「通信文化新報」特集記事詳細

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第6937号

【主な記事】

自治体窓口業務の受託も
郵便局活性化委 新中経と利便性向上で議論

 総務省の情報通信審議会郵政政策部会の第6回郵便局活性化委員会(主査・米山高生東京経済大学経営学部教授)が5月17日に開かれた。「日本郵政グループ中期経営計画2020」(2018年度~2020年度)、「郵便局の利便性向上に向けた取組」についてヒアリングが行われた。地方自治体の受託事務業務や郵便・物流業務の効率化、買物支援など多岐にわたる質問があった。

 日本郵便は諫山親執行役員副社長が「郵便局の利便性向上に向けた取組」について説明した。利便性向上への取組については「3事業のユニバーサルサービスを提供しつつ、地域を丸ごと支える社会的使命を果たすために、郵便局ネットワークを維持・強化する」「公共性・地域性を十分に発揮するために、収益性を確保することが重要」「事業展開の基本はお客さま本位の姿勢で利用者利便の向上に資する」「3事業を中核にグループ一体となった商品・サービスの充実を図る」「新たな商品・サービスの提供に引き続き取り組む」「将来にわたりサービスを安定的に提供するための取組が必要」などを基本にしている。
 利便性向上への取組として、買物支援サービスや農産物集荷場運営事業、スタートアップ企業との共創による荷物一時預かりサービス、検討中の地方自治体の窓口業務の包括的な受託について事例を紹介した。
 地方自治体の窓口業務受託について、日本郵便は「行政の窓口業務を包括的に受託することで市町村の事務の効率化が図れる」という立場。長野県泰阜村からは事務業務の委託の要請を受けているが、支所業務を全て遂行するには法律の壁があり、両者で検討を進めてきた。
 泰阜村からは「役場とオンラインでつなぎ、17業務の申請書を直接代行入力してもらいたい」と要請されていたが、そのうち12業務は法律の規定がないため「局員が役場の端末を直接、操作することができない」という指摘を受けた。今回は請負可能な5業務に限定することにした。諫山副社長は「泰阜村ではまもなく支所を廃止したいということで、まずは修正して先に進もうと考えている」と述べた。
 包括的受託について、自治行政局の上田昌也・行政経営支援室長は「民間に委託できる25業務について、所管する部署と遠隔地の郵便局の中でこれらの業務を行うことについて協議していきたい。我々もしっかり努力したい」と改善に向けて関係省庁との調整を進めていることを明らかにした。
 北林大昌・企画課長は「行政事務の25業務の民間委託については、市町村の適切な管理の下で行わなければならないことになっているが、職員の適切な管理の下という解釈について、引き続き議論していく」と述べている。
 買物支援サービスとしては、愛知県の豊根村で2015年7月から実施している「おつかいポンタ便」を紹介した。豊根村では1169人のうち約120人が買物弱者。日本郵便では、役場の委託を受けて主に商品の配達を担当している。
 諫山副社長は、2011年に四国で始めた買物サービスは利用が伸びず撤退した事例についても説明し、今後については「ニーズのある所で適切なパートナーと組んで実施したい」と述べた。
 日本郵便の竹村優樹・地方創生室長は「買物支援のニーズが高いのは認識しているが、配送コストをどう負担するのか。四国の事例では郵便局が注文のとりまとめをしていたが、梱包業務など様々な業務が発生し、そのコスト負担をどうするのかといった問題があった」と買物支援の難しさを説明した。
 東條吉純主査代理の「買物支援は公共性が高く、市町村が負担する場合の特約運賃で、これくらいであれば可能ということもあるのではないか」との質問に、諫山副社長は「運賃は考慮したいが、特殊なオペレーションが必要になるため、どこまでできるのかは現場の判断。赤字での提供はできない」と回答した。
 横江公美専門委員からは「豊根村の事例では、ビジネスモデルとして成立するのは県の支援が大きいのか」との質問があり、諫山副社長は「豊根村のケースは県から補助金が出ている。ビジネスとして成り立たない所では行政と一緒にするのは良い方向だと思う」と答えた。
 東條主査代理の「郵便事業はコア事業だが、将来の安定化に向けて、効率化への取組は」との質問に、諫山副社長は「DMの需要開拓や手紙の振興をあきらめることなくやりたい。業務の効率化についても、ルート配達の効率化、人的資源の流動化などあらゆることに取り組んでいる。ユニバーサルサービスレベルは決まっているので努力を続けていきたい」と述べる一方で、「海外の郵便事業体では配達日数を週5日にする国や2週間に5日の国もある。ここ1~2年は翌日配達を緩和するところも出てきている。今後はそういうことも考慮していきたい」とサービスレベルのあり方についても言及した。
 日本郵政からは小方憲治・常務執行役秘書室長が「日本郵政グループ中期経営計画2020」の中で、事業の持続的成長や公益性・地域性の発揮、安定的利益の確保を柱とする「トータル生活サポート企業グループ」としての事業方針や利益目標について説明した。
 横江専門委員からはゆうちょ銀行の振込について「個人の利用は高いが、企業には入り込めていないのではないか。企業を取り込めれば収益が上がるのではないか」との意見があり、小方秘書室長は「ゆうちょ銀行は貸付を行っていないので、企業との取引がほとんどなく、企業からの手数料収入の比重は低くなっている。個人中心だが、経営基盤を強化しつつ、頑張って役務収益を上げていきたい」と述べた。
 横江専門委員の「働く人が減る中、供給の方を考えなければならないのではないか」との指摘に、諫山副社長は「人手不足と賃金単価が上昇する中で、業務の効率化に取り組んでいる。郵便と荷物の相互応援はうまくいっている。配達班というグループにして郵便と荷物を一体的に運用。小さいものは郵便で配達する、大きな会社には郵便と荷物を一緒に持っていくなどで荷物の増加に対応している。非正規社員の待遇改善や正社員化、中途採用も行っていきたい」と述べた。


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