「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6910号

【主な記事】

上乗せ規制の撤廃を
局長会 郵政民営化委に意見

 「郵政民営化の進捗状況の総合的な検証」を行っている郵政民営化委員会(岩田一政委員長)は10月27日、郵政民営化の評価や今後の期待などについての意見の結果を発表した。個人58件、団体26件、合わせて84件の意見が寄せられた。委員会ではこれらの意見を来春、郵政民営化推進本部長に報告し、検証の調査・審議に役立てる。=郵政関係の意見の要旨を掲載。銀行、保険関係は次号に紹介=

 募集内容は「これまでの郵政民営化に対する評価」「今後の郵政民営化への期待」「その他」で、募集は9月1日から開始し10月2日に締め切った。10月26日に提出した団体のうち、説明を希望した13団体にヒアリングを行った。
 意見書を提出したのは郵政関係では、全国郵便局長会をはじめ全国簡易郵便局連合会、日本郵政グループ労働組合、日本郵政退職者連盟、鹿児島県東部地区郵便局長会の5団体と全国郵便局長会の青木進会長。また、郵便局に支所業務の委託を希望している長野県泰阜村をはじめ過疎などに悩む9つの地方自治体。銀行関係では全国銀行協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、農林中央金庫の5団体・1金融機関。保険関係は生命保険協会、全国生命保険労働組合連合会の2団体。
 全国郵便局長会は「郵便局ネットワークの利活用による諸課題の解決」と「規制緩和及びユニバーサル・サービス維持のための財政措置」の2項目について意見をまとめた。ヒアリングでは局長会が取り組む地方創生活動としては、地方公共団体との連携強化(基本協定の締結、局舎を観光案内や健康づくりの拠点として活用する。過疎地から撤退する金融機関や地方公共団体・支所の事務委託など)、防災士や認知症サポーターとしての活動、ふるさと小包を活用した全国の特産品の発送などの実績も合わせて報告した。
 また「民営化後は暗黙の政府保証などは存在しないという政府見解が示される中、銀行法・保険業法の上乗せ規制の残存やユニバーサル・サービス義務があるなど自由参入、自由撤退が認められていない。それが民営化してもサービスや経営改善が進まないことがお客さまや株主の不満につながっている。金融2社の限度額の見直しとユニバーサル・サービスに対する財政措置などを速やかに検討していただきたい」という意見。
 青木会長は「民営化当時は分社化に伴い様々な弊害や混乱があったが、郵政民営化法の改正により、弊害の是正や郵便局の金融ユニバーサル・サービスの確保など、民営化により生じた問題は解消が進みつつある」と評価するものの、「改正法の基本理念の実現には金融2社の上乗せ規制の撤廃やユニバーサル・サービスコストの負担の問題を含め、環境整備が必要不可欠で、議論を深めてもらいたい」と要望している。
 今後の期待について青木会長は「顧客の利便性向上には金融2社の限度額の引き上げが必要」「地方公共団体業務の受託など過疎地の郵便局の利活用」「金融2社の上乗せ規制の撤廃」「ネットワークの維持に向けた郵政民営化法第7条の3(2012年の改正で新たに加わったもので、日本郵政と日本郵便に課せられた責務の確保が図られるよう、政府は必要な措置を講ずることを規定)に定める政府の措置の内容を明確にし、実施してもらいたい」「金融2社の日本郵便に支払う窓口委託手数料に係る消費税の特例措置の創設」の6項目を提出した。
 全国簡易郵便局連合会は小山洋会長名で意見を提出。「ユニバーサル・サービスの一翼を担う一員として、過疎地や離島を中心としている簡易郵便局は直営局並みのサービスが提供できない。受託手数料収入を基本にした適切な運営を安定継続するためには更なる環境整備が必要」と主張。「公社化以降は簡易局の3分の2以上が国庫金の直接収納ができない。取扱業務の拡大に支援いただきたい」と要望している。

