「通信文化新報」特集記事詳細

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第6907号

【主な記事】

民営化10年を迎えた郵政事業
柘植芳文参議院議員


 2007年(平成19)10月1日に日本郵政グループが誕生して10年となった。この間、柘植芳文参議院議員は、全国郵便局長会の会長などを務め民営化の見直しなどに奮闘、2012年には改正郵政民営化法の成立に大きな役割を果たした。2013年には参議院議員への転身と大きな決断を迫られ、この10年を振り返り「郵政の中で35年を過ごしたが、そのほとんどが郵政事業改革の戦いの中にいた」と感慨は深い。改めて「総括をして現状を理解し、次のステップを如何にするかということが大事。日本郵便のビジネスモデルが新しい要素で展開できているかというと、まだ課題は多い。郵政事業の方向性を明確に打ち出すことが重要」と強調する。〈インタビュー=永冨雅文〉

将来展望の方向性を

■民営化から10年、改正郵政民営化法の成立から5年になりましたが、郵政事業にとっては激動の時代でした。その真っただ中で、全国郵便局長会の会長を務めた後に国会議員へと大きな転機もあり、ご苦労も多かったと思います。

 過去にばかりとらわれてはいけませんが、民営化から見直しへと、当事者として大きなうねりの中に身を置き、その状況を熟知してきた郵便局長も少なくなってきますから、改めてきちんと総括をしておくことも重要です。そして、現状を理解しながら、次のステップを如何にするかということが大事です。
 10年前、理念なき郵政民営化に反対と戦ってきましたが、もっと遡れば平成9年の橋本行革で民営化が打ち出されました。それ以前も公社化という話がありました。郵政の中で35年を過ごしましたが、そのほとんどが郵政事業改革の戦いの中にいたと言えます。
 郵便貯金はどうあるべきかと問われ、財政投融資が問題だと変わり、全体の郵政事業が国営でいいのかという議論にすり替わり、郵政公社に落ち着いて民営化等は行わないと法律に明記したのにも関わらず、小泉内閣で一挙に民営化へと走りました。そうした目まぐるしい変化の中でずっと過ごしてきました。
 とりわけ10年前の民営化のときには全特の中にいて、見直しの戦いに最初から参加してきました。当時、現場では民営化になったとしても十分にやっていけるし、むしろ希望感もありました。経営の裁量権が拡大して、国営では行えないことも堂々とできるのではないかという期待感が高かったわけです。
 しかし、実際に民営化となると、全く真逆な現象が出てきました。端的に言うと、地方にある程度の裁量を任せ、伸び伸びと地域の特色が発揮できた仕事が、ビジネスの中央集権化が図られ、全部を中央でコントロールしようとしました。今はやりのガバナンスという言葉に置き換え、本社が一元的に見るという意味で、組織から事業まで集権化しました。(マスタープラン)
〈注〉マスタープランとは郵便局の組織マネジメントをどのようにするかを会社が示したもの。
 結果的には収益ががたんと落ち、期待できるような業務、品質、サービスも保てませんでした。さらに、民営化でサービスが良くなるだろうとのお客さまの期待を大きく裏切り、窓口では罵声を浴びせられました。惨憺たる思いで民営化から半年間を過ごしたわけですが、会社も集権的なガバナンスではだめだ、いわゆる部会や連絡会を中心とする集団管理体制にしなければという理解を示し、徐々に組織も変わってきました。
 ただ、スピード感がありませんでした。このままでは本質的な改革はできない、民営化法そのものの改正をしなくては、郵政事業が終ってしまうという危機感が強くありました。民営化した自民党政権では見直しは難しいと政権交代を目指しました。政権交代は難しく、そんなに早く実現するとは思いませんでしたが、風が吹き民主・国民新・社民の3党連立政権が誕生しました。それから3年、郵政改革法案から改正郵政見直し法案へと困難な道をたどり、自民・公明・民主の3党合意を基に議員立法として改正法が成立し5年が経ちました。

改正法の趣旨を生かせ

■改正法では郵政事業は公益性・地域性を発揮し、郵便局を核として三事業一体のユニバーサルサービスを行うこととされました。郵便局の現状は法律の趣旨に沿ったものに改善されているのでしょうか。

