「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6884号

【主な記事】

新規業務について議論
[民営化委]意見募集の報告やヒアリング

 第167回郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が5月12日に開かれ、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の新規業務の認可申請の意見募集に関する結果報告や、意見を提出した団体へのヒアリング(希望者のみ)を行った。新規業務は「利用者の利便性と顧客満足度を向上させる」という肯定的な意見の一方で、「かんぽ生命の解約返戻金を抑えた定期年金型保険は新しい商品と考えられ、競争関係を歪める」「ゆうちょ銀行のような巨大な銀行が、飽和気味の消費者ローン市場に新規参入するのは、地域金融システムの安定確保の観点から看過できない」など反対意見も寄せられた。
 ゆうちょ銀行とかんぽ生命の新規業務認可申請の同委員会の意見募集は、4月4日から25日まで行われた。
 ゆうちょ銀行の認可申請に対しては、全国銀行員組合連合会議、全国郵便局長会、農林中央金庫・JAバンク・JFマリンバンク、全国信用金庫信用組合労働組合連絡会議、全国銀行協会、日本郵政グループ労働組合、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会の8団体と1個人、合わせて9件の意見が寄せられた。賛成2件、慎重な審議を求める意見と反対が7件。
 かんぽ生命の認可申請には、生命保険協会、日本郵政グループ労働組合、全国生命保険労働組合連合会の3団体から意見があった。賛成1件、反対2件。 賛成意見は全国郵便局長会と日本郵政グループ労働組合。
 かんぽ生命が申請した定期年金保険の見直しに対して、生保協会は「予定解約率の導入により保険料が低廉化する内容となっているうえ、トンチン性を高める仕組み(死亡時の支払い原資を生存者の年金原資に充てる仕組み)が導入されており、長期生存(リスクと捉える)に備える新しい保障性の商品と考える。死亡・解約・生存継続時に一定の貯蓄性を備えた従来の個人年金保険とは一線を画した商品で、見直しの範疇ではない。定期年金保険市場に大きな影響を与え、競争関係を歪める」と反対意見。懸念材料として「2014年の改定で学資保険の保険料が低廉化した結果、2013年度に31.6%だったシェアが2014年度には65.8%になった」ことを挙げている。
 民営化委員会のヒアリングでも委員の質問に答える形で、生保協会は「かんぽ生命の新規業務の内容は顧客に対する説明が難しいものであり、説明が不十分なことにより、お客さまとトラブルを起こしてしまうと、生命保険業界全体の信用低下につながる恐れがある」との意見を述べたという。岩田委員長は会見で「逆に言えば、しっかりとした説明態勢があればよいと捉えている」と述べている。 
 委員からは「同じ働く者として、研修などで協調できないか」という意見もあり、全保労連は「JP労組も連合の仲間で連絡会の中で情報交換している」と述べるに留まったという。
 ゆうちょ銀行・かんぽ生命に反対する団体は「完全民営化の具体的な道筋が示されておらず、公平・公正な競争が確保されない状況が続いていること」を挙げており、「民営化委員会に対しては、こうした観点も考慮されるべき」というのが共通した意見。
 その一例として、生保協会は生命保険文化センターが行った「平成28年度生活保障に関する調査」の「かんぽ生命に対する消費者の認識」に関して、「政府の間接的株式保有が継続されるので安心できそう」(32.9%)「いざという時に政府の関与が期待できそう」(30.7%)が上位になっていることをヒアリングで紹介している。岩田委員長は「政府株は100%売却する方向性にあり、かんぽ生命も途中の段階。政府の関与がないと言えばうそになるが、政府保証は今はしていない。かんぽ生命の新規業務はやるべきではないという直接の意見はなかった」と述べている。
 ゆうちょ銀行の口座貸越サービスに対する意見として、全国信用金庫協会は意見書の中で「信用金庫業界ではカードローン口座全体の9割が貸付残高が50万円以下の口座で占められている(3月末現在の信用保証機関の保証付きカードローンの件数をベースに算定)。貯金口座数が約1億2000万口座もある巨大銀行の認可が認められると、同市場に巨大な新規参入者が出現することになり、地域の金融システムの安定確保の観点からも看過できない」と強い反対の意思を示した。
 ゆうちょ銀行は認可申請に当たり、口座貸越サービスの貸付け上限を50万円以下にすることを表明しているが、信用金庫業界にとってはその層がドル箱であることを強調した。
 全銀協は意見書で「高度なリスク管理が求められる業務で、ゆうちょ銀行がこれまで行ってきた業務とは異なるリスク管理が求められる。業務開始前までの間に各種管理態勢整備は行おうとしているが、実施後にそれが機能しているかについて政府や郵政民営化委員会でモニタリングを継続して行うことや残高の開示が必要」と要望。岩田委員長は会見で「ゆうちょ銀行は業務態勢に配慮して、やっていくのではないか」と述べている。
 全銀協は「地域金融機関との連携に係る業務」については「このような動きをさらに加速させることを期待したい」と前向きな意見を出した。
 同委員会では、ゆうちょ銀行の新規業務について、委員からは「カードローンはすでに銀行や信用金庫で行っており、そこにゆうちょ銀行が入ると、競争はどのようになるのか」という質問に、全国信用金庫協会は「限られたパイの中でカードローンの売上を増やしていきたいという金融機関は多い。規模の大きいゆうちょ銀行が参入すると、更に競争が激しくなる」と答えたという。
 委員からゆうちょ銀行総合口座内の貸付サービスの利用についての質問があり、ゆうちょ銀行は「かなり利用されており、口座貸越サービスは決済として使う人は多いのではないか」と回答。また委員からは「多重債務問題についてどのように対応していくのか」という質問があり、銀行側は「弁護士会は銀行に総量規制を設けるべきと考えているが、金融機関としては自主的取り組みを徹底していく」と答えたという。
 ゆうちょ銀行の認可申請について、全国郵便局長会は意見書で「現在、国を挙げて取り組んでいる結婚・子育ての資金ニーズに対応可能で大きく期待している」、JP労組も「利用者の利便性や満足度を向上させる」と賛成の意見。かんぽ生命についてはJP労組は「収益源が多様化することは、かんぽ生命の経営の安定化を図るために必要で早期の認可を求めたい」と要望した。


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