 郵便局の利活用
 過疎地域の市町村が要請

 郵政民営化委員会には、過疎に悩む市町村から郵便局の過疎地の役割の重要性や利活用を望む意見が多数寄せられた。意見書を提出したのは、長野県泰阜村のほか、高知県大川村、愛媛県鬼北町、島根県海士町、島根県飯南町、岩手県遠野市、山梨県富士川町、北海道弟子屈町、山形県新庄市の9自治体がある。
 長野県泰阜村は、委員会のヒアリングにも出席。郵便局との間で支所業務の委託について協議していることを報告し、委託に必要な法律の整備を要望している。
 泰阜村と郵便局は昨年秋から5回にわたり支所の業務委託について、具体的な業務内容や本所支所間・本所と他の機関との連絡の状況などについて調整会議を開催。3月末には日本郵便にも報告している。業務の受託について山﨑雅明全特副会長(愛知県・甚目寺本郷)は「泰阜村から郵便局で支所業務を受けて欲しいという話があるが、業務の包括契約も考えている。仕事の量が増えていけば、要員の確保もできる。いつまでも赤字でもしょうがないというのでは、ネットワークの維持が難しくなる。行政業務の委託は赤字を埋める方策にもなる」(東海地方会地方創生施策取組報告会のあいさつ)と前向きに進めたい考えだ。日本郵便も実現に向けて検討している。
 同村は人口1673人(4月1日現在)、高齢化率40%(3月末現在)の過疎の村。利用できる金融機関は、信用金庫やJA(ATMのみ稼働)が撤退し、3つの郵便局(泰阜局、温田局、門島簡易局)だけとなった。委員会への意見として「本所と支所の二つの庁舎で窓口業務を行っているが、南側の地区にある支所業務を郵便局に委託することにより、村民の利便性向上を図りたい」と業務委託を切望している。
 支所では25業務を行っているが、民間事業者にはできない項目も多い。同村では「過疎地域では郵便局ネットワークの活用は必要不可欠。法整備などの問題を検討いただき、実現に向けた措置や対応をお願いしたい」と要望。25項目の中で郵便局で取り扱いができるのは、住民票写し・戸籍の附票写し、戸籍謄本・抄本、印鑑登録証明書・納税証明の各交付。2001年の「地方公共団体の特定事務の郵便局における取り扱いに関する法律」の施行により可能となった。しかし支所の業務は、住民異動届や戸籍の届け出、国民年金・妊婦届の受付、国民健康保険受付・交付、母子手帳の交付、印鑑登録、飼い犬の登録など多岐にわたる。
 総務省では「行政としての判断が必要なものもあり、民間事業者にはできないものもある。支所業務のすべてを受託することはできない。業務フローを整備する必要がある。法改正についても厚生労働省など他の省庁が所管する業務もあり、調整が必要」としている。
 今回のケースとは異なるが、行政の窓口業務は民間事業者に取り扱いが開放されている。2007年12月に閣議決定された公共サービス改革基本方針に基づき、競争入札により民間事業者に委託ができるようになった。ただし、業務を実施する建物に市町村職員が常駐し、不測の事態に備え適切な対応が取れるような体制が条件だ。
 可能な窓口業務(2008年の改定で拡大)は、総務省関連では「住民異動届」「住民票の写し等・戸籍の附票の写し・納税証明書の交付」「戸籍の届出」、法務省関係では「戸籍抄本等の交付」「中長期在留者に係る住居地の届出」「特別永住許可等の申請と許可書の交付」、文部科学省関係では「転入・転居者の小中学校の就学通知」、厚生労働省関係では「埋葬・火葬許可」「国民健康保険などの受付・交付」「後期高齢者医療制度や介護保険関係・国民年金の届出・申請・交付」「妊婦届の受付」「飼い犬の登録」「狂犬病予防注射済票の交付」「児童手当の請求・交付」「精神障害者保健福祉手帳・身体障害者手帳の交付」「療育手帳の交付」、国土交通省関係では「自動車臨時運行許可」がある。


>戻る

ページTOPへ