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第6906号

【主な記事】

郵便局の最適配置は
民営化委員会で意見交換

 郵政民営化委員会(岩田一政委員長)の第175回会合が10月11日に開かれ、財務省から日本郵政株式の2次売却の規模など、日本郵便から郵便局ネットワークの現状、機能強化の取組み、野村證券から物流業界の現状や海外郵政事業体の動向について説明を受けた。
 委員会後の記者会見で、岩田委員長は株式売却については「2次売却が日本郵政のみとなった理由、1次売却との違い、金融2社の売却時期、自社株買いを今後も定例的に行うのか、さらに自社株の用途についての考え」などについて委員からの質問があったことを明らかにした。
 郵便局ネットワークの現状については「過疎地でも苦労しながら郵便局ネットワークを維持していくという点は評価。コンビニがない地域は、郵便局がその役割を果たすなど、地域のコミュニティセンターのような役割を果たすことができるのではないか」との意見があった。
 また「郵便局を再配置する際、地域全体を見てサービス提供についての設計をしているのか、その際、どの段階で機能の再配置の決定をしているのか。また再配置の郵便局数、来局者数のような廃止の際の基準は何か」との質問もあった。
 10月23日に群馬県多野郡上野村を視察することも明らかにした。民営化委員会としてこれまでも地方視察をしているが、「ユニバーサルサービスを維持する上で、様々な困難があると思われる地域の郵便局を視察、総合的な検証を行う」ことが目的とした。
 記者からの「郵便局を廃止する場合の基準はあるのか」との質問には、「委員から廃止されている郵便局もあるが、来局数のような基準があるのかとの質問があり、日本郵便からは一時閉鎖の状況が長期化した場合に自治体と相談して決定する」との回答があったとした。
 日本郵便は、営業している郵便局について2016年度末で直営局が2万91局(3300局が集配拠点)、簡易局が3978局の合計2万4069局で、2007年10月の民営化時点の直営局2万234局、簡易局3882局の合計2万4116局に比べ大きな変化はなく維持されているとした。
 一時閉鎖中は、2007年10月の直営局7局、簡易局417局の合計424局が、2016年度末では直営局67局(うち42局は震災の影響)、簡易局285局(同14局)の合計352局(同56局)となっている。
 また、過疎地における郵便局は、2007年10月の7355局(直営局5460局、簡易局1895局)が2016年度末で7633局(直営局5635局、簡易局1998局)となった。約300局増加したのは、過疎地に指定された地域が追加されたことによるが、郵便局ネットワークの水準は維持されているといえる。
 郵便局の最適配置についても、日本郵便は地域の変化に対応した店舗配置に取組んでいるとし、「人口増加の地域への新規出店の一方、利用の少ない郵便局を他の地域へ再配置したり、都市部の統廃合、過疎地のユニバーサルサービスを確保しつつ需要規模に応じた運営形態の見直し」をあげている。
 民営化以降、新規出店は42局、都市部の郵便局の統廃合は102局、簡易局への変更は41局となっている。
 郵便局の再配置について、岩田委員長は「過疎地の簡易局については、後継者不足などにより一時閉鎖のものがある一方で再開もあり、維持する上でのエネルギーをずいぶん使っていると思う。都市部については、大規模な商業施設などの中に郵便局を置くと利用者は増えるが、家賃が高いこともあり、全体の収益にどんなインパクトがあるのかといった委員からの質問もあった。日本郵便からは収益を考え再配置しているとの回答だった」と述べた。
 再配置の方向については「ユニバーサルサービスを維持するためには、過疎地においても都市部においても行うべきことがあると思う」との考えを示した。
 日本郵政の株式売却については「委員から金融2社の株式売却時期について質問があったのでは」との問いに、「財務省は現時点では決まっていない。金融2社は50%程度になるまで段階的かつ早期に売却が必要という方針。既存株主への影響、ユニバーサルサービスの移行状況、グループの一体性、各社の経営状況、マーケットの状況などを勘案して決定していくと日本郵政からの回答があった」とした。
 物流業界の現状、郵政事業の国際動向については「各国の事業体ともパーセル、ロジスティクス事業などを伸ばすことで、営業収入を維持しているとの説明があったが、具体的には、日本郵便はどこを伸ばせばよいと考えているのか。さらに郵便ネットワークを再構築するための切り口は。ベルギーのbポストの営業利益率が高い理由。シンガポールポストの郵便の伸びが高い理由は」との質問があったとした。
 これについて、岩田委員長は「ベルギーのbポストはメールの減少をパーセルの増加で補ったこと、人員の見直しをして効率化を実施してきた。さらに欧州域内を対象とした戦略を積極的に行ったことが要因。シンガポールポストは郵便物数が増えているが、これは国際郵便との説明があった。ベルギーも国内は減っているが国際は増えている」と答えた。
 「bポストなどの事例が参考になるのか」には、「パーセル、ロジスティクス、国際などの成長戦略を構築することが重要との指摘もあったが、中期経営方針についてしっかり見ていきたい」と語った。


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