「通信文化新報」特集記事詳細

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第6888号

【主な記事】

日本郵政グループへの期待
今こそ「地域から行動」を特性活かし、堅実に
城内実衆院議員(自民党)


 民営・分社化10年の節目を迎え、大きな分岐点に立たされる日本郵政グループ。将来、どのような形で郵便、貯金、保険のシナジー効果を最大限に発揮することができるのか。そのベストなあり方に関し、郵便局の利活用を推進する議員連盟(郵活連=野田毅会長)の小委員会で協議が始まった。郵活連の役員の一人、城内実衆院議員は「今こそ、世界を考えつつ、地域から行動する『シンクグローバリー、アクトローカリー』で進むべき時。地域の特性を活かしながら、堅実に進んでほしい」と話す。

■自民党の郵政事業に関する特命委員会(細田博之委員長)は収益改善策の提言策定に着手し、郵活連がそのための小委員会を発足しましたが。
 2017(平成29)年3月期決算で郵政事業始まって以来の赤字を出したことで、特命委も郵活連もいつになく議論が白熱した。豪トール社の問題は減損処理されたが、過去のこととして忘れてほしくない。二度と似たようなことを繰り返すことがない経営体制を構築してもらうため、政治も真摯に取り組まなければならない。
 山口俊衆院議員も言われたが、2005(平成17)年の郵政国会時と同様に今、郵政事業は岐路に立たされている。今のままの形態が本当にベストなあり方なのか、このままで進んで大丈夫なのか、を協議する時だ。
 郵活連の数は増え続け、現在は約260人。郵政事業を応援する自民党議員が増えたのはよいことだが、その人数全員で話し合うには日程的にも厳しい。そこで、中心となるメンバーで小委員会を立ち上げた。
 企業なのだから、海外も含みM&Aなど大胆な投資そのものがいけないことではない。しかし、ハイリスク、ハイリターンは避けるべきだ。世界経済は瞬く間に動く。リスクは当たり前。堅実経営こそが重要で、国内の三事業のユニバーサルサービスを維持しながら郵便、貯金、保険が利益を上げる体制づくりを現場の声に耳を傾けながら進まなければいけない。

■経営基盤強化のためにさらなる新規業務が必要だと思います。行政事務も今やコンビニエンスストアに負けてしまいそうな状況があります。過去にパスポート取得の手続きなどの話も浮上していましたが、どうでしょうか
 私の選挙区のほとんどは過疎地。市役所まで車で1時間以上かかるところもある。パスポートの手続きなどが近くの郵便局でできたらどれほど利便性が高まるだろうか。
市町村合併で町や村の役場がなくなった地域もある。そうした地域の行政サービスを郵便局が受け持ち、手数料をいただくビジネスを拡げたい。コンビニはユニバーサルサービス義務がないわけだから、利益の上がらない地域は撤退してしまう。
 さらには、認可申請中の口座貸越サービスをもう一歩進め、例えば、カードローンのような新規業務も将来はできるようになっていくべきだと思う。限度額はかんぽ生命は問題視されていないが、かんぽ生命も含めて金融2社の限度額規制は撤廃すべき。過疎地でタンス預金になってしまうのは高齢化社会を守ろうとする国の方針にそぐわない。2段階目の目標は2000万円、その次の段階で撤廃を目指したい。

■地域未来投資促進法が成立しました。3か月以内に施行されます。
 ローカルアベノミクスとして地方創生がうたわれているが、郵便局が地元の地域金融機関などと連携しながら、地方創生に貢献できるプロジェクトに選択と集中の発想で地域を活性化する取組みを大いにやっていただきたい。
 かつては財政投融資で国に貢献した公益性を持つ郵便局なのだから、儲けることだけを主眼とする郵政事業にはなってほしくない。146年の伝統文化を引き継ぎながら地方創生につながるサービスを展開してほしい。

■電力小売自由化が始まって1年。過疎地の赤字局が地域の小規模発電所と連携すれば地域経済活性化に貢献できると思えます。
 林地残材や廃材を用いる「木質バイオマス発電」、家畜や糞尿や下水泥を用いる「バイオガス発電」など、地域資源を活用したバイオマス発電は地域社会と密接でエネルギー面に加え、地方創生の観点でも期待できる。エネルギーの固定価格買取制度があり、決まった価格でいくらでも買ってもらえる。
 過疎地局などは自然環境には恵まれているところも多い。地域によって温泉が近くであれば地熱発電。風力は大がかりかもしれないが、太陽光やバイオマスは小規模でもできるはず。あとは畜産の糞尿を使ったメタンガス発電。家畜排せつ物や下水汚泥、食品廃棄物など水分含量が多く直接燃焼が困難な廃棄物をエネルギー利用することで、処理コスト低減とともに限りある資源を有効活用する循環型社会の形成につながる。家畜排せつ物を利用する場合、悪臭対策や水源の汚染防止などの効果があること、非採算性の排せつ物処理から収益が生まれることで農業の健全な発展につながる。雇用創出で地域活性化にもつながる。
 ただし、発電のためには当然設備が必要になる。地元の地方銀行や信用金庫、農協などと組んで発電設備を作ることにもおそらく地域未来投資促進法は活かせる。

■今こそオール郵政体制が非常に重要ではないかと思えるのですが。
 オール郵政体制で分社化後の日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命それぞれの事業が一体となって進むべきだ。そのためにもいろいろなことを考えなければならない時期に来ていると思う。また、その意味では、分社化したことで生じてしまった会社間窓口委託手数料に係る消費税問題は早く解決しなければいけない。このままでは民営・分社化の主旨から見て本末転倒。また、古くからひまわりシステムなどで実績を重ねてきた郵便局のみまもりサービス。国の公共財だった郵政事業の一環として特に過疎地の生活を効果的に支えていただきたい。
 三事業のユニバーサルサービス維持に向けて、税制面では局舎固定資産税の特例措置を継続するのは当然。物流に係るコストも大変な事態だ。ともかくユニバーサルサービスのコストをしっかり考えていく必要がある。

■政治もオール郵政体制で進んでほしいと思います。
 郵政事業の問題は国民全体に及ぶため、与党も野党もある部分ではタッグを組んで進めていかなければならない。柘植芳文参院議員と徳茂雅之参院議員も自民党に属しているため、自民党中心にしていただきたいが、他の政党とも連携していくことも時には必要だと思う。
 郵活連は公益性と地域性に根差した郵政事業のユニバーサルサービスや郵便局ネットワークを「社会資本」と見ている。過疎地には郵便局以外に金融機関のない市町村が全国に24あり、都市部でも金融過疎地が存在する。郵便局の金融機関としての機能を維持するために何らかのバックアップ措置を法制化する必要があり、そうした部分を郵活連のコアメンバーで議論していきたい。
 グローカルという造語がある。グローバルに世界を考えつつ、ローカルな視点で地域から行動する古くから言われてきた『シンクグローバリー、アクトローカリー』を簡略した言葉になるが、まさにその視点が郵政事業に必要な時だ。


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