「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6925号

【主な記事】

[四国支社]丸山元彦支社長
逆ピラミッド型の組織づくりを
郵便局長と一緒に構築


 四国支社長に着任以来、「やりっぱなしにしないこと」と「コミュニケーションをどう取っていくか」について、特に気を付けて取り組んできた丸山元彦支社長。全国へ向けて積極的に発信していくことの重要性を強調する。営業面では「バランスの取れた営業」を合言葉に、四国支社は昨年度、民営化後初めて金融の全目指標を計画達成した。㈱農業総合研究所と連携した集荷場事業、南予地区の郵便局と宇和島市海上保安部との防災協定締結、路線バスを活用した貨客混載運送、JR四国との「四国地域における協力に関する協定」締結をはじめとした様々な地域との連携施策は着実に成果を挙げ、ウィンウィンの関係がしっかりと構築されている。
(インタビュー=伊藤研吾)

PDCAとコミュニケーション

■郵政事業の運営で、最も気を付けてきたことは
 一言でいうと「PDCAとコミュニケーション」です。支社長に着任した当初から「やりっぱなしにしない」ということで、PDCAを徹底してきました。せっかく苦労して施策を行っても、その評価・反省がなければ、次の仕事に全く生かされません。必ず評価・反省を行い、次につなげられるよう、継続して仕事の質を高めていくようにしています。この2年間で定着してきたと思っています。
 また、できる限り郵便局を訪問し、フェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションを図っています。私自身の想いも伝えられますし、郵便局の皆さんの表情やしぐさなどからも、多くの情報が得られます。単独マネジメント局はアポイントを取りますが、エリアマネジメント局は基本的にアポ無しです。突然の訪問で驚かれることもありますが、大半は気持ちよく迎えていただいています。四国の直営局931局のうち600局ほど臨局しました。一度だけ「どなたですか?」と言われました(笑)

■臨局した際に、どのようなお話をされますか
 局長の皆さんの苦労話や考え、困っていること、支社への提言も聞きます。支社長から突然聞かれてすぐに出てくるということは、普段から問題意識を持っているからだと思いますので、要望事項などできることは速やかに対応するよう心がけています。

■中期経営計画の最終年度ですが、29年度の営業実績はいかがですか
 ほとんどの項目が順調で、郵便物流、物販、金融関係も指標を達成する見込みです。年賀も全国1位でしたし、かんぽも全国的に厳しい中で、目標突破見込みで推進しています。
 支社長に着任した時に、ゆうちょが他の事業と比べて弱いことが問題点だと感じました。特定の時期(年度末)に特定の商品(かんぽ)に力が偏ることが原因のひとつだと考えました。そこで、昨年度から「バランスの取れた営業」を合言葉に、郵便・貯金・保険それぞれに偏らず、全指標の達成に向けて、年間を通じて営業推進を実践していただいています。
 昨年度は民営化後初めて、金融の全目指標が達成できました。今年度も達成できるよう、年度末まで頑張っていきたいと思っています。

 四国の一体感が各地域を支える

■四国の地域性などを教えてください
 四国に来て地元の企業の方とお付合いして驚いたのは、「四国はひとつ」ではなく、「四国はひとつずつ」、そして予想以上に都市と山間部の地域の差が激しいことです。四国の各局を回り、過疎・高齢化がかなり進んでいると実感しました。限界集落を通り越して消滅集落が現実のものとなっていたのです。
 そうした中、四国郵政の一体感は心強く感じました。目標の検討段階では喧々諤々の議論を行いますが、「一度決まれば必ずやり遂げる」という強い気持ちを皆さんが持っていました。単独マネジメント局とエリアマネジメント局とのコミュニケーションも良く、協力して営業などを行っています。OB、郵政グループの皆さんも一体です。支社長としてこれほどありがたいことはありません。この四国郵政イズムを作り上げてきた諸先輩方には心から感謝しております。
 しいて課題として挙げるなら、全国に向けた発信力が弱いということでしょうか。他管内、さらには全国にも応用できる良い取組みや研修などもあります。発信強化や郵政以外の人との関係強化は支社長の最大の仕事と認識し、積極的に発信するようにしています。

■過疎地が多いと思いますが、ユニバーサルサービスの意義や郵便局ネットワークの活用策については
 過疎化が進んだ地域が多い中で、郵便局が最後の砦として、本当になくてはならない存在であることが身に染みて分かりました。以前、山間部の過疎地の郵便局に臨局した際に、若い局長から「目標は必ずやり遂げますから、絶対にこの局は残してほしい」と言われ、心から感動しました。それだけ地域になくてはならない存在で、誇りと使命を持って郵便局の仕事に取り組んでいることがひしひしと伝わり、ユニバーサルサービスの意義を強く実感しました。

