「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6940号

【主な記事】

地域を支える気概と誇りを
全簡協・全簡連総会 ユニバの最後の砦


 全国簡易郵便局協会と全国簡易郵便局連合会(小山洋会長/鹿児島・東原)の平成30年度総会が、日本郵便の髙橋亨会長、柘植芳文参院議員、徳茂雅之参院議員の両全簡連顧問を迎え、全国から代表180人が出席して6月2日、東京・芝公園のメルパルク東京で開催された。懇親会には日本郵政の長門正貢社長、日本郵便の髙橋会長、米澤友宏上級副社長ら郵政グループの幹部、全国郵便局長会の青木進会長、渡邊伸司専務理事らが参加した。また、新会長には土屋敏雄局長(新潟・栗野江)、新専務理事には中島久治元日本郵便常務執行役員が就任、新体制の下、一枚岩になってまい進することを誓った。

 総会では「簡易郵便局は国民生活に深く溶け込み、ユニバーサルサービスの最後の砦、地域住民の日常生活に欠かすことのできない存在になっているとの誇りと気概を持って業務に取り組む」と確認した。
 安孫子修副会長(山形・寒河江宮内)の司会で、佐藤秀樹議長(青森・桜川)、手塚一志副議長(栃木・今市清原)を選出して議事を進行した。
 全簡協総会では小山会長が「東日本大震災と熊本地震によって不自由な環境の中で頑張っている。引き続き支援をお願いしたい」と述べた。さらに「日本郵政グループの各社は、株式を上場し、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の限度額の引き上げ、みまもりサービスの実施を全国で展開している。ユニバーサルサービスの安定確保のための交付金法が成立し、限度額の更なる見直しを目指す議論も進んでいる。簡易郵便局を取り巻く環境は大きく変わっている。これに遅れることなく、進んでいかなければならない」と呼びかけた。
 このほか「犯罪ゼロの達成で、小グループ活動は全簡協の性格と目的に合った有効な防犯活動であり、小グループによるお互いの顔が見える防犯取組みの充実強化を図ること」を強調した。また「業務能力の向上。過疎地を中心にユニバーサルサービスを提供する簡易郵便局は国民生活に深く溶け込んだ公的なサービスを提供しており、地域住民にとって欠かすことができない存在。その自覚と責任を持って業務能力の向上を図り、事故のない正確なサービスの提供を続ける」とした。
 そして「犯罪ゼロの継続と業務能力向上に努める一人ひとりの取組みこそが郵便局ネットワークの価値を高める」と述べ、「簡易局が地域を支えているとの誇りを持って精進してほしい」と訴えた。

