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第6906号

【主な記事】

郵政民営化から10年
郵便局ネットの維持を

 日本郵政公社から日本郵政グループへ2007年(平成19)10月1日に移行して10年となった。 民営化当初は持ち株の日本郵政、郵便事業会社、郵便局会社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命と分社化され、システム的な不都合や利用者に過剰な負担を強いたり、民営化でサービスが良くなるとされたことに反する現象が出て、郵便局のお客さま離れが進んだと指摘された。
 郵便局現場の士気や収益にも影響を与えた。日本郵政公社の生田正治総裁が退任に当たり「世界的にも類を見ない郵便局会社という形態の経営が、今後どうなるのかが最も心配だ」との感想を漏らしていた。
 分社化の弊害などを見直すため、2012(平成24)4月27日に改正郵政民営化法が自民、民主、公明の3党合意により成立した。郵便事業会社と郵便局会社が統合、公益性・地域性を発揮、郵便局を通じてユニバーサルサービスを一体的に提供すると法律の趣旨が大きく変わった。
 それから5年が経過したが、まだ課題は多い。郵便局長を長く務めた柘植芳文参議院議員は「法体系が旧民営化法と変わっていることを認識、グループが一体で郵便局ネットワークを維持すること、そして日本郵便のビジネスモデルを早期に確立することが重要」と指摘する。日本郵政グループ出身の徳茂雅之参議院議員も「グループが一体であることが、業務品質や営業実績の向上につながる。郵便局ネットワークを地域の拠点として更に活用することが必要」と強調する。
 津々浦々にある郵便局をグループの中核として、ユニバーサルサービスを一体的に提供することの強化が求められる。
 民営化10年を振り返り、日本郵政の長門正貢社長は「最大のイベントは2015年11月の株式上場」とし、「株主というステークホルダーが加わり、経営の透明性や説明責任が求められるようになった。次期の中期経営計画の議論を進めているが、チームJPとしてグループ全体の成長戦略を描く」と語る。
 野田聖子総務大臣も「金融を含めてユニバーサルサービスを提供することは郵便局の大きな魅力。少子高齢化、人口減少の中で地域に貢献し、利用者利便を高めることが必要。これだけのインフラを持っている企業は民間にはない。期待は大きく、それを活かしきる事業展開ができるように支援したい」と言う。
 国民生活に密着した郵便局ネットワークの維持、そしてユニバーサルサービス提供のあり方、郵政事業の将来展望などを、民営化10年の節目に考えてみることは意義が深い。郵政事業は政治に翻弄されてきた面があるが、国が郵便局を通じたユニバーサルサービス義務を課したことからも、地域社会への貢献を含めて改めて議論することも求められる。


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