 一口に言って民営化から10年、何が変わったかというと、会社の形や中身はそれほど変わっていません。世の中は変わってきていますよ。かつてNTTやJR、JTなどのように公共体から民間になった企業と比べると、改革のスピード感が非常に遅いということです。
 民間になり、民間的な手法を採り入れないといけないので、当初は民間から経営者を持って来なければならないということは、分からないでもありませんが、それによって郵政プロパーが必要以上に委縮してしまった面があります。郵政事業の独特の本質というものは、民間から来て直ぐには理解できません。プロパーがしっかりと郵政事業の理念を支えることが必要でした。
 評価に値することは何かあるかと言われると難しいですね。良い民間的な手法を採り入れて現場の営業ができるようになったかというと、そうでもありませんし、お客さま本位のサービス提供が深化したのかと、まだまだの感があります。日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命各社のビジネスモデルが新しい要素で展開できているかというと、まだ課題は多いです。
 5年前に改正法が成立、最近は公共性を重視して社会貢献をと盛んに言われ出しましたが、郵政事業がどこを向いているのかが明確ではないのです。民営化当初は目の前の利益を取るために余分なものはやるな、旧来から続いてきた社会貢献活動は一切やるなと現場は締め付けられてきました。今度は地方公共団体と連携し、公共的なことを行う方向に舵を切っていますが、公益性と収益性の方向性が明確でなく一定しないのが残念です。
 現場は新しいものに向かい、様々な仕事に挑戦、郵便局ネットワークを更に活用しなければならないとの思いは強かったわけです。会社がその方向になかなか舵を切らず、現場と本社の意志の乖離が大きくなってしまったということが、今日まで続いています。
 早く基本的な郵政事業の理念、方向性等の考え方を示すべきで、郵政事業は何を目指そうとしているのかが分かりづらいですね。会社はしっかりと打ち出すべきだと考えますが、依然として不明確です。特に改正法以降の5年間、法体系が旧民営化法と変わっているということを経営に携わっている方々に早く理解していただきたいと思います。
 郵政公社までは三事業一体でしたが、現在の事業体系は日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命と四つに分かれています。経営のトップがグループ会社一体となって郵便局を通じて三事業を展開していくという改正法の大きな肝のところをよく理解して欲しいものです。旧民営化法のように各社はお互いに競争し、自立化を目指すのではないということです。とりわけ、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の金融2社が改正法の立ち位置になることです。
 日本郵便の基軸事業は郵便が主ですが、収入の多くを占めるのが金融2社からの代理店業務の手数料で、郵便局ネットワークを維持しています。そうした状況の中で、トップがグループ会社としての三事業一体に立ち切れていないというところが大きな課題です。
 ここをクリアすれば、NTTなどを凌駕する素晴らしい会社になっていくと思います。この10年の間に、何人のトップが代わったのかというところにも顕著に現れています。新しい経営者がその都度、新しい方向性を打ち出そうと懸命な努力をしていますが、結局は事業の継続性を阻害する要因ともなっていることも否定できません。
 国が悪いのか会社が悪いのか、現場の社員には罪がありません。逆に言えば、現場で働く社員が常にそういうことの被害者になってしまい、腰を据えて郵政事業がやるべきこと、目指すものは何かという目標がないことで、やり切れていないというところに課題が集約されていると思います。

■NTTでは民営化された当初は、真藤恒というカリスマ的な民間経営者が社長に就任しましたが、その後は事業をよく知っているプロパーが社長に就任していました。

 民間移行から10年です。10年も経ったらプロパーが経営を担ってもいいでしょう。NTTやJRと違って、郵政事業というのは独特の企業文化を持っています。生い立ちから今日に至るまで三事業というのが基軸としてあり、全て国民生活のインフラとして根付いており、その中で(特定)郵便局長は不転勤で、地域の中に生きろと言われ、寝食を忘れて地域に貢献し、支えてきたビジネスです。
 言葉を変えると歌舞伎の世界のような側面もあり、父から子へと世襲制のような人事を持ちながら、地域の文化伝統をしっかりと守ってきました。こうした事業は民間にはありません。それが郵政事業の中心的な存在です。郵政事業を守ってきたのは、郵便局長が地域住民との連携を深め、様々な苦情や問題を受け止めて、現場で全部を処理してきました。

