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第6886号

【主な記事】

全特大阪総会
荒波に挑み、地域に貢献
輝かしい未来の実現へ


 「輝かしい未来の実現へ」をスローガンに平成29年全国郵便局長会通常総会(全特大阪総会)が5月28日、局長やOB、夫人会など約1万人が参加する中、大阪城ホールで開催された。人口減少や第4次産業革命が進む中で国民の資産の郵便局ネットワークをどう維持するか。民営・分社化10年の節目を迎えた総会では、郵便局が146年積み上げてきた「地域貢献の重要性」を改めて共有した。青木進会長は「荒波に真正面から挑む」と力強く語った。日本郵政の長門正貢社長は豪トール社問題で深謝し、「未来志向の次期中期経営計画を作る」と強調。郵便創業150周年に向けた新たなスタートダッシュが始まった。

 全特総会が大阪の地で開催されたのは1982(昭和57)年、2005(平成17)年に続く。前回は旧郵政民営化法案の行方が注目された最中だったが、今年はその旧法を見直した改正郵政民営化法成立から5年、民営・分社化から10年と節目が重なり、全特の受け持つ金融業務を取り巻く環境も大きく変化する中で、様々に意義深い総会となった。
 青木会長は「政府が掲げる地方創生に郵便局ネットワークを活かし、取り組んでいる。特に金融機関が撤退した地域、行政事務が立ち行かなくなっている地域に寄与するため、昨年の総会で発足した地域貢献・地方創生専門委員会の取組みをさらに加速させる。真正面から問題に立ち向かうことを誓い合いたい」と意欲を示した。
 来賓の日本郵政の長門社長は「2017(平成29)年3月期決算で、日本郵便の金融窓口事業の営業利益は皆さんの努力で前期比240億円増と大幅な増益を確保できた。心より感謝したい。豪トール社の減損損失により、日本郵政グループ連結で289億円の赤字となったことは重く受け止め、深くお詫び申し上げる。しかし、過去の負の遺産を一掃し、前向きな営業をやりやすくする、という点を心に止めていただきたい」と説明した。
 青木会長は目前の課題として①ゆうちょ銀行限度額の再引上げ②個人向け貸付業務③地方創生に関する郵便局の活用④税制改正要望―の4点を挙げた。限度額の再引上げは総会や前夜祭で登壇した自民党と公明党の国会議員7人が「再引上げをすべき」と発言。既に民営化されているのであれば「撤廃を急ぐべき」とする意見も見られた。
 郵便局の利活用を推進する議員連盟(郵活連)の野田毅会長は税制改正要望に関し、「会社間窓口の委託手数料に係る消費税の問題は民営・分社化当初から問題になってきた。税制改正大綱に『経営基盤の強化』が加わったことを受け、暮れの税制改正時に税制のみならず、三事業のユニバーサルサービス維持のための具体的なスキームを財務省主税局や主計局含め、総務省など関係者と相談しながら決定したい」との意向を示した。
 東京オリンピック・パラリンピックも3年後に迫ってきた。日本郵政グループ女子陸上部の活躍も、局長会含めて多くの郵政関係者に希望や喜びを与え、株式や企業価値の向上に直結している。
 日本郵政は、2015(平成27)年に「公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020)スポンサーシッププログラム」における「東京2020オフィシャルパートナー」契約を締結した。
 様々なオリンピックに団長やコーチとして15回携わってきた橋本聖子参院議員は「今、提案しているのは、全国各地の子どもたちから選手に応援はがきを送ったものでコンテストを開催し、東京オリンピックを迎える時のコンテストで優勝、入賞した子どもたちに金銀銅メダルを渡すセレモニーができれば素晴らしい手紙オリンピックになる」と提案した。
 時代は刻一刻と変化。フィンテック(金融とITの融合)や人口知能(AI)が働き方などを変えている。その中で郵便局ネットワーク、三事業のユニバーサルサービスの維持をどうすべきかは関係者の共通認識として浮上した。
 JP労組の小俣利通委員長は「5年10年スパンで仕事や働き方が大きく変わることを認識した上で物事に対処すべき。ユニバーサルサービスを課された会社として、約2万4000のネットワークを維持しながら社会のインフラ、安心の拠点にしならなければならない。最前線で苦労する局長会の皆さんとJP労組が豊かな社会づくりを目指す企業としてもう一度、立ち位置を考えるべきではないだろうか」と指摘した。
 前夜祭で、山口俊一衆院議員は「上場したにもかかわらず、様々な規制がかかる。低金利、物流業界トップも音を上げている。三事業のユニバーサルサービスコストの問題もある。今の形態で本当にやっていけるのかどうかを話し合わなければならない。そうした議論をするために郵活連は小委員会を立ち上げた」と報告した。
 元郵政大臣の野田聖子衆院議員は「組織が何となく揺らいでいるようにも見える。少し振り返りながら、望ましい郵便局のあり方を皆で検証していただきたい。いたずらに疲弊してほしくない。利用者の方々の思いに立って笑顔で良い仕事をしてほしい」と励ました。
 今年92歳となった野中広務元内閣官房長官は「時代は変わっても、全国津々浦々の郵政の灯りは決して消してはならない。滔々とした水の流れのように、灯りを赤々と灯していかなければならない」と強調した。


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