「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6887号

【主な記事】

郵便局ネットの維持
国の支援措置が必要
総務省検討会WG

 「郵便のユニバーサルサービスに係る課題等に関する検討会」(座長:村本孜・成城大学名誉教授)の「第11回現状と課題等に関するワーキンググループ(WG)」(主査:米山高生・一橋大学大学院商学研究科教授)が5月31日、総務省で開かれた。WGの取りまとめに向けて活発な議論が交わされた。第4種の政策的低廉料金については「最優先課題で早急な見直しが必要」「利用状況などの必要なデータが不足している省庁も多く、説明責任を果たしてもらいたい」という意見が出された。
 WGでは主に「第3種と第4種の政策的低廉料金の見直し」と「郵便法に定める認可・届出」「郵便局ネットワークの維持」について議論を重ねてきた。第4種の政策的低廉料金については、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省の担当者にヒアリングを行い、同時に利用者や利用の頻度などの情報も提出してもらった。しかし、情報が明らかにされていない項目も複数あり、同料金の廃止や値上げの議論ができない状況となっている。第4種は11億円の赤字。
 井出秀樹・検討会座長代理は「民営化、自由化は、コストベースに合わせていくのが本来の在り方。第1種や特殊取扱などの黒字で、2種、3種、4種の赤字を補てんするという収支構造はどこかで直さないと経営構造が歪んでくる。値上げにはどのような手続きが必要なのか」と述べた。
 総務省からは「日本郵便の申請を受けて総務大臣の認可となるが、省庁間では認可の前に消費者庁との調整を行う取り決めがある。関係省庁と調整をした実態はない」という説明があった。
 井出座長代理は「各省庁にデータを提出していただくことになっているが、非協力的な場合にそれがどうしても必要かどうか、データをいくら整理しても一歩踏み出すことができないという印象だ。日本郵便に値上げの認可申請をしてもらえば、各省庁で整理してもらえるのではないか」、東條吉純・主査代理は「政策的低廉料金は最優先課題」、池田千鶴・構成員は「同低廉料金は早急な見直しが必要」と日本郵便の負担の早期軽減を提案する意見が相次いだ。
 安藤英作・郵政行政部長は「第4種は郵便法(27条)で定められていて、その根拠が示されている。それを落とす時は必要性がないことを証明しなければならない。その判断は政府全体で行う。まずは各省庁で必要がないと判断していただかなければならない。各省庁には引き続き、必要性を検証していただくことはお願いしている。短期的に成果が上がるとは思わないが、ヒアリングをさせていただいたことは意義があったと思う」と述べた。
 郵便局ネットワークの維持については、支援措置、活用、検討事項など今後の方向性が示された。支援措置は「将来にわたるユニバーサルサービスの安定的な確保は日本郵政グループの意向を踏まえ、国などによる支援措置の必要性を含め、引き続き検討を行う」とされた。
 郵便局ネットワークの活用は「地方公共団体とも連携し、地方公共団体の事務取扱いなどに積極的に取組みを進めていく。地方公共団体が事業主になる地域振興や過疎対策事業に、郵便局も積極的に参画し、地域において重要な役割を果たしていくべき」となった。
 今後も引き続き検討する項目としては「郵便局ネットワークの維持に関する中長期的な課題や将来にわたるユニバーサルサービスの安定的な確保」が盛り込まれ、検討には日本郵便から積極的な意見が期待されることも付け加えられた。
 大橋弘・構成員は「国内が少子高齢化、人口減少など縮小していく中で、郵便局ネットワークが果たす役割も違ってくる。ユニバーサルサービスは、郵便事業を超えて、公共サービスや生活インフラとしての役割など、地域経済に密着したようなものと捉えることも可能なのではないか」と指摘した。
 池田・構成員は「ネットワークの維持はいろいろなやり方はある。移動郵便局は補完ということだが、食料が買える移動販売サービスはお年寄りにうけている。ユーザーの利便性につながるという意味では、移動郵便局もよいのではないかと思う。また、収益は新商品や新サービスで拡大して欲しい。新たなチャレンジの時の試行サービスは良い仕組みだと思う」と述べた。
 郵便法に定める認可・届け出については「3月31日に郵便法施行規則が改正されるなど日本郵便が料金を変える場合などの軽減措置が図られたが、今後も必要なことについては継続的に検討していく」「社会情勢の変化などに応じて、日本郵便の要望を踏まえつつ、見直しや緩和の検討を行っていく」「働き方改革が実行された時の日本郵便への影響、サービス水準への影響とそれに応じた見直しの可能性に指摘があったことに留意する」など今後の方向性が示された。
 最後に安藤部長は「日本郵便には、働き方改革や労働力不足など大きなコスト要因があり、それに伴いやらなければならないことがいろいろある。日本郵政も考えているとは思うが、また議論いただく機会もあると思うので、その時は知恵を拝借したい」とあいさつした。



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