「通信文化新報」特集記事詳細

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第6886号

【主な記事】

総務省検討会WG
ユニバコストの算定
2018年以降に実施

 総務省の「郵便のユニバーサルサービスに係る課題等に関する検討会」(座長:村本孜・成城大学名誉教授)の「第10回コストの算定手法等に関するワーキンググループ(WG)」(主査:関口博正・神奈川大学経営学部教授)が、5月24日に開かれた。
 これまでの議論を確認し、WGから検討会への報告の取りまとめを行った。この報告をたたき台に、検討会で更に審議される。
 WGは第2回から第9回までは日本郵便の経営情報を含むことから非公開となっていた。これまでにユニバーサルサービスコスト算定の意義や必要性・結果の活用、算定の主体、算定の頻度、算定モデルの見直し、将来予測の手法などについて議論が行われた。
 WGの取りまとめでは、算定モデルなど基本的には2015年9月の情報通信審議会の答申の内容をほぼ踏襲する形だが、算定主体や頻度などこれまで議論されてこなかったことについても整理された。情報通信審議会の答申でのコストは、NAC法(赤字地域の赤字総額をユニバーサルコストとする=ユニバーサルサービスを止めた場合に節約できる純費用)を用い、2013年度の数値を使って算定された。
 今後の算定については「答申のモデルを基本に、料金改定の影響や郵便・物流ネットワークの再編などの事業環境の変化を反映したものを2018年以降に行うのが適当」という方向性が盛り込まれた。
 今回のWGでは「だれが(主体)、どのような算定モデルを使って、どのような頻度で行うか」について明確にするための議論が行われた。諸外国ではユニバーサルコストは、事業者が行う場合は支援の要望を目的に主にPA法(ユニバーサルサービス義務が緩和された場合の変動額を算定し、その利益改善額をコストとする)を用いて算定。政府(規制当局)が行う場合は、政策の判断材料とすることを目的にNAC法で算定している。
 WGのまとめでは今後の算定について「今回の検討会では算定は行わないが、算定する場合は審議会や検討会など第三者が、評価も含めて行うことが適当」としている。
 今回は「当面は日本郵便の協力を得て、規制当局(総務省)が算定を行っていく」とした。
 頻度については、日本郵便から膨大なデータの提供が欠かせないことから、その負担を考慮し、定期的な算定ではなく、事業環境の変化などがあった時に必要に応じて行う。事業環境の変化とは、例えばネットワークの再編により業務が効率化した時や料金改定などで収益が変化した時などがある。
 算定モデルについては、2015年の答申においても、NAC法とPA法の両方が使えることになっている。NAC法で算定された答申の手法について検討した結果、「日本郵便の経営効率化の取組みを反映するため一部改善する必要があるが、審議会の手法に従って次回も算定する」という方針が示された。
 「郵便モデル」「郵便局窓口モデル」ともに、利用者(国民)が理解しやすいことからNAC法を採用する。郵便モデルについては将来的には、サービス水準の見直しの影響などを政策の判断材料にするため、変更による利益の変動に有効なPA法による算定も可能になるように配慮した。
 コストを算定する時の地域単位については、業務が集配局単位となっていることから、郵便業務、金融窓口業務ともに引き続き集配局単位(約1000か所)とした。金融窓口業務については、将来的には市町村単位(現在1741)にすることも検討課題としている。
 その配分方法として、郵便モデルは、収益を経由する局ごとに、引受局から輸送を経て配達局までを10の業務に分けた工程別の費用割合で配分するという従来の方法を採用。窓口モデルは、収益である窓口業務委託手数料を固定的に人口比で割り当てられる「固定収益」と、貯金残高や預貯金の受け払い取扱件数、新規保険契約数などの「変動的収益」に分けて配分する。固定収益は人口が多ければ営業の機会も多く、その分、収益につながるという考えから、人口の多いエリアは収益も多く、少ないエリアは少なくなる。変動的収益は営業努力で得た収益で、そのエリアの成果次第で上下する。
 将来予測については、郵便役務は、GDPや人口とは相関関係がないことから郵便物数の推移から予測することを原則に、郵便料金の値上げやICTの取組みなどの状況も加味する。郵便窓口業務については、業務委託手数料の変化により予測する。
 WGで関口主査は「これを基に親会に報告したい」と述べた。竹内健蔵・主査代理は「言葉の使い方などだれもが分かりやすい説明にしてもらいたい。説明責任には万全の態勢を取ってもらいたい」、高橋賢・構成員は「コスト算定には日本郵便からのデータの提供が不可欠。提出を強く求める必要がある。これまで議論してきたので、データ提出については上手にやってもらいたい」との意見があった。
 2018年以降に日本郵便の郵便・物流ネットワークの再編が完了した後などに、コスト算定を行うことが提案されている。ネットワークの再編は2014年度から始まり、これまでに道央札幌、岩手、群馬南、東京北部、新潟、静岡、岡山、広島、山口の9局が完了。今年度は福島(郡山東)、神奈川(神奈川西)、京都(未定)、鹿児島(鹿児島)の4局。来年度以降は土地が取得できたところから順次新設していく予定だという。


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