「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6901号

【主な記事】

健全で持続的な成長へ
[ゆうパック値上げ]サービスを拡充

 日本郵便は9月5日、来年3月からのゆうパックの運賃値上げとサービス改善策を発表した。値上げの一方で、Webでの決済やラベル発行を行った利用者には、値引きする新サービスも実施する。「身近で差し出し、身近で受け取り」ができるよう、指定場所配達や配達希望時間帯の追加、首都圏を中心に受取ポイントも整備する。横山邦男社長は「値上げは利便性の向上や高付加価値に対する対価なのでご理解いただきたい。ポイント付与のメリットもあり、ゆうパックファンは増えると強く確信している」とeコマース市場の拡大を背景に伸びが見込まれる宅配サービス市場を見据えた。

 今回は運賃の値上げだけでなく、ゆうパックのサービス全体の改善策が打ち出された。その理由として、人手不足による人件費単価の上昇、共働き世帯や単身世帯の増加により、再配達が増えたこと、それによる環境負荷への影響などがある。「身近で差し出し、身近で受け取り」という改善のコンセプトはこのような背景から生まれた。
 横山社長は今回の改善について「過重労働・低賃金で社員を犠牲にするようなビジネスモデルでは成長はない。かえってお客さまに迷惑をおかけすることになる。品質改善・合理化・高付加価値化に向けた企業努力も行い、それにふさわしい適正な対価をいただくことで健全で持続的な成長ができる。利益も上げ成長への投資もしていく」と働き方改革の視点も含めた経営方針を述べる。
 今回の改定では、基本運賃を平均12%値上げする。沖縄以外の地域では110円から230円、沖縄は40円から290円の値上げとなる。一般のゆうパックの重量の上限も30キロから25キロに変更する。重量を下げたのは、配達員の中には女性や中高年もおり、負担がかかることも理由の一つ。
 25キロから30キロの荷物には「重量ゆうパック」というサービスを新設。基本料金に500円を上乗せする。「スキーゆうパック」と「空港ゆうパック」は、上限を120サイズ超から140サイズ超にアップする。
 配達希望時間も「19時から21時」を追加する。同社で配達時間帯に関するアンケートを取った結果、この時間帯にニーズがあり、配達員の持ち戻りも減るという。「20時から21時」の一番ニーズの多い時間帯はそのまま残す。この時間帯に業務が集中しているおり、「19時から21時」の追加により、業務が平準化され、配達員への作業負荷の改善にもつながるという。初回受け取りならば、配達日や配達時間などの変更や会社への無料転送もできるようになる(来年3月予定)。
 クレジットカードなどを使いWebで決済したうえでオンライン発行のラベルの利用者には、基本運賃を180円安くする新サービスも来年3月から始める。これに加え、1年間に10個以上の利用者には、継続利用として10%引きに、郵便局受取を指定すると100円引きになるという得点も付加した。宛名ラベルをスマートフォンやタブレット端末で作成できる無料アプリも用意する(来年3月予定)。
 「身近で差し出し、身近で受け取り」を実現するために日本郵便では、首都圏の都市部を中心に歩いて5分(約300メートル)以内で受取ができるアクセスポイントを整える。東京23区、横浜市、川崎市、さいたま市、千葉市などで来年度まで6000か所を整える予定。
 受け取りポイントは、郵便局、コンビニ、はこぽす(現在174か所)など。新規提携のコンビニや商業施設へのはこぽすの設置、駅のコインロッカーの隣の空きスペースの活用などで、受け取りポイントを増やしていく。またゆうパックを郵便局やはこぽす、コンビニで受け取ればポイントを付加するサービスも行う。対象になるポイントは現在のところPonta、WAON、dポイントなどを予定。
 日本郵便では、値上げにより年間80億円の増収効果を見込んでいる。横山社長は「我々はBtoCには力があると思う。現在約30%のシェアだが、私としては50%は取っていきたい」とシェア獲得に意気込む。
 大口の法人顧客は相対取引のため今回の運賃値上げの対象外だが、適正運賃の交渉は毎年行っており、現在も継続中だという。横山社長は「大口顧客には概ねご理解いただいている」と話している。法人顧客の値上げによる増収効果は来年度以降になる見込み。
 横山社長は「今回打ち出したコンセプトを実現していくための第一段階であり、今後も郵便局を中心にお客さまのニーズを聞きながら更なるサービスの改善を行いたい」と話している。
 改善策として、物流の飛躍的な増加や人口減少などの環境変化に対応するために新しい技術により新しい配送網を作っていくことを挙げており、ドローンの活用、自動運転、バイクの電動化に取り組む。ドローンは、山間地や離島での郵便局間の輸送を来年度からの実施を、自動運転は実用化に向けて今年度から実証実験を行う。


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