「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6906号

【主な記事】

郵政グループの一体性が重要
高まる郵便局の役割
徳茂雅之参議院議員


■郵政民営化から10年、見直しから5年という節目を迎えました。郵政事業にとって激動の10年間でしたが、郵政民営化に関わってこられた関係者の一人として、感慨深いものがあるのではないでしょうか。
 率直にいって、郵政民営化からもう10年も経ったのかという感じですね。郵便事業が、前島密翁の手で146年前の明治4年に創業、その後、郵便貯金・簡易保険事業を加えて、国営の三事業として国民生活、地域のためにしっかりとその役割を果たしてきました。
 振り返ってみますと郵政民営化の議論は、橋本首相当時の平成9年9月に行政改革会議「中間報告」で、郵便貯金は徐々に民営化、簡易保険は民営化が提起され、最終的には、平成10年6月の中央省庁等改革基本法で、省庁を再編し、郵政三事業は総務省の外局である郵政事業庁に移管した後に、国営の郵政公社に移行、民営化の見直しは行わず、郵政事業、郵便局の役割を的確に果たしていくことになっていました。
 ところが、平成13年4月の小泉内閣誕生後、「郵政民営化を小泉構造改革の本丸」と位置付け、平成15年4月に誕生した日本郵政公社の中期経営計画終了後に、郵政事業の民営化を実現するという話が浮上し、竹中大臣が担当する経済財政諮問会議での議論を踏まえ、郵政民営化法案が国会に提出されました。
衆議院は僅差で可決、参議院では否決されたため、衆議院が解散され、その後、平成17年10月に「郵政民営化関連6法」が成立して、平成19年10月に郵政民営化がスタートした訳ですが、今申し上げましたとおり、この間、本当に政治に翻弄されたという気がしております。
 ご存知の方も多いと思いますが、民営化当初は、窓口が混乱したり、5社体制の組織的な問題などもありましたが、郵便局長や社員の皆さまの必死な頑張りで、地域のお客さまの信頼も大きく損なうこともなく、また、地域のために果たしている郵便局の役割・存在意義というものも、国民・利用者の皆さまにご理解いただいてきたものと思っています。
 旧郵政民営化法では、10年後の平成29年9月末までに、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は全株式を売却し、日本郵政の株式は3分の1以上を残して売却することになっていました。このとおりであれば、ゆうちょ銀行、かんぽ生命は株式を全て売却し、この10月に日本郵政グループから離脱することになっていたわけです。こうなってしまうと郵便局、郵政三事業の形がどうなっていたのか、正直、なかなか想像もつきませんが、今頃きっと大変な状況になっていたのではないでしょうか。
 このような事態を避けるため、柘植芳文参議院議員、当時の全特会長を始めとする関係の皆さまの並々ならぬご尽力で、平成24年4月に「郵政民営化法等の一部を改正する法律」が成立しています。この見直しで、金融2社の株式の10年後の全株処分の縛りがなくなり、郵便局会社と郵便事業会社の合併による4社体制、日本郵政と日本郵便に郵便・貯金・保険のユニバーサルサービスの提供が義務付けられることになりました。
 郵政民営化法に基づく前半の5年と会社の統合もあった改正郵政民営化法に基づく後半の5年を比較すると、明らかに郵政民営化の見直しによって、郵便局の役割、郵政グループ全体の一体性、ユニバーサルサービスの確保の重要性などといったものが、改めて再認識されることになったものと考えています。
 民営化当時のどちらかというと新自由主義、市場原理主義といった、兎にも角にも民営化といった議論は様変わりしたと思っています。

