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第6935号

【主な記事】

交付金法案を了承
自民合同会議 来年4月に施行へ


 自民党の郵政事業に関する特命委員会(細田博之委員長)が議員立法で進めてきた郵政事業のユニバーサルサービス確保のための交付金・拠出金に関する法案が与党内の調整を終え、今国会に提出される。法律が施行されれば、日本郵便が納めているユニバーサルコストの消費税分が同サービスの提供やネットワーク維持のために活用できる。5月8日には自民党総務会や与党間で承認された。7日には政務調査会の「同特命委員会と総務部会(原田憲治総務部会長)、財務金融部会(義家弘介会長)の合同会議」が開かれ、活発な議論が交わされた。

 提出されるのは「独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部改正案」。郵政事業のユニバーサルサービスコストを「交付金・拠出金」として賄う制度を創設することで、同サービスの提供を安定させるのが目的。開始は来年4月1日の予定。
 拠出金を徴収し交付するのは同管理機構が担うことになるが、役割が増えたことに伴いその名称を「郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構」と改める。
 郵政事業のユニバーサルサービスの負担はこれまで、日本郵便と金融2社間で決められていたが、この制度の創設により、総務省が定めた算出方法により定められる。負担額は利用の度合いに応じて決まる。拠出金と交付金の額はいずれも総務大臣の認可が必要となる。
 同コストを算出するため、日本郵便と金融2社は必要な資料を提出しなければならないことも法案に明記されている。
 拠出金は、郵便局ネットワークの維持に必要な基礎的な費用と事務費から成り、その対象はユニバーサルサービスを提供する日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社。
 同支援機構が拠出金を徴収するのはゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の2社で、同機構から日本郵便に交付される。拠出金はサービスの対価ではないため、消費税はかからない。
 金融2社の拠出金に相当するユニバーサルコストは現状の試算では約2900億円で、実質の消費税額は税額控除により約200億円となる。同機構への事務経費は別途必要。
 同合同会議で細田委員長は「郵政事業は民営化当時から大きな問題を抱えている。山奥でも、82円、62円で手紙やはがきを届けているが、そのコストは極めて大きい。宅配事業者も値上げしなければ人件費を賄えない状況にある」と郵便事業が取り巻く現状を述べたうえで「郵政事業の負担については、かねては銀行・保険事業で利益を上げて、ユニバーサルサービスコストの負担ができることを前提に考えてきたが、マイナス金利下で金融保険事業の利益は期待できない。金融機関は大変な状況になっているが、郵政は融資機能が限定されていて経営的に非常に不利。不安を少しでも軽減するためにこの議員立法を提出したい。慎重な審議をお願いしたい」とあいさつし、法案の提出が不可欠なことを訴えた。
【法案取りまとめまでの同特命委員会の取り組み】
①昨年6月に「郵政事業のユニバーサルサービスを低下させないために郵便局の維持に政策が必要」という要望をまとめ、関係省庁に申し入れた。
②昨年11月、「ユニバーサルサービス確保に向けた今後の基本方針」をまとめ、関係大臣に申し入れ、基礎的措置を行うことになった。
③昨年12月から、郵政事業のユニバーサルサービス確保のための拠出金に関しての法整備に向けて作業を進めてきた。
④4月9日、2つの関係部会との合同会議で、骨子案を提示し議論を経て、法案の条文化の作業を進めてきた。
【郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構の目的】
 同機構の目的として新たに加わるのは「…郵便局ネットワークの維持支援のための交付金を交付することにより、郵政事業にかかる基本的な役務の提供の確保を図り、利用者の利便性の確保及び国民生活の安定に寄与する…」という内容。


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