■髙橋日本郵便会長
満足できるサービスを
お客さまに提供する
 日本郵便の髙橋会長は「先に日本郵政グループの各社の決算が発表され、順調でまずまずの数字を上げた。ゆうパックの想定以上の増加があり、郵便局に携わる人たちのコストコントロールが上達して、収益増となった」と述べた。
 一方、貯金、保険については「マイナス金利の影響が出て、資金運用が厳しく、運用自体がやりにくい時代になっている。貯蓄商品も様変わりになって、時代性に合った商品を販売していくことが大切。おかげさまで郵便局は他の金融機関よりも大きく前進している。ATMについても企業にとって身近なところに置いているし、さらには、三事業に加えて郵便局ネットワークの全体として、みまもりサービスを実施、展開している」と強調。
 「これから先、金融機関は従来の発想を破っていかないと守れない。郵便局の提供するサービスをトータル的に利用してもらうかが重要な鍵である。郵便局のサービスはそれぞれの分野で圧倒的なお客さまを有している。これを郵便局全体で繋いでいくかが大事。窓口でお客さまとのコミュニケーションを保って、満足できるチャンスを提供できることが最大の強み」と語った。
 交付金法が成立したことについて「民営化以降、ユニバーサルサービスの義務を負いながら、株主には満足できる配当を実現していくのは大変だった。金融2社からの日本郵便への支払いには消費税がかかっている。今回、金融2社からの手数料の一部は機構を活用した郵便局ネットワークを維持するための拠出金となり、消費税の対象外となる」と説明。
 「消費税の額が少し減ることになり、大きな前進。総務省でも郵便局ネットワークについて郵便局活性化委員会を設けて検討している。これからの企業は常識を超えた取組みをしないと未来を切り拓けない。簡易局が郵便局ネットワークのトータル的な中で果たす役割を考え、自信を持ってサービスの提供に心がけてほしい」と訴えた。
 全簡協総会では29年度事業報告、同収支決算報告、防犯有効策検討特別委員会提言の実施事項、役員選任、①簡易郵便局の円滑な設置への支援▽簡易郵便局ネットワークの維持発展▽説明及びPRツールの作成②簡易郵便局における行政事務の代行サービスに関する調査研究③簡易郵便局受託業務従事者の指導・育成▽お客さま第一の窓口づくり▽お互いの顔が見える防犯取組み④保証事業の普及・充実を骨子とする30年度事業計画などが承認された。
 全簡連総会に入り、小山会長は「全簡連顧問の柘植先生、徳茂先生を迎えた。柘植先生は先日、内閣委員長に就任された。両先生は、ゆうちょ銀行やかんぽ生命保険の限度額の引き上げ、ユニバーサルサービスの安定的な確保を図るための交付金法の成立、更なる限度額を引き上げるために尽力されている」と述べた。
 「柘植先生は来年夏の参院選に組織内候補として出馬される予定であり、全員で支援しよう」と呼びかけた。
 また、犯罪ゼロの徹底について「平成30年度各都道府県の総会では、最重点事項として犯罪は絶対に起こさないと強い決意が行われた。全簡連としても、防犯有効策検討特別委員会提言の実施事項を踏まえ、全国的な取組みとして、孤立させない、お互いに顔が見える防犯取組みを中心に、防犯施策の充実、強化を図り、犯罪ゼロを目指す」と語った。
 処遇の改善では「前年度に引き続き、日本郵便に要請書を提出。ATMの設置では前進回答を受けた。手数料の見直しについては、基本額のあるべき姿を議論して検討することになっている」と報告した。
 そして、「未解決の諸課題に対して、粘り強く折衝を重ねて、組織の評価を高めることが大切。新体制の下で、情報の共有化と仲間を孤立させない組織作りを強力に推進できるように一致結束してほしい。本年度も活動の原点である全国簡易郵便局連合会行動憲章を基本に、新体制の下、未来志向で精進していこう」と訴えた。

■柘植参議院議員
安心し仕事ができる
環境づくりが重要
  全簡連総会では柘植芳文参議院議員が「簡易郵便局は2万4000のネットワークの一番大事なポジションを担っている。政府においてもこれからの最大の課題である地方創生、地域対策の中で、郵便局ネットワークは非常に大事になっている。一番末端に位置する簡易局は厳しい状況の中で大きな成果を上げている」と述べた。
 「以前の簡易局と今の簡易局とではどう変わったのかというと、ほとんど変わっていない。処遇、施設の面でも大きな課題を抱えている。会社には簡易局の改善を急いでやってくれと言っている。処遇を見直し、皆さん方が安心して仕事のできる環境を作りたい」と語った。
 「先日、大きな法律が成立した。全党で一致した法案を通した。ユニバーサルサービスは国が日本郵政グループに与えた責務で、政府がしっかりコストを見てくれと言っている。郵便局ネットワークを維持するためにはコストがかかる。郵便局ネットワーク支援のための制度ができたのは極めて大きい。郵便局を安定的に経営できる道筋を国も会社も利用する人もこぞって支援する仕組みができた」と話した。
 限度額の問題では「金融庁、総務省、ゆうちょ銀行の考え方があって、方法はまだ見出せない。お客さまサービスの観点からすると、必ずやらないといけない。地方では銀行が撤退しており、唯一残っているのは郵便局である。高齢者が増えており、安定的に生活するため、貯金を使えるようにしないといけない。郵政課題はまだまだ多く、お客さまに安心して使っていただく郵便局にするために、郵政事業にもう少し携わりたいと再び、参院選に出馬したい」と決意を述べた。