■昨年は参議院議員へ当選という新たな転機もありました。
 昨年の参議院選挙では、全特会員、夫人会など多くの皆さまのお力添えによって当選させていただきました。国会議員として2年目に入りましたが、皆さまの熱い思いを決して忘れることなく、ユニバーサルサービスのコスト負担問題、委託手数料に係る消費税の問題、郵便局ネットワークを活用した地域との協調・連携などの政治課題の解決に向け、全力で取り組むことにしております。
 地方に出かけたり、議員会館にお出でになる多くの郵便局長の皆さまからは、少子高齢化、人口減少が進展している中で、地場産業や地域経済の担い手の減少は、郵政サービス、郵便局の在り方にも直結する問題との切実な声を聞かせていただいております。10年前には、考えてもみなかった厳しい状況になってきていると認識をしていますし、それだけ郵便局に対する期待も高まっているものと思っています。皆さまにお支えいただいている国会議員として、より一層真剣に取り組んでいく必要があるものと考えています。

■振り返りますと省庁再編、その後に日本郵政公社となれば、民営化等は行わないとされていました。
 前島密翁が創業したときの郵政事業、郵便局の役割は、公的な使命、まさに地域のためにしっかりと郵便局を通じて国民生活を支援するということでしたが、10年前の郵政民営化によって、利益追求が重視され、この哲学が毀損されるのではないかという心配、声はありました。
 私は、郵便局の価値というのは、全国津々浦々のネットワーク、そして地域の皆さまに郵便・金融サービス含めてユニバーサルサービスをあまねく提供するというのが一番の役割であり、その基本が損なわれるのであれば、本当に郵政事業の崩壊につながるという思いを当時は持っていました。
 郵政グループ、郵政事業にとってこの10年、様々な出来事がありましたが、基本的な使命を取り戻し、あるいは新しい役割を見出しつつあるのではないかと感じています。

■民営化当初は、分社化の様々な弊害が現れ、郵便局への声も厳しいものがありました。5年前の改正法によって、金融を含めたユニバーサルサービスを郵便局で提供するという方向になりました。
 法律では金融2社については株式を完全にグループから放出するという前提になっていたわけですが、少なくとも現時点ではゆうちょ銀行、かんぽ生命v の株に関しては、日本郵政の経営判断でどのようにしていくかを考えていただくことになっています。グループにとってみれば、郵便局で金融サービスを提供することは経営の一番の支えであり、地域の皆さまにとっても郵便局を通じて全国どこでも金融サービスを受けられるというのは、まさに安心の基礎です。
 ここが民営化した当時の前提と比べるとしっかり確保できているというのは、大きく変わってきたところです。民営化当時、リスクを遮断するということで郵便局の中に壁を作り、昨日までは同じ公社の職員だったのが、グループ会社とはいえ別会社というので、よそよそしいというか郵便局の業務運営が非常に不便になったという実態がありました。現在も、ゆうちょ銀行の支店と郵便局が競合する内部的な問題はありますが、全体として金融サービスもグループ、郵便局のサービスだとゆうちょ銀行、かんぽ生命も意識していると感じています。郵便局が事業の基軸であることは、地域から期待されていることでもあるものと考えます。

■ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式売却によって、グループの一体感が希薄化するのではないかとの懸念も一時期はありました。
 私は、民営化以降、かんぽ生命に長くおりましたが、営業実績の9割が郵便局での販売実績によるものです。逆に言えば、金融2社からすると郵便局はなくてはならない不可欠な存在ですし、ゆうちょ銀行、かんぽ生命は、郵便局の営業や業務が円滑にいくように一生懸命に考えざるを得ないのが実態です。
 郵政グループが一体であることこそが、業務品質や営業実績の向上にもつながり、会社はそれぞれ別ですが、グループの一員だという意識をこれまで以上に強くしていくことが望ましい姿だと思っています。

