「通信文化新報」特集記事詳細

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第6887号

【主な記事】

「地域未来投資促進法」公布
郵便局などサービス業支援

 地域の特性を活かしながら地域経済を好循環させる「地域未来投資促進法」が5月26日、参院本会議で成立し、3か月以内に施行される。2007(平成19)年に施行した企業立地促進法が地域経済の7~8割を支えるサービス業に波及しなかったことを踏まえ、大幅な見直しを図った。郵便局も含むサービス業に法律が活かせるよう金融や財政、設備、規制の特例措置などの支援策をパッケージで提供する。事業者は各自治体の基本計画に沿う地域経済牽引事業の計画を作成し、申請。承認されると地方創生推進交付金なども活用できる。トータル生活サポート企業を目指す日本郵政グループにも関わりの深い法律となった。

 地域未来投資促進法は、地域の特性を活かすことで高い付加価値を創出し、地域の事業者への経済的波及効果を出し、地域経済を好循環させることを目的とする。
 そうした地域経済の牽引事業者が作成する事業計画を承認する制度を新たに創設し、牽引事業が全国津々浦々で創出しやすくするための支援措置を講じていく。
 現行法の企業立地促進法は、自治体が企業の誘致活動の一環として地域の「産業集積活性化」を支援する法律となっていた。過去10年間に企業の工場や事業所など約5700件の事業計画が承認され、一定の雇用創出や企業立地の効果はあったものの、地域経済活性化の効果は目標より下回り、振るわなかった。背景には、承認された事業の9割が製造業で、サービス業に波及しなかったことがある。
 日本郵政も東証一部上場企業のサービス業に位置付けられているが、地域経済の7~8割をサービス産業が支えているのが実態で、それら市場が各地域で伸展していくことが地域経済活性化に直結すると見て、今回、法律の枠組みを大幅に見直した。新たな地域未来投資促進法は産業集積ではなく、観光なども含めた資源や人材、技術などの〝地域特性〟をにらんだアプローチを重視。
 国が示した基本方針に沿う形で、それぞれの都道府県と市町村がどうすれば戦略的に地域経済を活性化できるか方針を練り上げ、基本計画を作成。その計画に沿った形で、事業者は地域経済がうまく回る事業計画を作り出す。承認された「地域経済牽引事業」には様々な支援措置がパッケージで提供される。
 申請できるのは民間事業者と官民連携型(国が事業を承認)となるが、経済産業省は「法律上の間口は非常に広い。どのような事業者も計画を立て申請できる。もちろん郵便局の皆さんも一事業者として申請できると思う。各自治体が望むような地域経済牽引事業に沿ったプロジェクトかどうかが承認にかかってくる。先進的なものづくりに加えて農林水産、地域商社、第4次産業革命、観光、ヘルスケアなどサービス分野で地域経済を支える新しいプロジェクトを作っていただきたい」と期待を寄せる。
 支援策は、大まかに①設備投資②財政支援③金融面の支援④規制の特例措置など⑤データ利活用などその他―の5分野。例えば、先進的な事業に必要な設備投資に対する減税措置としては、機械や装置など40%特別償却4%税額補助、建物20%特別償却2%税額補助もある。
 また、地方税の減免に伴う補てん措置は、固定資産税を減免した自治体の減収補てんがある。財政面では、地方創生推進交付金2017(平成29)年度予算1000億円の一部を活用もできる。さらに、地域の企業の国際市場展開に向けた専門家による全国的な支援ネットワークの構築に、地域中核企業創出支援事業の17年度予算25億円、省エネ活用補助金の同672億6000万円、サポイン(戦略的基盤技術高度化支援事業)補助金の同130億円の活用も可能となる。
 金融面ではリスクマネーの供給促進として、ゆうちょ銀行とも地域活性化ファンドで連携する㈱地域経済活性化支援機構(REVIC)、中小企業基盤整備機構などによるファンド創設を支援する。規制に関する特例措置では、工場立地法の緑地面積率の緩和や補助金等適正化法の対象となる財産処分の制限に係る承認手続きの簡素化のほか、一般社団法人を地域団体商標の登録主体として追加、農地転用許可、市街化調整区域の開発許可等に係る配慮なども支援する。
 さらに事業者から自治体に対する事業環境整備の提案手続きの創設、地域経済分析システム(RESAS)を活用した候補企業発掘のための情報提供などが挙げられる。経済産業省は具体的な事業案件として、過去の企業立地促進法による数少ないサービス業の参画事例を挙げている。
 例えば、長野県下高井郡山ノ内町や八十二銀行、㈱地域経済活性化支援機構(REVIC)が「まちづくり会社」として設立した㈱WAKUWAKUやまのうちは、地銀とREVICによるファンドから資金を供給し、温泉街の空き店舗や廃業旅館のイノベーションを実施。「野生の猿/温泉/雪」が一つの絵に収まる意外性が海外で大きくヒットした。
 また、福岡市の九州農水産物直販㈱は民間共同出資による地域商社も立ち上げている。同社は、畜産や野菜、果樹など多品目にわたり農業が盛んな九州で「アジア圏への農産物輸出促進」による農家の所得向上を通じて「後継者が戻る農業」を目指す。
 金融庁は「詳細は分からないが、単独の郵便局というよりも、日本郵便として取り組む方が望ましいと思う。ただし、全国一律というより各地域の特性を活かせるような仕組みを考えなければならないだろう。各地域の自治体や企業とどう連動しながら新しいプロジェクトが描けるのか、が勝負」と話す。
 山本幸三地方創生担当大臣は6月2日の記者会見で通信文化新報の「衆院を通過し、参院本会議で成立した地域未来投資促進法への見解を」との質問に対し、「地方創生は地方の平均所得を上向かせることも目的としてある。ローカルアベノミクスの推進に向けた自治体の取組みを地方創生推進交付金などの推進で地域経済に人材と資金を呼び込めるように、生産性と活力あふれた産業形成を促進していった。さらに推進すべく、地域未来投資促進法と連携し、地域経済牽引事業を促進する自治体の取組みを、地方創生推進交付金で支援する。RESASにより、約2000社程度の地域中核企業候補の選定公表を夏ごろに行ってきたい」と語った。
 地方創生に向けて、日本郵政グループは地域経済活性化にも寄与できる取組みを展開している。全国郵便局長会(青木進会長)も11月に地方創生活動全国大会(仮称)を開催する予定で、郵便局ネットワーク力を使い、地方創生に向けた取組みを強化する。


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