■郵便局ネットワークの将来展望について検討が進んでいますが、方向性についての所見をお聞かせください
 郵便局ネットワークの維持・強化のために、具体的に日々の活動の中で郵便局が何を行っていくのかを真剣に考えていくことが大切です。全国一律で行っている商品やサービスの提供方法を、商品やサービスによっては地域のニーズや実情に応じて変えていくことも重要です。
 将来展望の方向性は賛成ですが、実現していくためにはまずやってみることです。支社や郵便局が中心的役割を果たしていくべきだと思います。「迷ったら、是非、まず四国で試行させてほしい」と本社にお願いしているところです。支社がこれまで以上に知恵を出し、郵便局の思いを咀嚼して具体化し、成果が上がって利益が出る仕組みを構築することが必要です。
 一例ですが、四国支社の敷地内の空きスペースをパーキング化したほか、高知中央局では空きスペースをかんぽ生命に借りていただきました。取組みとしては小さくても、具体的な知恵はいっぱいあります。こうして生まれた収益が、それを考えた支社や郵便局、汗をかいた人のもとに、目に見える形でうまく還元されるような仕組みを作れば、今まで以上にモチベーションがアップすると思います。それにより、郵便局ネットワークが地域社会の発展に寄与できる事例もどんどん生まれてくるのではないかと考えています。

■JR四国と「四国地域における協力に関する協定」を締結しました
 地域経済縮小や地域社会衰退という課題を抱える四国において、両社の経営資源を生かし、四国のにぎわい創出による双方のサービス維持・業績向上に向け、連携協力して取り組もうと、昨年10月19日に全国で初めて締結しました。
 予土線沿線エリアをモデル地域として各種協働施策に取り組んでおり、フレーム切手やポストカードの販売、電車内へのポスト設置など行っています。無人駅の近くにも郵便局はありますので、見守りなどでも協力していけると思います。地域振興、見守り、にぎわい創出をやっていきたいです。「地域のにぎわい創出」に向けて一緒に取り組むことで、シナジー効果が期待できます。
 このたび、四国電力からもぜひ輪に加わりたいという申し出をいただいて、3社で協定を結ぶ運びとなりました。5月には3社で、松山で合同イベントも予定しています。3社で四国を盛り上げていきたいです。

■そのほかの地域との連携施策について
 郵政事業は皆さんの生活の一部になっていますが、皆さん知っているようで知らない部分もあります。民営化以降、広報活動が少し弱くなったのではという思いもあります。公益的な企業としてPRや広報活動は非常に重要です。対外的にPRできるものについては極力対応してきました。
 その中で、勢いがついたのは2016年11月に松山で開催された「ゆるキャラグランプリ」で、ぽすくまが企業・その他部門で1位を獲得できたことです。対外アピールへの自信とともに、支社や郵便局、四国全体の盛り上がりにつながりました。全国の郵政グループの皆様に後押しいただいたおかげであると感謝しております。
 自治体との連携協定は長い歴史の中で取り組んでいますが、互いにウィンウィンの関係で協定を結ぶことが重要です。中身が大事ですので、コミュニケーションの活発化など、双方にメリットのある協定を締結していきたいと思います。昨年4月には南予地区の郵便局と宇和島市海上保安部との間で防災協定を締結しました。今後も地域に根差した公益企業や各種団体との連携に取り組んでいきたいです。
 昨年6月24日には子ども向け職場体験イベント「アクア・チッタ郵便局」を開催しました。徳島県東部の中堅・若手局長を中心に企画し、汗を流した素晴らしい取組みです。約3000人が来場し、大成功を収めました。子ども世代に郵便局の存在を知らせていくこともどんどんやりたいと思います。

■高知県・土佐山田における路線バスを活用した配送の状況について
 JR四国バスとの間で、土佐山田~大栃線の路線バスを活用した貨客混載運送を昨年7月21日から開始しました。民営化以降の日本郵便で、郵便局間の輸送という意味では初の取組みです。バスの運行時刻と郵便を運ぶ時間帯がうまく合うか、どの路線で行うかなど調整に苦労しましたが、路線維持の観点からも助かるとJR四国バスからも喜ばれています。日本郵便もコストが半分程度で済みますし、お互いウィンウィンの関係といえます。
 路線を維持していくうえで、バス会社も自治体も困っているようで、愛媛県からも貨客混載の話を受けていますし、積極的に展開していきたいです。双方歩み寄って考えれば、いろいろな知恵も出てくると思います。

■みまもりサービスの意義と実績について
 申し込みは圧倒的に女性が多く、四国では全体の80%を占めます。ご利用者も女性が85%を占め、年齢別では70歳以上のご利用が90%以上となっています。四国では昨年12月を「ジャンプアップの月」、今年1月を「総仕上げの月」と位置付け、1月末での推奨件数達成に向けて取り組みました。
 また、ふるさと納税返礼品として「郵便局のみまもりサービス」を徳島県那賀町と高知県田野町で提供しています。2月からは高知県で、みまもり訪問サービスの利用者へ月1回、郵便物を手渡しで配達し、その際に「声かけ」を試行実施しています。問題が無ければ新年度から四国全体で実施していきたいと考えています。