■先月、日本郵政株式の第2次売却が行われました。金融2社の株式を含めて今後の方向性を。
 今回、売り出されたのは政府の保有している日本郵政の株式です。これは法律で政府は3分の1超を保有しなければならないとされています。逆に言えば3分の2まで売却することができるということですが、東日本大震災の復興財源に充てるために、今回の2次放出ということになっています。
 一方、ゆうちょ銀行、かんぽ生命株式の売却については、経営の自由度を高める業務規制の緩和の問題はありますが、グループ全体の経営判断だと思います。改正郵政民営化法では、「できる限り早期に処分する」となっていますが、どのタイミングでどのように売却するかは、グループ全体の経営状況や取り巻く経済情勢、他の金融機関のサービスに与える影響などを慎重に考えないといけないと考えます。
 とにかく一番重要な点は、グループ全体の一体性、ここを損なうようなことがあってはいけないし、地域や郵便局を利用する皆さまが、最も郵便局に期待するところでもあろうかと思っています。

■郵政グループの中核を成す郵便局ネットワークの更なる活用が求められています。
 最初に郵便事業が明治4年、その後に郵便貯金事業、簡易保険事業が創業され、郵便局はこの郵政三事業を一体的に提供してきました。さらに、三事業だけではなく、地域の拠点としていかに活用するかが命題となってきました。国営時代、公社、そして民営化になってからも様々なビジネスを展開してきました。いわゆる提携サービスです。
 特に、少子高齢化、人口減少ということで、地方の活力が失われつつあることから、政府も地方創生、地域活性化を積極的に進めてきています。郵便局は長い歴史の中で、地域の行政や住民の皆さま、地場産業などとの強い結びつきがありました。
 JAや小学校などの公的施設が統合され、本当に安心できる拠点が郵便局だけという地域も増えてきています。郵便局に対する期待が相対的に高まっています。こうした期待にしっかりと応えていくことが、これからの郵便局に求められる大きく新たな役割です。
 郵便局のみまもりサービスが10月から本格的に実施されますが、三事業にプラスαの事業の一つです。高齢化は地方の問題だけでなく東京等の都市部も含めて進展していますが、地域によって事情は異なりますので、地域の実情に応じて郵便局が郵便局らしい役割をしっかりと果たしていくことが重要と考えています。
 郵便・貯金・保険は全国一律の基本的なユニバーサルサービスです。しかし、地域におけるサービスには、各々の特色があっても構わないのではないかと思います。
 地方創生のプログラムなどは、政府や自治体がそれぞれの事情を考慮して進めているのでしょうが、郵便局が各々の地域でできること、それは地域に密着し、地域の事情に詳しい郵便局長の皆さまが一番よく知っているのではないかと思います。地域の課題を自治体などと連携して解決する役割を郵便局が果たしていけるように取り組むことが重要で、それが地域の皆さまにも期待されていると思いますし、本社や支社には、郵便局をきちんとバックアップしてあげる姿勢が求められているのではないかと考えています。

■高齢化、人口減少社会の進展に伴い、過疎地の郵便局の維持が大きな課題です。郵政グループ全体の収益構造も強化していかなければなりません。
 5年前の民営化見直しで、郵便局の設置や郵便サービスはユニバーサルサービスということに加え、金融サービスについても日本郵政と日本郵便に、郵便局を通じてユニバーサルサービスとして提供しなさいとなったわけです。一般論で言えば、国がそういうことを求めている以上、本来であれば国から何らかの支援措置があってしかるべきだと考えるのは当然のことだと思います。
 そうでなければ、経営判断で自由にサービスを止めたり、不採算なところから撤退したりとか、これは民間企業からいえば当たり前とは言いませんが、経営が傾いたらそもそもサービスが提供できなくなるわけですから、最後は撤退等の判断もせざるを得なくなってしまいます。
 しかし、日本郵政と日本郵便には、ユニバーサルサービス提供の義務が課されています。今回の税制改正では、会社間の委託手数料に係る消費税については、過疎地の人件費分の減免措置を求めていますが、総選挙の関係で、党内の議論が一時停止しています。総選挙後に議論が急ピッチで進められるものと考えていますが、私もいろんな場面で、国の支援措置の必要性であったり、消費税の負担の見直しなどを訴えていくことにしています。
 昨年、限度額を一部ですが引き上げられ、ようやく固い岩盤に風穴を開けることができましたが、他の銀行や保険会社と比べるとまだまだ不十分です。民営化して一般の株主も多くいる中で、こうした制約、手かせ、足かせをしたままの状態で競争しろというのも非常に不公平な話です。株主からも、会社の利益が上がらないということであれば、限度額を含めて様々な制約を撤廃し、経営基盤を安定させて収益を挙げる機会を増やせといった声が上がってくるものと思っています。
 最後は経営判断ですが、その経営判断の余地を与えない様々な制約は、早期に取り除く必要がありますし、逆に国が課しているユニバーサルサービスについては、何らかの形での支援措置の必要なことを政治の場でしっかりと求めていきたいと思っています。

