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第6929号

【主な記事】

「限度額は不便」と利用者
民営化委 群馬県上野村を視察

 郵政民営化委員会(岩田一政委員長)は、群馬県上野村を1月29日に視察した。岩田委員長らは、過疎化が進み地域の金融窓口は郵便局しかない地方の現状を知るため、郵便局や村役場、利用している地域住民に直接、ヒアリングを行った。利用者からは、郵便局を維持するための制度を望む声や限度額があると不便だという意見があったという。

 上野村は人口1215人(2018年3月1日現在)の過疎の村。主な産業は林業や関連の木材加工、木工業など。金融機関は、JA(全国農業協同組合中央会)の金融部門が撤退(ATMは設置)してからは、「楢原郵便局」(藤原貞夫局長)と「新羽郵便局」(新井基康局長)の2局が村で唯一の金融機関となっている。
 黒澤八郎村長は「郵便局以外に金融機関がない村にとって、特に高齢者が直接話ができる金融機関として郵便局が維持されているのはとてもありがたい。Iターン者の大きな支えにもなっている。ユニバーサルサービスを企業努力だけで維持していくことは難しい。国民全体で維持していくという意識が大事で、制度の裏付けがあれば安心につながる」と郵便局の大切さを訴える。
 委員会では2つの郵便局を視察し、局長や群馬県西部地区連絡会の木暮康雄統括局長と意見交換を行った。限度額について「オートスウィングの仕組みについて理解してもらうのは難しい部分がある」「限度額を超過する原因としては相続が多い。流動性貯金を限度額管理から切り離し、定期性貯金のみを規制の対象として考えてもらいたい」「郵便局以外に金融機関がない村では、限度額規制は利用者にとって不便なもの。配慮してもらいたい」「かんぽ生命の限度額は通計部分でなく、基本契約部分を2000万円まで引き上げて利用者の利便性を図って引き上げをお願いしたい」などが出た。
 郵便局のみまもりサービスについては「村には高齢者が多いが、『子どもに迷惑を掛けたくない』と断られてしまう」という意見もあった。
 意見交換には、村の社会福祉協議会や区長会、老人クラブの代表者らが出席。限度額については「住民が安心してお金を預けられる金融機関が地域に1つは必要。ゆうちょ銀行(郵便局)には残ってもらいたい」「老後資金を預けたいが、ゆうちょ銀行とかんぽ生命には限度額が設けられているため超過すると他の金融機関を利用せざるを得ない。店舗が遠く交通手段の面でも難しく不便」などの意見があった。
 民営化後のサービスについては「民営化により手続きが複雑になり、サービスの質は下がったように思う。昔は集荷を頼めば来てくれたが、今は運送業法違反になるとの理由で断られた」「荷物の配達を今日は家にいないから職場に届けてもらいたいと伝えると、他の宅配事業者は持ってきてくれるが、郵便局は当日の対応は難しいと言う。利用者ファーストになっていない」「民営化前は、外出できない時は郵便局が預かり証を発行してその日のうちに現金を届けてくれたが、現在は高崎まで書類を出して許可をもらわなければならず、現金を届けてもらうまでに3日もかかる」と手続き面での不便さを訴える。
 視察や意見交換の内容は「郵政民営化の進捗状況の総合的な検証」の参考情報となる(民営化委員会からの公表資料や上野村役場ホームページに基づく)。


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