「通信文化新報」特集記事詳細

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6913号

【主な記事】

ICT活用で共同研究
日本郵便 加古川市、本田技研工業と協定


 兵庫県加古川市、日本郵便、本田技研工業株式会社は12月1日、「共同研究に関する協定」を締結した。地域が抱える様々な課題の解決や地域活性化・地方創生を実現するため、ICT(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)を活用することで都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化し、生活の利便性や快適性を向上させるとともに、人々が安心・安全に暮らせるまちづくりに取り組むことを目的に、複数分野のデータを収集し分析等を行う基盤(データプラットフォーム)の積極的な利活用に係る共同研究を実施する。

 共同研究の対象となるのは「データプラットフォームを活用したデータの利活用」。三者別の共同研究の目的は次の通り。
【加古川市】▽自動車が走行した位置や車速などの情報を用いて生成される走行データ(プローブ情報)を収集・分析することにより、様々な行政事務の効率化・高度化を図ることを検討する▽郵便車両へBLE(ブルートゥース・ロー・エネルギー)検知器を設置することにより、見守りサービスの充実を図り、官民が連携した安全・安心なまちづくりを推進する▽蓄積したデータの安全・安心ダッシュボード(市ホームページで閲覧可能な情報掲示板)への表示を検討し、行政の透明化、市民の利便性向上を図る
【日本郵便】▽日本郵便が目指す「トータル生活サポート企業」の理念のもと、郵便車両が収集した走行データやBLE検知情報を提供することにより、豊かな暮らしの実現に貢献する▽郵便車両において、リアルタイムに通信するシステム(V2X=ヴィークル・トゥ・エニッスィング=車とモノの通信=ユニット)を備えたIoT機器の有効性を検証し、ICTを活用した郵便車両の将来像を検討する▽収集したデータを活用し、社会の変化に的確に対応した、生活を豊かにする新たなビジネスモデルへの応用を検討する
【本田技研工業】▽Wi―Fiを活用した自動車間や自動車と路上設備間等でV2Xユニットを備えたIoT機器を用い、当該機器の通信及びネットワークの信頼性を検証する▽郵便車両へIoT機器を設置し利活用の可能性を検討することを通して、未来における当該機器の普及を目指すとともに、郵便車両の運用に係る効率化と利便性の向上等を検証する▽信頼性を向上させた車載仕様のIoT機器を開発・搭載し、位置情報・道路路面状態映像・3次元加速度データ・BLE検知情報を時間同期にて一体的に自動で収集することで、人や交通インフラを含めた安全・安心なまちづくりのための見守りデータを提供する
 また、三者別の役割については、加古川市が「走行データ収集基盤を構築し、郵便車両へIoT機器の取り付けを行う」、日本郵便が「加古川市内に保有する郵便車両の走行データを収集し、走行データ収集基盤に提供する」、本田技研工業が「郵便車両から走行データを収集するためのIoT機器の取り付けに関する監修及び保守サポートを行う」となっている。
 加古川市役所で行われた締結式には、日本郵便の大澤誠専務執行役員、矢﨑敏幸近畿支社長、本田技研工業株式会社の庄司周平テレマティクス部主幹、加古川市の岡田康裕市長はじめ、各関係者らが出席した。
 岡田市長は「市は子育て世代により選ばれるまちになりたいとの思いで、安全・安心という分野に力を入れて取組みを進めている。郵便車両等に機器を設置してデータを共有することを通じて、例えば見守りサービスをより多くの数で(位置情報を)検知していけるようになるというありがたい面もある。これまでにも、市の公用車にスマートフォンのような機器を設置し、道路の凸凹などのデータを検知し収集することで、メンテナンス等に生かすという『はたらく車プロジェクト』を進めてきた。そうした面においても互いに連携していけると思う。データの利活用を踏まえて市・民間企業それぞれに、住民の皆さんに提供できるより良いサービスが開発されることにつながれば素晴らしいと思う。締結を機に、地域の皆さんに喜ばれる仕組みを生み出していけるよう頑張りたい」とあいさつ。
 大澤専務執行役員は「日本郵便はトータル生活サポート企業として、2万4000の郵便局ネットワークを全国津々浦々に展開している中で、こうしてお手伝いができることは光栄。郵便・貯金・保険の三事業を通して、国の方針でもある地方創生という名のもとに、地域の皆さまへ重要な社会的使命をしっかりと果たし、ユニバーサルサービスを今後も展開していく所存。日本郵便では日々、全国で約15万の郵便配達の車両を動かして業務を運行しており、その車両の走行データを取って収集・分析することで、交通安全や道路の管理などに寄与できればと考えている。その効率化・高度化を図るとともに、市のニーズにも応えることができる良い機会。実りある共同研究にしていきたい」と意欲を語った。
 本田技研工業の庄司テレマティクス部主幹は「加古川市において、郵便車両にV2Xユニットを搭載し、利活用の可能性や価値の検証を進めていきたい。様々な情報を具体的に集約・収集することで、加古川市あるいは全国社会において交通インフラを含めた安全・安心な社会の実現に取り組んでいきたい」と述べた。
 大澤専務執行役員、岡田市長、庄司主幹の間で協定書が交わされた。加古川市では犯罪抑止、事件等の早期解決、その他市民生活の安全確保を図り、安全で安心なまちづくり推進を目的に、加古川市見守りカメラを今年度約900台、30年度に約600台、計約1500台設置する整備を進めているほか、小さなタグを使うことで位置情報の記録が残せる見守りサービスの整備も進めている。
 一方で、総務省の補助事業であるデータ利活用型のスマートシティ推進事業も進めていこうとしている。その中でデータプラットフォームを構築し、それに基づいて収集したデータを活用していきたいと検討を進める過程で、日本郵便と本田技研工業が郵便車両を活用した実証実験を行おうとしていることを知り、相談したところ今回の協定締結へと至った。


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