■長く郵政事業に携わり、その本質は何かをよく理解している方々への期待も大きいですね。

 まだ多くいるキャリアとして郵政事業を支え、その中でずっと頑張ってこられた方々には、今後も頑張ってもらいたいですね。民営化当時、はやり言葉として「官から民へ」というのがあり、官が悪くて民が良いという風潮がありました。官は悪、民は良いと単純な風潮に流され、ここは気持ちを変えていかないと取り残されると先走り、本来の郵政事業の良いところを見失って迎合したと言うと言い過ぎかもしれませんが、そうした傾向もあったのではないかと感じます。
 そのときに「自分たちの事業はこうです」と民間から来た方々を諭すこともあれば、旧民営化法での失敗も起きなかったのではないかと思います。あまりにも民が正しくて官は間違っていると自信を失い、急に舵を切ったものですから、細かいところまで指摘すれば、何で悪いところまで民間の真似をするのだという多くの間違いがありました。それが今日になっても弊害となっているところがあります。
 自分たちが歩んできた基本的な郵政事業の正しさを誇りに思い、その中に新しく民間として自由にやれるところを最大限に採り入れ、そして競争するとの意識でなければ事業は伸びません。さらに、未だに政治が、社会の風評が怖いとの思いがあるので、早く脱皮することです。
 政治がまだ関与していますが、会社ももっと堂々と政治に立ち向うことです。「自分たちはもう民間企業ですよ。なぜそんなにごたごた言われないといけないのですか」というぐらいに腹をくくり、政治に真正面から対峙すべきだと思います。ユニバーサルサービスという国が課した責務を果たすために、障害になるようなものも法律改正ができていません。

グループ一体性の強化へ

■地域に根差した郵便局ネットワークを、今後も維持していくことが求められています。

 郵便局にはビジネスコアが二つあると思います。儲けなければならないところと、儲けなくても公的な使命を持ち、地域の中で貢献、そして会社が成り立ち社員が自らの会社に誇りを持ち、明日に向かって成長できればよいというものです。
 また、会社は成長を遂げなくてはなりません。そのためには儲かるところには積極的な投資と大胆なスピード感のある経営を強く期待するものです。
 例えば株を売って得た利益は、地域住民やお客さまに還元すべきで、株主が中心になる株主資本主義経済の形態とは異なります。収益を上げて株主に還元をしなければならないという形態とは違うと考えます。返すところは社会インフラの郵便局をどう守っていくかということだったり、疲弊する地域の中で郵便局を支えていただいている方々に分配するという公益資本主義的手法が、郵政グループの基本経営だと思います。
 そこの一番大事な部分が政治でも会社、もちろん総務省でも議論されていません。郵政事業というのは、どこを辿っていくのかという羅針盤がないから困っているのです。ここを早く決めないと、本質的な解決につながらないと思うし、経営の皆さまがご苦労されている点だと理解しています。
 郵便局のみまもりサービスが新しい事業として開始されましたが、この位置づけというのも大きな課題です。本来から言えば、収益を上げていく事業ではありません。郵便局は昔から地域に根差し、困っている方々や高齢者に手を差し延べ、基礎的生活インフラである三事業を一体的に提供する機能を発揮しながら、効率的にサービスしてきました。以前の「赤いハンカチ」や「ひまわりサービス」が元祖だと思います。
 収益を上げなければならないと強く求めることは、先ほど述べたように企業理念が不明確なことと関連しています。過疎地で大きく儲かるというのはあり得なく、そこへ資本投下して儲けようとするのは違うことではないでしょうか。以前のように、例えば都市部や儲かるところに大きな設備投資をしたり、新しいビジネスモデルの郵便局を創造すればいいのです。そこは放置しながら急に公共的な社会的貢献と言われたから、そこに対処してビジネスを展開するという発想はいかがなものかと感じます。
 みまもりサービスは地域社会に貢献するもので、利益を上げようと思っていないが、しかし公的な使命を持つ会社として必要なことだと明確な方針を出せば、現場ももっとやりやすいです。そうした方向性が見えないから経営が漂流するのです。

