「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6940号

【主な記事】

便利なサービス、どの街にも継続的に
郵便局ネットワークを維持
[北海道支社]西澤茂樹支社長

 広大な北海道、札幌一極集中と言われるように過疎地も増加、都市部と他の地域では状況が大きく異なり、2名局も多い。北海道支社の西澤茂樹支社長は「どの街の住民にも便利で間違いのないサービスが、継続的に提供できることに、郵便局の価値がある」と強調。「安心・安全の拠点として、国民の財産でもある郵便局のネットワークを維持することの意義は大きい」が、「街中の郵便局と同様の検査・監査等の間接業務は、新たに仕組みの構築も必要」と指摘する。また、今年度は北海道命名150年の節目の年。特殊切手の発売や記念ポストの設置など「ワクワク感のある記憶に残る年度になる」と期待感を示す。
〈インタビュー=㈱通信文化新報社長 永冨雅文〉


 北海道支社は、広大な地域を統括しています。また、札幌一極集中と言われるように都市部とその他の過疎地とでは地域事情が大きく異なります。郵政事業の経営では苦労も多いと思われます。
 経営に当たって最も気を付けておられることはどの様なことでしょうか。
 支社のある札幌から路程で北の稚内まで約400キロ、東の根室まで約450キロ、南の函館まで約320キロです。札幌には道内人口の約36%に当たる194万7千人が密集しています。
 この広大さと密集という道内環境の中に、1211の郵便局と288の簡易郵便局が置かれています。どの街の住民にも便利で間違いのないサービスが、継続的に提供できることに、郵便局の価値があると思っています。
 経営に当たっては、今から15年前にトヨタ生産方式の実習で修得した「生産性の向上」「品質の維持向上」「事故防止・安全の確保」「営業推進」「人材育成」を基本としています。


 平成29年度は中期経営計画の最終年度でした。北海道支社管内の29年度の営業実績や課題について聞かせてください。
 郵便・物流事業ではアスパラガスの不作、秋刀魚の不漁によるゆうパックの激減に加え、他社の料金値上げの波も下半期になってようやくチラホラ聞こえてくる程度で、際立った弊社への移行もなく、「業務量が減少していく」という危機感がありました。
 そこで、各営業統括本部等から精鋭の営業マンを集めたプロジェクトを発足し、挽回を図りました。郵便・物流事業では3月29日、2年振りに営業目標を達成しました。
 ゆうパックの利用促進を目的とした地場産業の振興支援に加えて、eコマースやホテルから差し出される荷物の奪還および年賀状の「引受」が、ここ10年間で激減していることから、手紙文化の振興といった地味な取組も粘り強く推進していく必要があります。
 金融窓口事業では総貯金純増を意識した取組を推進し、支社別の推進率は第6位と前年度から2ランクアップ。投資信託販売額ではV10は逃したものの第2位をキープし、目標額の1.5倍を販売しました。今年度は総貯金純増と投資信託の新規顧客拡大に向けて、お金の流れが正常に行われるかどうかというのが課題です。
 生命保険の推進率はエリア局が全国第2位で目標達成。しかしながら、金融渉外機能の推進率は65・60%で全国最下位です。払込総額が受取額を上回ることになり、貯蓄性商品の損得で募集活動がしにくくなったのは事実としても、保険とはそもそも保障商品です。料済・減額契約の発生率も全国平均の2倍程度あり、課題は山積しています。
 ただし、営業推進率が向上しない一因は、核家族化の広がりもあるものと思っています。生涯未婚率を2000年と2015年で比較してみると、男女とも約2倍になっており、男性はほぼ4人に1人、女性はほぼ7人に1人が50歳の時点で未婚という状況です。
 「残された人のため、大切な人のため」に保険に入るという必要性が希薄になってきています。商品の紹介の前に、ニーズの掘り起しやインタビューができていないという現状を改善していく必要があるとは思いますが、こういったライフスタイルの変化に対処していくためにも、特に兼担局においては、データを事前に分析し、白地開拓や2千万円の限度額が有効となるお客さまへのアプローチを図る取組等を推進し、併せて週毎の推進管理・予実管理を図っていく必要があります。

 平成30年度が始まりました。新たな中期経営計画の初年度となります。今年度の経営方針の要点や目標について聞かせてください。
 5月に日本郵政グループの新たな中期経営計画が公表されました。今年は郵便番号制度導入50周年、郵便番号7ケタ制導入20周年です。
 経営計画の概要としては、郵便・物流事業に関しては事故犯罪の根絶、売上高利益率を重視したゆうパック等の量的拡大、開局2年目を迎えた道央札幌局への新たな業務の集中と、その効果としてのオペレーションコストの削減および物流ソリューションセンターの稼働率向上です。
 金融窓口事業に関しては事故犯罪の根絶、貯蓄から資産形成のすそ野拡大に向けた取扱局の環境整備と紹介局と取扱局の連携強化、人口減少にあたっても業務量を維持する方策の浸透およびかんぽ営業の推進です。
 今年度、本社から示された金融窓口事業に関する組織業績評価における損益の収益係数・単価は「新規・すそ野拡大」「保有率」という観点に重きを置いている点に特徴があり、着実かつ突破力を有した取組の推進が求められています。
 なお、2018年度は北海道命名150年の節目の年で、各種の記念行事が予定されていますが、赤れんが庁舎(北海道庁旧本庁舎)に7月から12月まで赤い丸型ポストを設置し、札幌中央局のほか北海道庁内局、北海道庁赤れんが前局において小型印を押印するサービスも行います。丸型ポストは小樽の石原裕次郎記念館にあったものですが、閉館に伴って現在は支社の前に移設されています。このポストは期間限定ですが、赤れんが庁舎に置き、市民や観光客の皆さんに親しんでもらう予定です。
 特殊切手の発売や記念ポストの設置などワクワク感のある記憶に残る年度になるでしょう。

