス」(いしかわ移住パスポート)などの紹介で構成。Iパスは、移住時前後に協賛事業者の店舗で提示すると割引などの特典が得られる申請事業。
 村本委員長は、各取組みを横展開する際の課題と対応について質問した。
 表谷局長が「障害のある方への対応や参加する方の個人情報の管理をどうするのか等の意見をいただくなど、私も学ばせてもらった」としたうえで、「継続するためには、どうやってメンバーの負担を軽減していくかが重要」と回答した。
 村本委員長が、魚津市(施設管理公社)の婚活支援事業に参加するきっかけについて質問したのに対して、潮局長は「魚津市への移住事業に関わったときに、施設管理公社の協議委員をやってみないかという声掛けをいただいた」と回答。「郵便局のTシャツを作成するなど郵便局を積極的にPR。参加が少ない若者の意見を取り入れたい」と抱負を語った。
 山本会長からは「みんなが関心を示すのは、実施したストーリーではなく、準備や実施に当たっての苦労や裏話。どういうふうに解決したかを語ってもらいたい」と意見があり、表谷局長が「個人情報については出せる範囲をぎりぎりに絞り、住所や電話番号は非公開とした」などと回答した。
 細野局長は「1回で終わらせるのではなくて継続して横展開していくやり方を考えなければならない」と述べた。
 村本委員長から魚津市西布施地区の買物支援の取組みの秘訣を聞かれた潮局長は「現時点はまだ入り口。地区で高齢者が増える中、自分たちが安心して暮らせる地域を目指すために、互いに支え合い協働しながら、やさしい町づくりに取組んでいる。押し付けではなく、地区の意見を尊重したうえで買物タクシーを選択したことが継続の要因と考えている」と述べた。
 石井教授は「いずれの事例も地域密着経営を標榜する郵便局ならではの取組み」と総括した。
 最後に村本委員長が「発表を参考に横展開して欲しい」と呼びかけて、「地域貢献や地域創生に関しては前島密翁の『縁の下の力持ちになることを厭うな。人のためによかれと願う心を常に持てよ』ということばに尽きる。北陸からさまざまな新しい地方創生の取組みが始まれば良い」と抱負を述べて終了した。


>戻る

ページTOPへ