■四国独自の取組みである集荷場事業について
 2016年11月以降、農業総合研究所と連携して集荷場事業を展開しています。地元の生産者たちが収穫した農産物を郵便局へ持ち込んで、日本郵便の物流網を活用して四国内や関西圏のスーパーに運送する仕組みです。口コミで広がり、少しずつ利益が出るようになりました。本社関係部からご指導いただき骨格ができてきたことに感謝しています。運ぶ力のある日本郵便と、農業関係に詳しい農業総合研究所がパートナーとして情報交換を重ねてきました。農業関係者からの郵便局への信頼度は絶大です。地域貢献、地域活性化にも繋がる取組みになる可能性があると思います。
私たちは1年を基本的なスパンとして事業を経営していますが、農業は自然が相手ですので長いスパンで考えなくてはいけないということも学びました。四国発信の象徴的な事業として、本社関係部とも協力しながら、今後も発展するよう努力していきたいです。

 オール四国郵政で事業活動

■ゆうちょ銀行、かんぽ生命との連携についてはいかがでしょうか
 四国ゆうちょは人口減少や過疎化を背景に年々目減りしており、それを打破していこうと「ゆうちょ王国四国の復活」をスローガンに掲げ、昨年1月に「四国ゆうちょ中期営業計画(3か年計画)」を示し、「総預かり資産の拡大」に取り組んでいます。ゆうちょ銀行四国エリア本部と連携し、貯金を起点に総預かり資産拡大に向け、年金・給与シェア拡大、集中満期対策とニューマネー獲得に取り組み、その結果、年金口座獲得件数は全国1位、満期再預入率も全国上位で推進し、2017年度の総貯金純増は微増となりましたが、まだまだ課題は多いです。
 貯蓄から資産形成の流れの促進の中で、「資産運用商品の拡大」に力を入れていますが、四国エリア本部付の営業INS2人が金融営業部に駐在し、取扱局販売スキル向上のための訪問支援を実施するなど、格差是正に取り組んでいます。
 また、資産運用商品の販売力強化を目的に、同商品を専門に取り扱う渉外社員(資産運用商品専担社員)を昨年10月に2ブロック2局に試行配置しました。その後、実績も上がってきていますので、今後は全ブロックへの拡大を検討しています。
 四国かんぽは「格差の是正」が一番の経営課題です。推進、営業スキル、意識の格差など様々ありますが、全国をリードする四国かんぽを維持していくために、必ずクリアしないといけない課題と捉え、一貫して取り組んできました。
 具体的には、かんぽ生命四国エリア本部と連携し、まずは週単位での推進管理徹底に取り組みました。四国はこの4年間、全国一位の成績でしたが、「ミラクル・ウルトラ・スーパーダッシュ(笑、私が勝手につけた造語です)で2月、3月に遅れを挽回する形で首位になってきました。悪いことではありませんが、バランスの取れた営業には弊害ですし、早期に解決すべき課題と捉えました。
 週単位での推進管理徹底に取り組み、「常時募集体制、週間2%以上確保」を合言葉に、年度当初から各種会議での指導や成績表の発行により、取組みの浸透を図りました。まだまた途上ですが、意識の改善は感じています。
 また、人材育成も課題です。四国はずば抜けて高実績の社員が多いわけではなく、まじめにコツコツ頑張る社員が多いという印象です。その社員が少しずつでもレベルアップすれば、全体の大きな底上げとなり、安定した推進が図れると感じました。
 最前線で活躍する営業インストラクターに生の声を聴いて、様々な意見を取り入れた研修や会議、ライフプラン相談会を徹底して実施し、社員個々のスキルアップに取り組みました。インストラクターが実際にお客さまのもとへ一緒に訪問して、実際に獲得までの話法を実践して、それをまた復習するなど、カリキュラム的にもしっかりとしています。
 今後もかんぽ生命四国エリア本部としっかりと連携し、全国をリードしていきます。

■郵便局長へ望むことは
 この2年弱で、いかに郵便局長の皆さんが地域に根付いているか、日本の地域創生の中心的役割を果たしていく実力を実感しました。今後はいかに現実を動かしていくかがカギだと思います。支社もいろいろと知恵を出していかなければなりません。できるだけモデルケースを作って実際にやってみて、失敗してもそこでやりっぱなしにしない、ということが一番大事だと思います。
 郵便局長の皆様にお願いしたいことは次の3点です。
①リーダーシップ=エリアマネジメント局は部会単位で動いています。部会を率いている方はチームをまとめられる、リーダーシップのある方ばかりです。特に中堅、若手の局長の方にはリーダーシップを発揮いただきたいです。
②企画力=口頭ではなく、文字化する力を付けてほしいです。「まずは企画書を作ってください」とよくお願いします。凝ったものである必要はありません。文字にすると、どのような行動が必要なのかも見えてきます。
③逆ピラミッド=私が郵政に入った頃は本社(本省)を頂点にその下が支社、一番下が郵便局というピラミッド型組織でした。これを、郵便局を最上位とした逆ピラミッド型組織へしようと言われ続けてきました。民営、分社化が一段落し、グループが株式上場した今こそ、再び「逆ピラミッド型」の組織を目指す必要があると思います。そのためにも、郵便局長の皆さんには自信を持って支社へ意見を言ってもらいたいですし、支社も話してもらいやすい環境・雰囲気作りが必要だと思います。


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