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第6887号

【主な記事】

過疎地の郵便局活用を


 参院決算委員会が5月8日に行われ、自民党の徳茂雅之参院議員が郵政事業に関して多くの質問(本紙5月29日号一部既報)や要望を投げかけた。民営・分社化から10年が経過しようとしていても規制が取り巻く日本郵政グループの状況などを強調。日本郵政の株式の二次売却益の使途、マイナンバーカード普及に関連し、特に過疎地の行政サービスにおける郵便局の利活用などを訴えた。抜粋して紹介する。

   郵政には多くの規制が残っている
   徳茂参院議員が質問(参院決算委)

■徳茂雅之参院議員 郵政民営化から10年ということで、社会経済環境は人口減少や少子高齢化で本当に様変わりした。誰もが安心して暮らしていけるように、三事業のユニバーサルサービスを提供する責務は極めて重要だ。日本郵政グループが今後将来にわたってユニバーサルサービスを安定的に提供していけるように、現経営陣に経営努力をお願いすると同時に、ぜひ総務省も監督をお願い申し上げたい。
 続いて、日本郵政の政府保有株の売出しを伺いたい。
 3月29日に第二次売出しの主幹事証券会社等が決まった。政府保有株の日本郵政の株式は、2015(平成27)年11月にゆうちょ銀行、かんぽ生命と同時上場して売り出された。政府には約1・4兆円の売却収入が入り、東日本大震災の復興財源に充てられた。初回売出しを含めて、最終的に政府にはどの程度の売却収入が入ると見込んでいるのか。財務省に尋ねたい。
●中尾睦政府参考人 日本郵政株式の売却収入は復興財源確保法に基づき、22年度までの売却収入を復興財源に充てることになっている。また、2013(平成25)年1月に決定した復興財源フレームにおいて4兆円程度を復興財源として見込み、15年の売出し上場プロセスにより、約1・4兆円を復興財源として確保した。
 二次売却は3月に主幹事証券会社を選定し、現在、主幹事証券会社や日本郵政とともに売却に必要となる準備を進めているが、実際の売却時期及び規模などは市場の動向や日本郵政の経営状況などを踏まえて検討することにしており、現時点は未定となっている。日本郵政株式の売却収入は市場の動向や日本郵政の企業価値によって影響を受けるものだが、財務省としては22年度まで4兆円程度を復興財源として確保できるよう適切に対応したい。
■徳茂参院議員 日本郵政グループは民営・分社化前までは法人税等を納付していないことで金融機関からイコールフッティングでないと批判されたが、民営・分社化してからは納税をしている。4社全体で法人税や消費税といった租税を民営化以降、2015(平成27)年度までどの程度納付されたのか。
●市倉昇参考人 15年度における日本郵政グループ4社の単年の法人税と住民税及び事業税の合計額は3213億円、実質負担する消費税合計額は854億円。民営・分社化以降の合計額は法人税と住民税及び事業税が約3兆1800億円、消費税は約5600億円納付している。
■徳茂参院議員 郵政民営・分社化の議論が行われたときには、郵政事業はこのままでは赤字に転落して大きな国民負担を残すような議論がされていた。民営・分社化後10年を迎えて、株式の売却収入は4兆円程度を見込んでいる。およそ9年間で3兆円強の税収が入ってきた。足し上げれば7兆円を超える8兆円近いプラスの価値を生むようになってきた。
 民営・分社化後、いろいろな新規サービスが行われているが、まだ郵政事業には様々な規制が残されている。ゆうちょ銀行、かんぽ生命の限度額は昨年4月にようやく引き上げられたが、具体的な収益拡大には至っていないと思う。
 一方で、日本郵政と日本郵便には、5年前の改正郵政民営化法成立により金融のユニバーサルサービスの責務も課された。全国どこでも金融サービスを利用できる、安心して暮らしていける支えになる一方で、経営上の負担にもなりかねない。今後、政府保有株の売出しによって当初見込み通り、先ほどの4兆円で復興財源を確保できるかどうか。ある意味、将来にわたり日本郵政グループがその企業価値を維持向上できるか否かにつながる。
