「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6900号

【主な記事】

新中経の3年間は重要
[民営化委]総合的検証で意見募集

 第172回郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が8月30日に開かれた。日本郵政グループの2018年3月期第1四半期決算やゆうちょ銀行の同第1四半期の貯金残高、郵政民営化の進捗状況の総合的検証の進め方についての意見募集を議題に、委員から各社に質問や意見があった。岩田委員長は「日本郵政グループの新中期経営計画が始まる来年4月からの3年間は郵政民営化にとって重要な時期」としており、グループ各社の経営状況を注視したいという。

【郵政民営化の進捗状況の調査審議と報告・意見募集】
 郵政民営化委員会では、2009年から3年ごとに「郵政民営化の進捗状況の総合的な検証」を行い、その結果を意見として郵政民営化推進本部長に提出、同本部は国会に報告している。
 これまで2009年、2012年、2015年の3回行われた。来年春に4回目の調査審議・報告を行うに当たり、意見を募集している。
 調査審議では①前回の指摘事項に対する日本郵政グループの取り組み状況②中期経営計画の目標の達成③前回の検証後の環境変化(物流業界の人件費の増大・人手不足、人口減少、マイナス金利、Fintech〔フィンテック=ファイナンス・テクノロジー〕やIoT・AIなどの技術の発達)④追加的規制緩和(限度額の引き上げや新規業務の認可)⑤政府と金融2社の株の処分状況や郵便局ネットワークの維持・活用、経営状況の情報公開、民営化法の基本方針の達成状況⑥国民の利便性向上や市場の公正競争の確保など基本理念の達成状況⑦上場後の同グループの新たな視点により加えるものの7項目を検証。
 また、郵便局の実情調査や地方の声、有識者インタビュー、意見募集、利害関係者からのヒアリングなどを通して幅広く意見を聞き、審議する。
 検証の進め方について岩田委員長は「今年度は日本郵政グループの中期経営計画の最終年度であり、新たな中期経営計画ではどのような点が重要であるのか、明確にしながら意見をまとめたい」と述べている。
 民営化のポイントについては「2つあり、一つはユニバーサルサービスの確保。もう一つは収益力をつけることが必要だと思う。3事業の経営改善については努力されていると思うが、今後の3年間は民営化がうまくいくかどうか、極めて重要な3年ではないかと思う」と次期中期経営計画の内容と実施を注視したいという。
 意見募集内容は「これまでの郵政民営化に対する評価」「今後の郵政民営化への期待」「その他」について。募集期間は9月1日から10月2日。電子メールまたは郵送、FAXで提出する。

【政府と金融2社の株の処分】
 「政府の株式や金融2社の株の売却について、事実上固定化しているのではないか」との記者の質問に、岩田委員長は「私は当初考えていたようなスケジュール感で民営化への動きが進んでいるのではないかと思う。政府の株式の2次売却を成功させることをきちんとやっていく。金融2社の株式売却は50%を目指しながらやっていく。そのプロセスについては、あまり異論が出ていないのではないかと思う」と述べた。
 金融2社の株式については、郵政民営化法では「その全部を処分することを目指し、2社の経営状況、責務の履行への影響などを勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとする」とされており、日本郵政の西室泰三前社長は2015年12月の定例会見で「金融2社の経営の自由度の拡大、グループの一体性や総合力の発揮も視野に入れ、まずは保有割合が50%程度となるまで段階的に売却していく」ということを表明しているが、西室社長時代に買収したトール社は4003億円の減損を出し、日本郵政が初の赤字決算になるなど、グループの経営環境も変化している。
 民営化委員会では、トール社について日本郵政からは「トール社は最悪の状況は脱しつつある。マイナス幅は小さくなっている」という説明があったという。

【ゆうちょ銀行の貯金残高と資金シフト・ビジネスモデル】
 6月末のゆうちょ銀行の個人預金は同年度前期に比べて1.5兆円増の177.5兆円。預金残高全体では1.3兆円増の180.8億円。
 委員からは「ゆうちょ銀行は他行と比べて伸び率が低いが、どのように分析しているのか」「資金シフトの状況と経営に与える影響は」との質問があり、ゆうちょ銀行は「低金利下で定額貯金が減っている。ニーズが減っているからではないか。通常貯金の利便性向上には引き続き努めたい。資金シフトについては他の金融機関も預貯金残高は伸びており、トレンド内に収まっている。経営に与える影響も範囲内であり、影響を受けてはいない」と回答した。
 限度額引き上げ後の資金シフトや競争関係について、岩田委員長は「総務省や金融庁が他の金融機関との競争関係やゆうちょ銀行の経営に与える影響を見極めているところで、その結果を注視したい」と述べている。
 また、委員からは「将来のゆうちょ銀行が目指すのは、ナローバンキング(預金を集めて国債などの安全な資産で運用し、振込・送金などの決済を行うが、リスクを伴う貸付業務は行わない)なのか、アセットマネジメントサービスなのか」との質問があり、ゆうちょ銀行は「アセットマネジメントとしては地域ファンドに複数参加している。オルタナティブ投資、プライベートエクイティは海外も含めて投資を開始している。リスクを見極めながら幅広い展開を考えている」と回答している。


>戻る

ページTOPへ