■徳茂参議院議員
ユニバサービスの
最前線が簡易局
 徳茂雅之参議院議員は「参院選挙でいただいた強い声援にしっかりと応えていきたい。金融サービスはゆうちょ銀行とかんぽ生命保険と業務委託を結び、日本郵便はゆうちょ銀行、かんぽ生命保険から手数料をもらっている。ここに消費税がかかっている。国が民営化したのだから消費税は何とかしてほしいと要望してきて、新たな法律を作ることになった。これが交付金法」と説明。
 「郵便局のネットワークを維持、ユニバーサルサービスをしっかり担保するため、手数料の一部を別の機関に移行して、その拠出した資金を日本郵便に交付金として支給する。業務委託ではないので消費税はかからない。これはあくまでも郵便局のネットワークを維持するためで、郵便局のユニバーサルサービスが法律上認知されたもの」と述べた。
 さらに「今回の法律は議員立法。自民党だけではなく野党も含め、党の壁を越えて郵便局ネットワークが大事だと認めた法律となっている。柘植先生が根回しを行ってきたもので、地域のために頑張っている郵便局が大切だというところからできた法律。日頃から、郵便局ネットワーク、ユニバーサルサービスの最前線で一生懸命にやってもらっている。このネットワークを守らないと地域が高齢化、人口減少で大変なところまで来ているとの思いがある」と話した。
 柘植参議院議員が内閣委員長に就任したことについて「今国会では極めて重要な法案が多いが、内閣委員会で審議する。ここで通らないと成立しない。ここの委員長が柘植先生である。与野党の郵政議員に対する高い評価であり、柘植先生がしっかり頑張っている姿を認めてもらっていることが大きい。私はこのご恩を来年の参院選で返したいと思っている。柘植先生はまさに郵便局にとってはかけがえのない存在」と訴えた。
 全簡連総会では29年度事業報告、同収支決算報告、防犯有効策検討特別委員会提言の実施事項、役員選任、①簡易郵便局制度の維持発展②処遇改善・業務改善に関する要望の実現③防犯取組み④業務処理能力の向上と営業環境の改善▽簡易郵便局サポート体制見直しの再整理⑤情報の共有化⑥会員の共済・福祉の増進を骨子とする事業計画などを承認した。
 個人表彰に移り、業務成績が優秀で貢献のあった50氏に表彰状が贈られた。代表して、兵庫県の後藤洋子局長(狭戸)が受領した。
 新役員と退任する役員の紹介が行われ、新会長の土屋敏雄局長(新潟・栗野江)、副会長の柳澤秀全局長(愛知・下川)、小牧利明局長(鹿児島・薩摩黒木)、吉田好美局長(石川・山島)、中島久治新専務理事らが紹介され新体制がスタートした。
 中島新専務理事は「簡易郵便局を全体の郵便局ネットワークの中で、存在を高めることと、皆さん自身が簡易局をやっていて良かったと言えるような改善をしていきたい。皆さんと一枚岩でやっていきたい」と決意を述べた。
 懇親会は河村とし子女性部長(下関田倉)の司会で開かれ、日本郵政から長門正貢社長、日本郵便から髙橋亨会長、米澤友宏上級副社長、福田聖輝副社長、谷垣邦夫副社長ら多くの幹部、全特から青木進会長、渡邊伸司専務理事、徳茂参院議員ら多数の来賓が招かれた。
 土屋敏雄新会長が「新潟県佐渡市は人口約6万人、高速船で新潟から1時間かかる。トキが有名で今はきれいな羽をしている。写真を撮っていたのだが、今はキジを捜して撮っている。関係会社の幹部の方の力を借りて、何とか、この重責を務めていきたい」とあいさつした。

■長門日本郵政社長
チームJPで
明るく前進を
 長門日本郵政社長は「先般、決算を発表した。連結ベースで4000億円の目標のところ、4606億円の純利益となった。皆さまの獅子奮迅の努力があったからだと思っている。これから始まる3年間の中期経営計画は非常な低金利で、苦戦すると思うが、チームJPで明るく取り組んでいきたい。ある著名なジャズプレイヤーは、スランプにぶち当たると、もっと練習をする。練習してスランプを乗り越えると、2オクターブぐらい技術が高くなる。そしてスランプは1か月に3回ぐらい来るという。大事なことは真正面から努力をし続けてスランプを克服していることである。明るく一緒に頑張りたい」と述べた。

■青木全特会長
政治課題の解決に
連携を強化しよう
 青木全特会長が「交付金法が成立した。これも柘植先生、徳茂先生の力強い尽力の賜物である。まだまだ、政治課題は山積している。両先生と共に政治課題を解決しよう。来年は柘植先生が参院選に挑戦する。ぜひ、しっかりと一緒に支援し、政治課題の解決に素晴らしい結果を出したいと思っており、更に連携していこう」と呼びかけて、乾杯の発声を行った。
 交流の輪が広がる中、土屋新会長の新体制がスタートし、簡易郵便局がユニバーサルサービスを提供する最後の砦との自負を持って、国民生活に深く溶け込み、地域住民の日常生活に欠かすことのできない存在を目指し、防犯の徹底と業務能力向上を図り、一枚岩となって未来志向の簡易局づくりにまい進することを誓った。


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