「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6953号

【主な記事】

地方創生の主役は自治体
[野田総務大臣]人口減少で講演

 野田聖子総務大臣は9月7日、「人口減少社会における自治体経営・地域活性化のあり方とICT最新技術の利活用」をテーマに、市町村長や自治体関係者向けに講演を行った。野田大臣は「お国の決めたことをやっていれば地方創生ができるというのではない。主役は皆さん」と現場目線での自由な意見を促した。
 講演は「総務省政務三役と市町村長との意見交換会」に先立って行われた。野田大臣は高齢化と人手不足が深刻になることが予想される2040年の課題やそれに向けての総務省の取組みについて具体例を挙げながら説明した。
 人口減少については「人口減少は静かなる有事だと思っている。日本の歴史を見ても人口減少の中で生きていく事例はない。ピンチをチャンスに変え、新しい日本を共に作るパートナーになりたいと思っている。女性の力、高齢者の力が生かせる暮らしやすく働きやすい地域社会を作ることが必要」と考えを述べた。
 政策の実行に当たっては「主役は現場が一番わかっている皆さん。お国の決めたことをやっていただければ地方創生ができるわけではない」と地方の自律性を促す。
 2040年に向けた課題として、東京の一極集中の是正があるが、その理由として▽東京に仕事を求めて若者が流入しているが、2040年にはその大きな人口の塊が年をとり、東京の福祉や医療に負担がかかる。一方で地方は支え手を失っていく▽大都市圏に行けば働く場や教育の場、潤沢なお金があり、何とかなると思っていても、将来はなくなる▽2008年の人口がピークの時に規模の大きなインフラを作ったが、2040年頃にはそれらの劣化がピークを迎えることを挙げる。
 総務省では将来に向けたビジョンづくりの一環として「自治体戦略2040構想研究会」と「IoT新時代の未来づくり検討委員会・未来をつかむTECH戦略」を進めてきたが、それらの中間とりまとめを公表した。
 今後は「地方制度調査会」で検討することになっており、野田大臣は「地方自治体から意見を出し、将来の地方の姿を新たに作っていただきたい」と呼びかけた。
 地方議会議員のなり手不足については「地方議員なり手不足は男性をイメージしているが、地方議会は決して敷居の高いものではなく、女性議員もなり手として認めてもらいたい」と議員立法で成立した「政治分野における男女共同参画推進法」を紹介した。
 地域の経済についても発想を展開し、地域で消費や雇用が起きるような仕組み作りを提案する。一例として、火力発電は海外にお金が流れてしまうが、ソーラーや風力、地熱などの再生エネルギーを組み合わせて地域で活用することによりお金が地域に落ちることなどを挙げた。テレワークの活用について野田大臣は「東京から地方に本社を持ってくるのは難しいが、テレワークで本社とつなぐことにより、地方の人を本社採用にしてもらえば、地方の人口を減らさずに済む」と働き方改革の推進を提案する。
 ICTによる地域の課題解決の事例として、テレビ会議システムにより過疎地でもレベルの高い教育が受けられる岐阜県白川町の事例や、空いてる時間のある人と子どもを見てもらいたい人をマッチングする子育てシェアが行われる奈良県生駒市、交通手段の少ない過疎地の課題解決として住民同士のマイカー相乗りを実施する北海道天塩町などを紹介した。
 最後に野田大臣は「総務省はこう言うけど現場からするとそれは無理だとか、自由に発言してもらいたい。本当に必要な予算を必要なことに付けることで、皆さんの苦しみを喜びに変えられる。そんな時間が作れればと思う。実りあるセッションにしてもらいたい」と述べた。


>戻る

ページTOPへ