「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6944・6945合併号

【主な記事】

郵便局ネット将来像、具体化へ
都市部の在り方も議論
全国郵便局長会 青木進会長


 5月の全国郵便局長会郡山総会で引き続き重責を担うこととなった青木進会長は「局長会には前島翁以来の地域の発展を願う心があり、地方創生に力を注いできたが、地方の活力が失われると郵便局の存在自体が困難になるとの事情もある」と強調、基本的な方向性がまとまった郵便局ネットワークの将来像について「今年度は具体化することに取り組む」と語る。また、郵便局ネットワークは「都市部の郵便局があってはじめて成り立つもの」とし、「都市部の郵便局の在り方にも重点を置いて議論していきたい」との考えを示した。
〈インタビュー=永冨雅文〉

 今次、郡山総会での退任を考えていましたが、関係の皆様からの要請もあり、もう1年、全特会長として頑張ることとなりました。
 裏を返せば、それだけ課題も多く、また来年には柘植選挙も控えていることから、全力で取り組む覚悟です。
 この2年間、地方創生に力を注いできました。その背景には、局長会には、前島翁以来の地域の発展を願う心がありますが、加えて地方の活力が失われると郵便局の存在自体が困難になるという差し迫った事情もあります。
 ついては、こうした事態を打開するため、昨年度、会社と郵便局ネットワーク将来像の議論を開始し、今年度は具体化作業に入ることになっていますので、これに全力を挙げて取り組んでいきたいと考えています。
 なお、地方創生の取り組みは、過疎地にスポットが当たりがちですが、郵便局ネットワークは都市部の郵便局があってはじめて成り立つものです。今年は、都市部の郵便局の在り方にも重点を置いて議論していきたいと思っています。
 また、これまで高齢層の会員に着眼した取り組みが多かったことから、今年は、若手局長の意見に大いに耳を傾け、抱える課題を解決していきたいと考えています。

■昨年は2007年10月の郵政民営・分社化から10年、改正郵政民営化法の成立から5年を迎えました。この10年は郵政事業、また全国郵便局長会にとりまして、変化の著しい激動の10年だったと思います。改めて10年を振り返っての感想を。また、2021年には創業150年となります。新たな10年へ向けて、郵政事業、郵便局の進むべき方向性について聴かせてください。

 この10年間で局長会を取り巻く社会経済環境や政治環境は大きく変化しました。
 何よりも、柘植芳文顧問、徳茂雅之顧問はもとより、自民党の郵活議連や特命委員会の先生方のお力添えにより、ゆうちょ銀行限度額の見直し、貸し越しサービスの認可、交付金法案の成立など様々な政治課題が解決したことは大きな成果でした。
 また、先般、総務省情報通信審議会の郵便局活性化委員会から「郵便局利便性向上策」の答申があり、更に、郵政民営化委員会の所見が近々発表されるものと思います。 会社とも本年度は郵便局ネットワークの将来像の具体化作業を進めます。
 こうした将来ビジョンをベースに明日の郵政、そして局長会の発展をめざしていきたいと思います。

ユニバコストの明確化を
自治体との連携強化

■郵政グループの中核を成す郵便局ネットワークを一層活用し、郵便局の価値を高めていくことが求められています。議論が進められてきた郵便局ネットワークの将来像について一定の結論が示されました。

 郵便局ネットワークの将来像は概要をまとめただけであり、具体化作業はこれからです。したがって、活用施策等はこれからの議論です。

■郵便局ネットワークを維持し、ユニバーサルサービスを提供するための「交付金・拠出金制度」が法制化されました。制度の意義について聴かせてください。また、総会では現場への社員が生き生きと働ける環境整備への投資の重要性も指摘されていました。

 分社化において発生した会社間取引にかかる消費税については、長年、その減免を求めてきましたが、今般の交付金制度により、一部税額が軽減されたことは歓迎しています。
 しかし、ユニバーサルサービスコスト負担の問題は、これから本格的に取り組む必要がある課題と考えています。まずは、総務省の研究会が再開され、しっかりとコスト算定いただくことが必要と考えています。
 また、総会の挨拶において、金融2社の売却益を「投資」「株主配当」に充てることしか考えていない長門社長に、「従業員も要素に加えるべき」と苦言を呈しました。
 過去のM&Aで日通、トールと大失敗を繰り返し、社員もたいへんな苦労を余儀なくされてきたことがその背景にあり、ステークホルダーの一人として指摘したまでです。
〈郵政民営化委員会での長門社長の発言要旨〉
 郵政民営化法で全部売るという方向感がありますので、 仮にという前提ですが、現状のマーケットコンディションで、ゆうちょ銀行の時価総額は6兆円位、かんぽ生命保険が約1.5兆円位です。現状、議決権を89%位持っていますので、仮に全部を売ったとすると、今の価値で言うと6兆円位入ってきます。郵政グループ全体の前向きな方向に使いたいと思います。
 投資であったり、あるいはゆうちょ銀行とかんぽ生命保険を切り離すことになるとすると、そこのレベニュー、パフォーマンスがなくなるわけですから、これの代替物がなければいけません。必ずしもM&Aだけではないと思います。提携とかいろいろあり得ると思いますが、そういう形で新たなレベニューを作るべく投資をするとか、あるいはひょっとすると株主という大事なステークホルダーがいますので、一部については自己株を買って、そういう株主の方に振り向ける等々、理論的には二つぐらい主にあるというように現状は考えています。

■次期参院選に組織内候補予定者として顧問の柘植芳文参院議員が決定しました。来年へ向けての活動方針について聴かせてください。

 6月20日の政治問題専門委員会を皮切りに、拡大政治問題専門委員会、公選法勉強会、7月には実務者会議、8月には郵政研合同会議、9月には後援会の立ち上げなど、来年度に向けた活動が本格化していきます。
 これから決定することではありますが、前回以上をめざして準備を進めて参りたいと思います。

■郵便局は自治体と連携、地方創生に取り組んでいます。郵便局の地方創生の意義や方向性について聴かせてください。

 現在、地公体との包括連携協定の締結が進んでいますが、締結が目的ではなく、それぞれの地域が抱える様々な課題の解決や、地公体が進める施策の実現に向け、地公体と連携していくことが大切だと思っています。

■組織強化の一環として「礎」の見直しが進められています。3本柱の低下が進んでいる実態があると指摘されていますが、改めてその意義や「礎」の議論の取りまとめの方向性について聴かせてください。

 局長会は、地域密着型郵便局をめざしており、これを担保するものとして「選考任用」「不転勤(任地居住)」「自営局舎」の3本柱があります。
 ご指摘の通り、3本柱は低減傾向になかなか歯止めがかかりませんが、地域密着は理念でもありますので、改訂版の「礎」によってその精神を共有していきたいと考えています。


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