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第6942号

【主な記事】

日本郵政グループ 株主総会
新中経計画に理解求める

 日本郵政グループの日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命は6月18~20日、上場後3回目となる定時株主総会を東京都港区のザ・プリンスパークタワー東京で開催、3日間で延べ2330人の株主が出席した。日本郵政の株主総会では、長門正貢社長が5月15日に発表した中期経営計画2020を説明、1株当たり配当を50円以上とする意向を示すなど具体的な経営目標を提示した。株主からは株価の動向や郵便料金を含め、身近と思われるテーマに焦点を当てた質疑が寄せられた。

 3社の最終日となった6月20日、日本郵政の株主総会には上場以来最多の1382人が出席した。昨年(838人)に比べ544人増。開会に先立ち長門社長は「大阪北部地震により被災された皆さまへ心よりお見舞いを申し上げます」と述べた。中期経営計画についての概要説明が行われたほか、13人に上る株主の質疑に対して、担当役員が応答するなど活発な議論が展開された。
 日本郵政の株主数は72万660人(18年3月末時点)、発行済み株式数は45億株。所有株式数割合は、政府および地方公共団体が56・87%、次いで個人その他(自己株式含む・外国人除く)が25・09%となっている。
 今回の株主総会において議決権を有する株主数は72万659人、議決権数は4043万8154個、議決権を行使する株主数は24万5719人、議決権数は3418万8468個となり、議案の決議に必要な定足数を満たした。
 まず八木征監査委員長から、独立監査人による監査の方法・結果を妥当とするなどの監査報告が発表された。
 映像・音声による報告事項概要等の説明の後、長門社長が「日本郵政グループ中期経営計画2020」について説明。①2020年の当期純利益は4100億円程度の確保を目指す②2020年度までの3年間で数千億円規模の投資により利益見通し4100億円にプラスαの上乗せを目指す③利益目標として1株当たり当期純利益(ESP)100円以上を目指す④1株当たり配当額は50円以上と具体的な目標数値を株主に示した。
 決議事項の説明の後、質問などの審議に関する発言を受け付け、13人が質問した。
 「安定配当を期待して株を購入したが、減益との説明があった。今後、配当が減ってしまうのではないかと心配している」との質問には、鈴木康雄上級副社長が「今後の配当方針については、内部留保の充実や資本効率に留意し、利益還元を図りたい。2021年3月期までは1株当たり50円以上を目指す。2018年度については、低金利の影響などで当期純利益3300億円を想定しており、50円の配当をすると配当性向は60%以上となる。配当性向のみならず1株当たり50円以上を配当する」と回答した。
 「若い世代の来店(来局)が重要と考えており、ATMの検索や残高照会のアプリは有用。店舗で開催される相談会やセミナーをウェブで受け付ければ若い人が集う」との意見には、田中進常務執行役が「ATMの検索や残高照会のアプリは最近導入したが、とりわけ残高照会アプリには一定の手ごたえを感じている。年金の相談会、投資信託等の資産運用セミナーなどを開催しているが、簡便に参加できる方法は引き続き勉強する」とした。
 「トール社の買収が株価低迷に影響を与えている。トール社の業績が回復していると聞くが状況は」との問いには、小方憲治常務執行役が「株価は市場における投資家の評価のため、株価の妥当性について申し上げるのは適当ではないが、相対的に低迷していることについては謙虚に受け止め、諸々の努力を通じて企業価値の向上を目指す。中期経営計画に掲げている通り、郵便・物流事業における商品やオペレーション体系の一体的な見直し、金融窓口事業における地域ニーズに応じた個性・多様性を持つ郵便局展開などに取り組んでいきたい」と答えた。
 また「指摘の国際物流は、トール社の経営改善を図っているが、JPとトール社のシナジー効果による国内コントラクトロジスティクス展開などを図ってまいりたい」とした。
