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第6890号

【主な記事】

経営強化の税制要望
[高市総務大臣]総務省も検討開始

 郵政関係者にとって長年の懸案事項となっている会社間窓口の委託手数料に係る消費税の特例措置の本格的な検討が始まる。
 高市早苗総務大臣は6月27日の記者会見で、通信文化新報の「自民党が郵政事業に関する提言を改めてまとめた話もあるが、郵便局維持のための税制面の対策に対する見解を」との質問に「日本郵政グループに係る税制上の措置は昨年度に税制改正要望を行い、年末の与党税制改正大綱において『経営基盤の強化のために』との文言が盛り込まれた。こうした状況を踏まえて今般、8月末の税制要望に向けて総務省としても検討していきたい」と語った。
 総務省が日本郵政グループの会社間で生じる委託手数料に係る消費税の特例措置を初めて政府に要望したのは2005(平成17)年の06年度税制改正要望。07年の民営化をにらんで提出されたものだった。その後も形を変えながら毎年要望されてきたが、「引き続き検討」が続き、13回見送られている。
 郵便局の運営には年間約1兆2000億円が必要になるが、1兆円近くはゆうちょ銀行とかんぽ生命からの手数料収入。民営化される以前の1社体制ではあり得なかったものだが、特例措置が認められてこなかったのは財務省の「特定企業の特例は認めにくい」との考えが根底にあったとされる。06年度以降の10年間は非課税措置創設として減免措置を求めてきたが、2015(平成27)~17年度の3年間は、単に「消費税の非課税措置の創設」を改め、「人件費相当分に係る消費税仕入税額控除の特例措置」の形で要求した。
 15、16年度は、全国約2万4000局を対象に仕入税額控除527億円を求めたが、継続審議が続いている状況を踏まえ、17年度は対象を「特に金融ユニバーサルサービスを安定的に提供する負担が重いと考えられる過疎地に存在する郵便局の人件費相当分」と過疎地局に絞り、170億円を要求。しかし、年末の与党税制調査会の最終審議では「引き続き検討」の継続審議で終わった。
 事態はある程度重く受け止められており、昨年末の与党税制改正大綱には「日本郵便などに係る税制上の措置は、郵政三事業のユニバーサルサービスの安定的確保の観点から、『経営基盤の強化のために必要な措置の実現に向けた検討』とともに、引き続き所要の検討を行う」との文言が初めて盛り込まれた。今回、自民党が日本郵政グループの収益改善策をまとめた「提言」に税制措置の検討を新たに記したのは、こうした背景があった。
 過去の要望には、特例措置が必要な理由を「金融2社が窓口業務を委託することにより負担する消費税は、法律で強制的に分社化され、免許付与の条件として継続的な業務委託が課されたことから、経営判断の余地なく、日本郵便に窓口業務を委託することとなったことで生じた。改正郵政民営化法では郵便のほか、貯金と保険を含む三事業のユニバーサルサービスとして位置付けられ、日本郵便にはユニバーサルサービスの責務がある」と記されている。
 「他の金融機関はその経営上の判断から他社に業務を委託する場合は別にして、自ら利用者に金融サービスを提供していることから、業務委託に係る消費税は発生しない状況にあり、仮に他社に業務委託する場合においても経営判断に基づく自由度が確保され、金融2社の委託構造とは基本的に異なっている状況にある。(中略)多くの部分が企業の負担となっており、他の民間金融機関との間で競争上著しく不利」とも指摘している。
 金融2社は受取利息(貸付金や預金に対する利息の受取分)が収益の大半という収益構造と、受取利息などが非課税売上のために仕入税額控除が受けにくい金融サービス業の特徴から、業務委託により金融2社が仕入れ税額控除をされないまま多くの部分は企業負担となっている。
 先立つ6月16日の会見では、記者団の「マイナポータル(マイナンバー制度で個人ごとに設けるポータルサイト。 日本郵便のマイポストと連動する)とLINEとの連携の狙いと期待されることは」との質問に対し、高市大臣は「マイナポータルのサービスで特に力を入れているのが利用者からのニーズが高いと思われる子育てワンストップサービス。保育所入所申請などのサービスをマイナポータルを通じ、7月頃には全国の子育てサービスが比較検索できるようになり、秋にはパソコンだけでなく、スマートフォンからの申請が可能になる。LINEは日本で最も多い約6800万人のユーザーが利用しているため、国民の方々にマイナポータルを通じた行政窓口を身近にする第一歩にしたい。マイナンバーや氏名などの個人情報はLINE上ではやりとりするものではないため、LINE上には残らない」 と強調した。
 6月20日の記者会見では、記者団の「在職日数が明日で歴代1位となるが、様々な政策課題の中で最も力を入れたい課題とは」との問いかけに「マイナンバーカードを活用した様々なサービスが今後、数年間かけて順次始まる。自治体と連携テストなどを繰り返しているが、誤りなき情報連携の実現がマイナンバー制度の根幹。しっかりと対応していきたい」と意欲を示した。
 また「2015(平成27)年の仕事始めにマイキープラットフォーム構想を打ち出した。財布の中がクレジットやポイントカードで一杯になるが、マイナンバーカードの利用をマイナンバーそのものを使うのではなく、ICチップを活用することで持ち歩くカードを減らせないか、と考えた」と説明した。


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