■経営基盤の安定ということでは、各種の上乗せ規制や限度額などの撤廃が求められています。
 ゆうちょ銀行については、300万円の引き上げに止まりました。限度額を上げると資金シフトがあるのではないかとの議論もあり、状況を見ようということでしたが、低金利の時代に上げたからといって顕著な資金シフトが起こるはずもありませんし、データでも証明されています。
 今回の自民党の選挙公約の中でも、「資金シフトの状況等も勘案しつつ、ゆうちょ銀行・かんぽ生命の限度額の更なる見直しを検討します」と明記されており、この点も引き続き主張をしていくことにしています。
 最も良いのは完全自由化ですが、定期性を引き上げるのがいいのか、あるいは使い勝手という面では、日常の出し入れをしている通常貯金の部分を別枠にして撤廃するのがいいのかいろいろな選択肢があるものと思っています。
 かんぽ生命については、通計部分で300万円から1000万円に700万円ほど上がりましたが、基本の部分が変わっていませんので、この引上げも一つのテーマだと考えております。
 いずれにしても、最も重要なことは、地域の郵便局を利用されるお客さまが、不便を感じないように、いかにサービスの向上を図っていくかということで、民業圧迫云々ということでなく、地域のお客さまに役立つかを第一に考えていかないといけないと思っていますし、この観点に立って、自民党内でしっかりと発言をしていくことにしています。

■郵便局は地域の中核として、様々な地域貢献に積極的に取り組んできました。地方創生を含めて、郵便局は非常に期待されています。
 郵便局は全国に2万4000、地域に根差して長年にわたりサービスを提供し、地域からの信頼も厚いと感じています。 郵便局で働いている皆さまが、一生懸命に地域のために何ができるのかを考え、連綿と取り組んでこられたことがすべてですが、これからも、地域に貢献し、地域における郵便局の有用性を高めていくことを会社の経営陣も政府も、そして政治家である私も含めて政治全体としても取り組んでいかなければならないものと自覚をしています。
 まだまだ様々な制約が残っていますが、新規サービスを含めて地域に的確に提供できるように知恵を絞っていくことが必要ですし、郵便局で頑張っている局長、社員の皆さまが意気に感じて、やり甲斐が持てるように経営側の努力も必要だと考えています。
 単に経済効率性や収益・業績だけではなくて、地域に貢献することは、回りまわってお客さまが郵便局を利用して業績が挙がることにつながるという観点での経営側の積極的な取組を期待したいですね。

■改めて全国の郵便局で働いている局長、社員の皆さんにメッセージをお願いします。
 昨年、多くの皆さまのご支援をいただき、国政の場に出て1年余り経過しましたが、徳茂が国会議員として皆さまの期待に応えることができたのかと問われるとまだまだ不十分だと思っています。2年目に入りましたが、郵便局長の皆さまの目線や真摯な声を大切にし、また、これまでの議員としての経験を活かしながら、皆さまからいただいた期待、負託にしっかり応えていけるように精一杯、頑張っていきたいとの思いを新たにしています。局長、社員の皆さまが地域の郵便局をしっかりと支えていけるように、政治の場でも微力ながら全力を尽くしていきたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
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