■金融2社を含めグループで三事業一体という意識が薄いような指摘がありましたが。

 法律的には金融2社にはユニバーサルサービスの責務はありません。その責務は日本郵政にあり、100%子会社の日本郵便を通じて提供しなければならないとの仕組みとなっています。金融2社は現在、日本郵政の子会社で、日本郵便との間で代理店委託契約を結んでいます。頭の中で金融2社の経営陣は分かっていても、ユニバーサルサービスを守っていかなければならないという責務が薄いのではないかと思います。
 金融2社は将来的には株を100%売却すると法律で書いてあり、やがて100%株を売ればユニバーサルサービスの提供もあり得ないと考えるのは、ある面では当然でしょう。なぜならば、そこに株主が介在するからです。
 三事業一体であるという法的な枠組みが、改正法でも明確ではありません。ここを何らかの形で明らかにしていくことは、非常に大事なところです。各社のシナジー効果を発揮しての経営が郵政事業の魅力であり、市場関係者もそこに大きな期待感を寄せているものと考えます。
 金融2社の株を売り出していますが、株主が介在しているから問題が複雑化しています。まだ80数%を日本郵政が持っていますから、この間にグループ一体であるという強固な枠組みを作っていかなければならないと思っています。
 一つはグループ会社という形態は、あまり良くないと思います。明確にホールディングス化することです。グループ会社というのは仲良くやっていこうということでしょうが、明確に株式を保有して影響力を行使するホールディングス化です。これは民営化の根幹に触れる課題となり、なかなか難しいです。
 4社の社長が意識合わせをし、グループとして助け合って三事業一体でサービスを提供すると強い意識で固まれば、経営として何でもできます。民間だから早く収益を上げて、市場から早く評価される会社になるという方向だけを向いて動けば摩擦が発生し、各社の成長に大きな期待が持てなくなるものと考えます。

■金融2社の株の売却が進めば、経営のコントロールが効かなくなって一体感が失われるとの危惧を持たれている局長も多くいます。

 法律では金融2社の売却に歯止めはありません。自民党の中でも100%売却することが、果たして良いことかという声は結構あります。しかし今、この問題を持ち出すと政局になってしまう恐れもあります。日本郵政の西室泰三前社長が金融2社の株を50%以上は売らないと言いましたが、ここがデッドラインでしょう。
 決めるのは日本郵政ですから、経営陣がどの方向を出すかは極めて大事で、また、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の経営陣がどのようにクリンチしていくかです。株を売り出しましたが、市場の関係者がものすごく注目しているのは、グループの魅力は全国にある日本郵便の郵便局ネットワークということです。他の民間企業、株主や投資家から見たらたいへん大きな魅力です。この郵便局ネットワークを活用し、物流のみならず金融を含めて新しいビジネスモデルができるのではないかと期待しています。
 この期待に応えるべく日本の市場の中で郵政グループしかなし得ないビジネスモデルを構築し、夢のある郵政事業へとなることを強く期待しています。

サービスは地域の特性に合わせ

■郵便局のネットワーク、特に過疎地などで維持することが大きな課題の一つとなっていますが、特色あるサービスの展開も重要と指摘されています。

 確かに難しい課題です。郵政省の時代はあまねく郵便局を配置し、同じ商品、同じサービスを提供してきました。いわゆるユニバーサルサービスであります。日本郵便の経営として大きく変えていかなければならないのは、国の機関であったときの郵便局は一律に同一のサービスを提供することでしたが、形態が民間になってベストかどうかを白紙に戻して考え直すことです。
 2万4000の郵便局がすべてイコールということで、同じ事業、同じ営業をしなければならないのか、公平に問う距離感で郵便局を配置しなければならないのかということです。
 2万4000の一局一局が郵便局の特色を出し、また、地域の特色を出した事業を展開すれば、もっとバリエーションが広がって、市場関係者から見て更に魅力ある企業になることができます。過疎地も都市部も同じ商品を売り、業務も同じでは魅力が深まりません。
 例えとして、過疎地によくある赤い丸型ポスト、都市部にある四角いポストは質が違う、同じポストでも存在意義が違うと強調しています。四角いポストが設置してある地域は、もっと企業努力をして収益を上げる構造、多様性のあるビジネスが展開できる形に変えていかなければなりません。単局でとは言いませんが、連絡会なら約100局、部会だと約10局ですが、地域ごとに特色あるビジネスを付加してもいいのではないかということはたくさんあります。収益が上がる郵便局には大胆な設備投資をして窓口を改善、三事業以外の新しいビジネスを展開して収益を上げていくことです。
 いずれにしても、地域やエリア単位で、異なったビジネスを展開できる道を早く作ることです。そのためには、新しいことを行っても一つのシステムで消化できるネットワークの構築が急がれます。現在の社会ニーズにマッチしたビジネス体系にしていくことです。
 そうしないと過疎地の郵便局は守れません。郵政省の時代でも過疎地の郵便局は赤字でした。しかし、そこの丸型のポストが都市部の四角いポストも守っています。この企業価値を経営陣がいかに見出していくかということです。そうすれば、郵便局ネットワークの維持はそれほど難しくありません。
 国営時代には現にそれでやってきましたし魅力がありました。4社に分かれると当然無駄が出ます。総務部などの共通部門は各社にあり、人員が分散され、人件費のコストもかかります。例えばゆうちょ銀行の直営店が約290ありますが、この直営店も郵便局と同じ業務を行い、経営効率、お客さまサービス向上を阻害しているものと考えます。こうしたことを大胆に見直し、改革を進めることを経営陣には強く求められると考えます。
 このような組織の見直すべき個所は多く見受けられます。民営化から10年を迎えた今、一度立ち止まり大胆な見直しを勇気を持って進めることを経営陣に期待するものです。