 トール社の経営状況については、諫山親常務執行役が「一昨年、豪州経済の減速などで業績が低迷、4000億円ののれん代の一括減損を行った。以来、日本郵便とトール社が力を合わせて経営改善に取り組んでいる。トール社の経営陣の総入れ替えを行い、5つの事業体を3つに統合。オペレーションの効率化も図り、2000人を超える人員削減を行った」と説明した。
 そして「この結果、業績は回復基調にある。2018年3月期決算では、(営業利益)1億1900万豪ドル、対前年比で5000万豪ドルのプラスで営業黒字を確保できた。部門間のオペレーション共有によるコスト削減、IT変革プログラムの推進のほか、成長性の高い地域や分野にシフトしていく。収益の回復と、さらなる成長を実現できる体質に転換していきたい」と述べた。
 「郵便配達に電動アシスト付自転車の導入など設備投資する考えは」に対しては、諫山常務執行役が「郵便・物流事業を行うためには、さまざまな設備・施設が必要。更改投資については配慮し進めてきている。自転車についても、都心部の一部では、ゆうパックなど荷物の配達時に、電動アシスト付自転車の後ろにリヤカーを繋げ台車を載せる試みを行っている。導入についてさらに検討を加えてまいりたい」と回答した。
 設備投資全般については、長門社長が「郵便事業については過去3年間で郵便局に3000億円くらい投資している。中期経営計画では新規業務に対するシステムの変更など1兆円の投資を考えている。前向きの業務を達成できるように考慮していきたい」と回答した。
 「人件費など物流コストの上昇を考えると、今の段階で値上げに踏み切っても世の中の理解が得られると思う。安定的な利益が確保できるのでは」に対しては、諫山常務執行役が「ゆうパックについては、2015年に基本運賃を値上げし、今年3月にも引き上げた。大口顧客の相対運賃についても、引き続き適正な単価をいただくよう見直しに取り組んでいる。理解をいただき単価改定が実現している。4月以降に値上げの効果が本格的に出てきていると考えている」とした。
 郵便料金については、「昨年6月に第2種郵便物等の基本料金を改定、当面の費用の増加分をカバーできると見込む。郵便事業を取り巻く環境が厳しくなっている中、今後も部数の減少やコスト増などを考慮し、不断に検討してまいりたい」との考えを示した。
 「同一労働同一賃金が話題。正社員と期間雇用社員に処遇の差がある」との質問には、衣川和秀専務執行役が「労働条件は業務の内容や責任の程度、職場配置変更の範囲などを踏まえて、労働組合との交渉で決められており、一定の格差があっても不合理とは言えないと考えている。期間雇用社員・非正規社員は、正社員同様に事業運営に不可欠な戦力。処遇改善に努めている」と答えた。
 具体的には、「民営化以降、約3万3000人を正社員に登用。法令の施行に先立ち期間を無期にすることも行っている。2017年4月から約9万2000人を無期雇用に転換、賃金や一時金の改善も行っている。今春闘においても、無期雇用に転換した方に対し、一定の条件のもと夏・冬の休暇制度を充実させた。グループ各社の経営状況を踏まえ、労働組合との交渉を通じて期間雇用社員の処遇改善に努める」と説明した。
 長門社長は「株主同様、従業員も大事なステークホルダー。同一労働同一賃金は大きな時代のテーマであると認識している。真正面から捉えて取り組んでまいりたい」と強調した。
 「郵便料金では重量や大きさを小刻みにすることはできなかったのか。同じサービスをするのであれば大口割引をなくすべきでは」との意見には、諫山常務執行役が「大口顧客には一定のプロセスを経て最低の運賃を設定する。年間の利用個数、サイズ、持ち込む時間帯など利用条件に応じて、オペレーション全体を構築し、コスト積算や利益積上げなどによって、運賃決定を行う。その上で交渉し運賃を決めている。個人の場合は1個1個の積上げコストとなるのに対し、大口は一度に大量に持ち込まれて効率化できるため個人よりも安くなっている。結果としてそうなっていることで理解を賜りたい」とした。
 議案の採決に移り、新任社外取締役の岡本毅氏、肥塚見春氏を含めた取締役15人の一括選任が承認された。(株式)追加売り出しの一時凍結やTOB・MBOを実施し上場廃止する定款一部の変更など株主提案の3つの議案に対しては、賛成が3分の2に満たず否決された。この3議案に対しては取締役会が反対の意向を示していた。


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