 物流に経営としてしっかりと取り組んでいただきたいと申し上げたが、金融サービスはある意味で日本郵政グループの稼ぎ頭。しかし、多くの規制が残っている。新規業務もできるだけ早期に認可すべきだ。
 (中略) マイナンバーカードはまだ国民一人一人に行き渡っていない感じがする。カードの普及は国民に広く周知、広報を徹底させることが重要だ。4月26日の読売新聞朝刊に「マイナンバー制度を考える」と題するシンポジウムの記事が載っていた。高市総務大臣も基調講演をされたということだが、拝見すると、実現できれば暮らしや社会、世の中は変わる印象を受けた。マイナンバーカードをマイルや各種ポイントに活用、集約するとの記事もあった。カードを何枚も持たなくてよくなることで利便性も高まると同時にどんどんポイントが交換できれば経済の活性化にもつながる。お知らせ活動をしっかりとやっていただき、カードを使ってみる実感が必要と思う。
 行政サービスの中でわずらわしいのが証明サービスを交付する事務。窓口や交付機まで受け取りに行かなくてはいけない不便さはおそらく国民一人一人が実感している。総務省は全市町村でコンビニ交付サービスを利用できるように取り組んでいると聞くが、コンビニエンスストアはどちらかといえば都市部に集中。取りに行くのに不便なのは過疎地になるが、コンビニがない過疎地でこそサービスを高めるため、例えば、郵便局の活用をもっと進めてはどうか。
●安藤英作政府参考人 総務省は昨年12月、ワンストップ・カードプロジェクトアクションプログラムをまとめた。郵便局の自動交付機設置の促進を盛り込んでいる。住民票や戸籍証明書など各種証明書発行に必要なキオスク端末の郵便局への設置を市町村が自ら端末を設置する場合、郵便局が試験的に設置スペースや維持管理業務を無償で提供する。
 日本郵便がキオスク端末を設置する場合、まずは10局程度で試行的に設置し、コピー等の有料サービス等も含めて運営して、今後設置局の拡大などを検討していく。総務省は日本郵便と連携を図りながら、過疎地も含めた全国的な導入を促進していきたい。
■徳茂参院議員 マイナンバー制度は国民の利便性の向上、行政サービスの効率化はもちろんだが、ある意味で国の経済社会の仕組みを変える基礎的なインフラにぜひともなっていただきたいと考えている。高市総務大臣にマイナンバー制度の普及あるいは活用への意気込みを聞かせていただきたい。
●高市早苗総務大臣 全国各地の郵便局の方々には、特にマイナンバー通知カードの配達には大変苦労され、工夫も凝らしていただき、心から感謝を申し上げる。新しく誕生されるお子さんや外国人の方々など対応は続くため、よろしく願いたい。マイナンバーカードは、普及と利活用の推進が非常に重要だと思うが、3月17日にマイナンバーカード利活用推進ロードマップを策定した。
 特に、土日や時間外でも証明書が取得可能なコンビニ交付の利用促進やチケット、健康保険証の活用、インターネットバンキングのログインなど公的個人認証サービスの民間開放に伴う新たな民間サービスの実現、子育てワンストップサービスの導入などマイナポータルの利便性向上、スマートフォンやテレビなどカードが利用できるアクセス手段の多様化に取り組む。
 また、行政機関の情報連携の本格運用というものが開始されたら社会保障給付などの申請時に必要とされる住民票の写しや住民税の課税証明書などの添付書類を省略することが可能になる。また、子育て関連の施策をマイナポータルで検索、閲覧して保育所の入所申請や児童手当の現況届などオンラインで申請することができる。
 マイキープラットフォームのポイントの活用なども地域で、地域の商店街などで可能になるため、利便性や安心して使えるカードとしてもお知らせを続ける。何より大事なのは情報連携。非常に多くの府省庁にまたがる仕事となるため、連携が重要になる。本日より、内閣官房のマイナンバー制度担当の職員の方々に総務省の庁舎に入って仕事をしていただいている。常にあらゆる課題を共有し、進捗管理をしていく体制を整えつつある。
■徳茂参院議員 省庁間の連携に取り組んで、マイナンバー制度の活用、普及にお取り組みいただきたい。



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