 郵政事業は公益性、地域性を発揮することが法律で明示されています。郵便局を通じたユニバーサルサービスの提供が使命です。改めてユニバーサルサービスの意義などについて聞かせてください。また、北海道も人口減少や過疎化の進展といった課題があると思います。郵便局ネットワークの将来像では、運営の弾力性などが検討されています。
 民営・分社化5年後の平成24年10月1日に改正郵政民営化法が施行されたことにより、いわゆる郵政事業のユニバーサルサービスの提供責務が課され、また、ここに来て「郵便局ネットワークの将来像」が示され、その中で「先人たちが築きあげてきた現在の郵便局ネットワークの維持、強化が不可欠である」との指針が出されました。
 道内179の市町村には1211の郵便局が配置されていますが、このうち405局が2名局というのが実態です。安心・安全の拠点として国民の財産でもある郵便局のネットワークを維持することの意義は大きいものですが、訪れるお客さまは少なくても街中の郵便局と同様の検査・監査等の間接業務は常態的に実施しなければなりません。この部分の工数削減やサービス提供に瑕疵がないかどうかを見守る仕組み等を、新たに構築する必要があるのではないでしょうか。
 また、局外作業リスクの負担軽減や輸送線路の短縮等ネットワーク施設の経費削減を目的とした、203の旧集配センターにおける郵便区統合についても地区統括局長等とも相談しながら推進するとともに、288の簡易郵便局とより緊密に連携していくことが大切です。

 地域との連携強化では自治体との包括連携協定の締結が進んでいます。締結の状況や意義、今後の展開などについて方針を聞かせてください。
 昨年9月4日に北海道と北海道支社との間で包括連携協定、10月26日には札幌市と市内228局で「さっぽろまちづくりパートナー協定」を締結するなど、道内179市町村のうち164市町村と包括連携協定を締結しています(5月31日現在)。
 これは、各郵便局における地域住民への献身的なサービスの提供が評価された証であり、20の地区統括局長、92の部会長等の局長から首長等への真摯なアプローチの成果でもあると心から感謝しています。
 協定内容は地方創生や災害対策、地域住民の異変、道路損傷、ゴミの不法投棄を発見した際の通報等ですが、各地公体との交渉、協定内容の詰めや文言整理等に関して、関係する郵便局においてほぼ自力で推進が図られていることはトータル生活サポート企業としての使命感を具現化しているものです。
 これらの包括連携協定の締結を積み上げることは、大きな流れとして行政のスリム化・ワンストップの行政サービスに、郵便局が貢献できる契機になると考えています。

 郵便局のみまもりサービスの実績は。また、改めてみまもりサービスの意義、今後の方針について聞かせてください。
 みまもりサービスの保有契約数は前年度末で推奨件数に対して53%に留まっています。当初の取組としては子世代に本サービスを訴求すべく札幌市役所、道庁、札幌駅等にポスターや電子広告等を掲出しましたが、申し込みの拡大には繋がりませんでした。
 前年度第4四半期からは「郵便局の力を必要としているお客さまをお探しする」という取組姿勢に修正を図りました。函館にある老人ホームの入居者が本サービスの顧客であることから、担当者を現地に派遣し、ホームの経営者に本サービスに関するヒアリング等を実施するなどして、潜在顧客を掘り起こしているところです。
 道内は5年前と比較して人口が10万3千人減少している半面、65歳以上の高齢者は20万2千人増加し、約159万人となっています。このことから65歳以上を対象に発掘するとした場合、支社に与えられたみまもりのサービスの推奨件数は3年間で1000人当たり2.5人の保有契約を持つというレベル感です。
 このお客さまを見つけられるか否かということが試されています。ターゲットとなるお客さまは毎年、確実に増加していきますからアンテナを高くして、丁寧に数多くの声掛けをこまめに実施していくことにしています。さらに、ふるさと納税の返礼品としてもらう取組も強化しています。

 郵便局長、社員の皆さんに望むことは。
 郵便屋さんの品格向上会議や支社経営会議等で平素から話していることは「日本郵便の経営理念に則り、業績評価を意識した仕事をしましょう」ということです。
 昭和59年に入局後、初等部訓練で教えられた「正確・迅速・丁寧」といった文言が、経営理念の中に「地域のニーズにあったサービスを安全、確実、迅速に提供し、人々の生活を生涯にわたって支援すること」として息づいているところも個人的には好きです。


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