■直営店は住宅ローンの与信業務などに必要だからと言われてきました。

 もともと、直営店を作ったときの説明は、ゆうちょ銀行の新しいビジネスモデルを作り、それを市場で調査しながら全国規模で発展させるためということでした。しかし、それは全く機能を果たしていません。さらに、ゆうちょ銀行は製販分離しています。ゆうちょ銀行で商品を作り、販売は日本郵便が担っています。9割も販売を依存している会社に、わずか1割ぐらいしか販売していない会社の作る商品を営業させるのはロスも大きく営業面で非効率です。
 当初から製販分離はおかしい、販売戦略もしっかりと営業の9割を担う日本郵便にやらせるべきだと主張してきました。それがある意味では直営店不要論にもつながります。お客さまはゆうちょ銀行ではなく郵便局から買ったと思っています。直営店としての在り方を検討し、その意義が発揮でき効率性を高めるものであるよう早急な検討を期待するものです。

■地域に合った特色あるサービスの提供には、現場の意欲を喚起するためにも権限委譲ということも求められてきます。

 民営化され、ガバナンス強化ということで、全ては中央の指示どおりに行え、勝手にするなと言われました。その時の大変さは私も実感しました。コンプライアンス、ガバナンス違反、リーガルチェックとガンガンやられましたよ。何をするにしても本社、委託元からの許可を得て、規格に合ったものしかできませんでした。
 その当時に現場で起こった現象のひとつに、社員たちはもう余分なものをやらなくてもいいじゃないか、言われたことだけやればいいではないか、こういう文化が徐々に浸透したわけです。意欲的なことを行っても怒られる、お客さまに喜ばれて収益が上がってもコンプライアンス違反だといって処分される、それでは言われたことだけをやっておこうとなってきたのです。
 各郵便局や部会で、お客さまのためにと行っていた様々な施策もなくなり、待ちの姿勢が強まってしまいました。ゆうちょ銀行の施策も本社で決めたことを全国に一律に落とすわけです。都市部もあれば過疎地もありますから、そんな同一施策が全てのお客さまに喜ばれるということはあり得ません。
 このようなことで、フロントラインで元気を出し、自分たちで企画して頑張れと言っても、なかなか出てこないのです。世代交代も進み、郵政公社などの時代を知っている局長も引退する人が多くなりました。新しい局長が増えていますが、やはり、現場から事業の芽が出てこないといけません。
 よく話しているのは、郵政事業の起爆剤となるのは本社でも支社でもなく現場だ、現場の郵便局や部会で考えたビジネスを、現場から発信し、行動しなくては事業の明日に期待は持てません。もし、本社がコンプライアンス、ガバナンス違反だとか言ったら、それは戦おうではないかと。現場からの発信力が大きな力になったケースがいくつもあります。それが現場力だと思います。本社が作ったものを現場で待っているようだと、改革は5年も10年もかかります。現場から改革の芽を出そう、まず一歩動こうと話しています。会社の経営陣もそのことに強く期待しているものと思います。

■地域のことを最も知る局長の役目でもありますね。

 地域に根差した郵便局の役割です。まさに局長会という組織は、チームで頑張って助け合っていくことが求められています。支社ごとでやるとなると、また難しくなります。ある意味では、支社も本社に顔が向いている傾向があります。
 人事などに束縛されない現場が新し

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