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第6921号

【主な記事】

JPインベストメント社を設立
日本郵政長門社長 1200億円を投資

 日本郵政の長門正貢社長は1月30日の記者会見で、年賀状やゆうパックの配達など年末年始の業務運行は概ね順調だったと評価した。ゆうパックは約20%の増となったが、「お客さまには理解と協力をいただき、例年にない繁忙の中、業務に尽くしてくれた郵便局の社員にも改めて感謝を申し上げる」と語った。また、ゆうちょ銀行とかんぽ生命などが新たな運用会社「JPインベストメント」を設立することを明らかにした。第1号ファンドとして、ゆうちょ銀行からの600億円、かんぽ生命からの300億円、第三者からの300億円の資金で1200億円を投資する。新会社はゆうちょ銀行が主体的に投資対象を選定、収益の拡大を目指す。

 長門社長は、まず年末年始業務について総括、「年賀郵便は元旦に15億4300万枚、対前年比で93・8%を配達した。12月31日の最終日までに引き受けた約9割(前年は89・4%)を配達できた。年賀状を楽しみにしている皆さまに喜んでいただけたのではないか」と評価。今回の年賀状が52円だったことについては「事前にテレビCM、ポスターやチラシなどで周知したこともあり大きな混乱はなかった」との認識を示した。
 ゆうパックは「ゆうパケットを除き前年比で19・5%増。例年12月は通常の月の1・5倍くらいの取扱いがあるが、倍近く取り扱ったことになる。先月の会見で12月11日に1万個くらい遅れたと報告したが、その時点で取り扱った個数は377万個。ごく一部で午前中に届けるものが午後になったこともあったが、大きな問題を起こすことなく届けることができたと思う」と述べた。
 「Eコマース市場の拡大や他社の総量規制により、日本郵便への切り替えなどが増加要因となったが、事前にお客さまと交渉し荷物の持ち込み時間を調整、業務の平準化を図るなどの対策を講じたり、アルバイトの確保が100%に満たなかったが、配置を工夫するなどで対応した」とし、「お客さまには理解と協力をいただいたこと、例年にない繁忙の中、業務に尽くしてくれた郵便局の社員にも改めて感謝を申し上げる」と語った。
 1月17日に全国物流ネットワーク協会の賀詞交歓があったが、国土交通省の貨物課長から「他社の動向、Eコマースの進展の中、大変な量を何事もなく捌いていただいたことに大変感謝している」という言葉があったことも披露した。
 また、ダボス会議に参加した印象を紹介した。「インドのモディ首相、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領、カナダのトルドー首相、イギリスのメイ首相など多くのVIPが話をされていたが、やはり主役は最終日に現れたトランプ大統領。マクロン大統領もメルケル首相も多国間の合意が大事だと主張されていたが、トランプ大統領を意識して発言されていたという印象」。「トランプ大統領は最終日の金曜日午後2時にスピーチの時間がセットされていたものだから生で聞けなかったが、アメリカファーストは米単独を意味していないのだと何回も述べ、TPP(復帰の可能性も示唆)という言葉があり、周囲も少しやれやれという感じではなかったかと思う」などと述べた。ムニューシン財務長官、共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務とも交流を深めたという。
 さらに、ゆうちょ銀行とかんぽ生命で初のジョイントベンチャー「JPインベストメント」を設立することを明らかにした。「PE(プライベート・イクイティ)ファンドとの共同投資を企業などにしようというプロジェクト。一昨年の4月からゆうちょ銀行においてもオルタナティブ投資も開始するというので、その中での一環としてPEファンドへの投資も開始している。昨年の第2四半期末ベースでゆうちょ銀行が関係している金額が1・3兆円。実際に投資されている残高が2800億円。これはすべてLP(リミテッド・パートナー)としての投資。今度はGP(ゼネラル・パートナー)として投資することで、ある意味ではこのジョイントベンチャー自身がPEファンドになるというスキーム」と説明した。
 「全体感では200兆円あるゆうちょ銀行の資金のうち約2%、3兆円から4兆円くらいのPEファンド残高を約7年かけて積み上げていこうと思う」とした。目的は「収益的にはGPに払っているフィーを内製化するなどを通じて、収益のアップを図りたい。あるいは自らGPになることによって、ノウハウを蓄積したい。GPとなり事業責任を抱える投資の開始になる」と意欲を示した。
 JPインベストメントの資本金及び準備金は当初15億円、優先株式が95%(14・5億円)、普通株式が5%(0・5億円)。議決権比率はゆうちょ銀行が50%、かんぽ生命が25%、新会社の役職員で25%。規模はスタートして1年くらいしてプロスタッフ30人程度、第1号ファンドは最大1200億円としている。先に設立された新規事業の開拓を目的としたJPキャピタルとは違い「大きな案件も対象になる」。
 2月9日に設立、3月中には営業を開始する予定。新会社については「銀行本体では銀行法上の制約があり、投資する先の業務範囲の規制もある。5%超の議決権の取得・保有を制限するルールもあり、そこを避ける意味でジョイントベンチャー子会社とする」。社長にはゆうちょ銀行の清水時彦常務執行役員が、ゆうちょ銀行と兼務で就任する。
 ゆうちょ銀行は地銀と組んだLPとして、これまでに9件があるが、これは従来通りで、同様の案件があれば引き続き行う予定だ。
 1200億円については、当初はゆうちょ銀行600億円と、かんぽ生命300億円を拠出、900億円作る。残りの300億円は第三者からの資金を受ける。
 対象は「四つくらいの部を作り、主にバイアウト案件。それからベンチャーへの投資、さらに事業再生。そして地方創生に関わる投資についてもこれからGPとして行いたい」とした。
 記者からの積立NISAに対する質問では「昨年の10月から申込み受付を開始したが、12月末時点での予約件数は約2万件。日本全体で25万件から30万件と言われているので、2万件は想定を上回って順調に推移していると評価している。売出しはゆうちょ銀行の直営店233店舗、投信業務をやっている1415の郵便局で始めたので、ネットワークがかなり広いこと、分かりやすい8商品に限定したこと、最低購入金額を1000円にセットしたことが好調の理由ではないか。既存のNISAに比べて、ターゲットにしたいと思っていた資産形成層、40歳代以下の利用割合が高い。ターゲット層に合った」と述べた。


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