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第6888号

【主な記事】

自民「提言」を関係大臣に
収益改善へ具体策


 自民党の郵政事業に関する特命委員会(細田博之委員長)役員会は6月15日、日本郵政グループが収益改善に向けた具体策を明記した党としての「提言」をまとめた。19日から関係大臣や自民党執行部のほか、郵政民営化委員会にも提出する。郵便局の利活用を推進する議員連盟(郵活連=野田毅会長)の小委員会は6月14日に発足。今後の郵政事業のあり方を協議し、特命委に働きかける。一方、9日に開催された民進党の郵政議員連盟(古川元久会長)では、全国郵便局長会の青木進会長から、郵便局のみまもりサービスとふるさと納税を結び付けたユニークな施策も紹介された。各党の郵政支援の動きが勢いづいている。

郵政議連の動き活発に

 6月15日に行われた特命委役員会では、2015(平成27)年6月に党としてまとめた「提言」の一文一文を全員で見つめながら進めていった。もともとの提言は、特命委が四半世紀動かなかったゆうちょ銀行とかんぽ生命の限度額を引き上げるために日本郵政グループ各社や全国郵便局長会、全国簡易郵便局連合会をはじめ、競合関係にある地域金融機関、全国市長会や全国町村会、関係省庁からの意見を聴取しながら13回の議論を経てまとめられた。
 今回、その一部を見直したが、おおむね前回の提言が活かされた。「提言」にはゆうちょ銀行の預入限度額再引上げは2000万円と明記。かんぽ生命は基本契約1000万円の引上げを掲げている。
 郵便局ネットワークと地方創生の関連では、「地域の農業協同組合、漁業協同組合、森林組合と連携し、新鮮で安全安心な農林水産物を国内外へ」「郵便局も軸足とするような小さな拠点形成や見守りサービス、自治体の代替機能」「地域金融におけるリスク分散」などを記した。
 細田委員長は「三事業のユニバーサルサービスのうち、郵便を中心に議論を前進させなければいけない。政府も何等かの措置をとるべきだ。同時に健全な経営を図り、日本郵政グループ3社が株式市場で公共的な評価が受けられるように支援をしたい」と意欲を示した。
 一方、民進党の郵政議員連盟は先立つ6月9日に総会を開催。日本郵政グループ各社役員と全国郵便局長会、JP労組から経営に関する要望などを聞き、出席議員が質問する中で認識を共有した。
 古川会長は冒頭、「物流業界では配達コストが大きな問題として浮上し、業界大手企業も打撃を受けていることが浮き彫りになった。もはやサービスを無料で提供するところから、適正に賃金に反映し、働く方々への還元を考えなければならない時代だ。やる気を持ってもらえる労働環境をどう作るか。様々な角度から議連として応援しなければいけないと思う。郵政事業は国民の財産、資産であり、守らなければならない」と呼びかけた。
 日本郵政の原口亮介執行役から2017(平成29)年3月期決算の詳細が説明された。全特の青木会長は「会社との営業会議で郵便局のみまもりサービスなどを協議しているが、お客さまにできるだけ負担をかけずに提供する仕組みも考えている。例えば、各自治体のふるさと納税の返礼品を特産品ではなく、みまもりサービスに使っていただく形だ。ふるさとプラスなどの制度を使う」と紹介した。また「過疎地など三事業の目標が大変な地域は極力役場の事務など行政サービスを郵便局でさせていただける方向で動いている」など状況が報告された。
 藤末健三参院議員は「三事業のユニバーサルサービスをどのような形で維持していくのか、総務省は長年検討しているが、なかなか実質的に解決する議論が進んでいないようにも見える。局長会として議論のペースをどのように感じているか」と問いかけた。青木会長は「もう少しスピード感を持ってやっていただけたらと思っている。現状は日本郵便の利益で賄えているが、コストの問題は何等かの形でぜひ解決していただきたい」と強調した。
 JP労組の窪田義明書記長は「郵便局は労働集約型産業のため、労働力確保が重要。それに伴い、人件費負担が増大している。収益減に合わせて費用増の中で、処遇改善に取り組んでいる」と働き方改革を訴えた。
 大塚耕平参院議員は「与野党を超えて郵政の問題を対処していかなければいけない」と強調。事務局長の奥野総一郎衆院議員が「日本郵政グループ、局長会、JP労組の発展への思いをしっかりと受け止め、共に頑張りたい」と締めくくった。
 高市早苗総務大臣は6月13日の記者会見で、記者団の「3月末のゆうちょ銀行とかんぽ生命の新規業務の認可申請に関して郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が意見を示すが、見解を」との質問に対し、「現時点において『認可に向けて特段の問題はない』と説明した。意見を踏まえ、金融庁とも連携して郵政民営化法に則って速やかに審査を進めたい」と答えた。
 通信文化新報の「経営基盤の強化という観点で、郵便局ネットワークを活かしたさらなる新規業務が必要になっていくと思うが」には「日本郵便が企業価値をさらに向上させ、国民に民営化の成果を実感していただける経営を行うことが重要だ。日本郵便が収益力多角化のためにどのような新規業務に取り組むかはまずは経営判断によるもの。事業計画を認可した際、収益力の多角化と強化、経営効率化の推進やガバナンスの強化を進めることを要請した。引き続き、日本郵便の取組みや経営状況を注視していきたい」と語った。


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