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第6874

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郵政、地方創生で質疑 通常国会
[二階幹事長]多世代に温もりある社会を

 6月18日まで会期が予定される今通常国会で、日本郵政グループの経営基盤強化や郵便局に関わりの深い地方創生に対する質問が相次いでいる。民進党の奥野総一郎衆院議員は「グループの新規業務」を問い質し、本村賢太郎衆院議員が「金融ユニバーサルの確保」を要望した。自民党の二階俊博幹事長は地方創生に向けて「多世代にわたる温もりある支援の必要性」を指摘。津島淳衆院議員は「官民連携による商流(流通経路やコスト含む物流)づくり」の支援を求めた。公明党の井上義久幹事長は「地域経済をけん引する事業支援」を強調。安倍晋三首相は地方創生推進交付金の積極的な利活用を答弁した。

 民進党の奥野衆院議員は2月23日の衆院予算委員会第二分科会で、「日本郵政グループは上場し、一見順調に見えるが、なかなか株価も戻ってこない。ビジネスモデルはうまくいっているのだろうか。(三事業の)ユニバーサルサービスを担いながら収益を上げる非常に特殊な経営形態。上場している中で、現状のままで民間会社として期待に応えられるのか非常に懸念している。申請されている新規業務のほか、さらに利用者ニーズに沿うものが出てきたら検討してもよいと考えるか」と質問した。
 高市早苗総務大臣は「(申請のあった)4年前と今ではかなり金融環境も変わっている。申請された内容をそのままでいくのか、違った形の認可申請になるのかは分からないが、金融庁とも連携をとりながら迅速に審査を進めることが重要と考えている」と答弁した。
 民進党の本村衆院議員は2月23日、衆院予算委員会第二分科会で「(日本郵便が)金融ユニバーサルサービスを提供するためには窓口業務を維持する必要があり、他の民間企業と異なり、赤字だからといって閉鎖することができない実情がある。その点を踏まえ、来年度に向けた強いリーダーシップを願いたい」と要望した。
 自民党の二階幹事長は1月23日の本会議で、「地方創生は『オンリーワン』の色彩をどれだけ出せるのかが問われ、ボールは“市町村”にある。地元の和歌山県の田辺市上秋津地区では地域の小学校移転を契機に地域住民が立ち上がり、旧校舎を活用して都市と農村の交流を深める体験的なグリーンツーリズム『秋津野ガルテン』を8年前に設立。自分たちでできることは行政ではなく、自分たちでやる活動が各地で始まっている。この動きを大切に後押ししたい」と語った。
 また「誰一人見捨てない、誰一人忘れないことを意味する『ノーワン・レフト・ビハインド』の声が地方からも聞こえてくる。多世代にわたる温もりある支援が必要だ。地域の声なき声に耳を傾け、必要な法制度の検討を進めていきたい。地方創生に賭ける安倍首相の意気込みはどのようなものか」と質した。
 これに対し、安倍首相は「地方にはそれぞれの魅力と観光資源、ふるさと名物がある。地域の魅力を磨いて経済を活性化させる意欲的な挑戦を自由度の高い地方創生推進交付金などによって重点的に支援する。過疎が進む中山間地でも安心して暮らせる買い物や交通、コミュニティーの維持など様々な機能を複数の集落が連携して確保する『小さな拠点づくり』を支援する。情報や人材、財政面での支援などあらゆる手段を活用し、地方創生にチャレンジする地方の皆さんを全力で応援する」と答えた。
 公明党の井上幹事長は1月24日の本会議で「持続的な経済成長や地方創生の実現には、中小企業やサービス業を中心とした地域経済の活性化が不可欠だ。人手不足で人材の確保に苦労、業績の回復が不十分で賃上げが難しいなど、中小企業の現場からは切実な声が聞かれる。真摯に受け止め、生産性向上や人材への投資を積極的に促し、地域経済の底上げを図るべきだ」と指摘。
 「ITの集中的な導入支援を通じて生産性を高めることや、地域資源を活かした商品、サービスの開発、海外支援も含めた販路拡大など収益性の向上を後押ししつつ、賃金の引上げにつなげるべきだ。域外からの需要を取り込むことも重要。域内から調達し、域外へと販売する。地域経済をけん引する事業を重点的に支援すべきではないか」と問うた。
 安倍首相は「安倍政権は地方の意欲的なチャレンジを応援する。地域経済を支える中小企業の生産性向上を図る。一定の要件を満たす経営を持った企業であれば、赤字であっても活用できる固定資産税の軽減措置や低利融資などの支援を製造業から小売りサービスに拡大する。地域経済をけん引する事業を税と予算、低利融資、規制緩和といった政策手段を組み合わせて重点的に支援する」と強調。
 「インバウンド需要を取り込む地域ぐるみのリイノベーション(既存建物に大規模な改修工事を行い、用途や機能を変更して性能を向上させ、付加価値を与える)や農産物輸出に向けた地域商社による販路拡大を実現。地域の魅力を磨いて経済を活性化させる意欲的な挑戦を自由度の高い地方創生推進交付金などで応援する」と答弁した。
 自民党の津島衆院議員は2月22日の衆院予算委員会第一分科会で、「地元の青森県は農水産物の販路拡大と高付加価値での流通を図る目的で、総合流通プラットフォーム『Aプレミアム』の取組みを行っている。航空便を活用して完全保冷一貫輸送システムを構築することで、青森県から日本列島9割の地域に翌午前中までにマグロ、ホタテ、ヒラメ、リンゴなど新鮮な農水産物の配達を可能にした官民連携による一つだ。ANAの沖縄の貨物ハブを利用することで、東南アジアへの輸出も視野に入れている。こうした官民連携による商流づくりを国としていろいろな形で支援する必要があるのではないか」と質した。
 内閣府から「大消費地から遠い青森県のハンディキャップを克服し、高鮮度で高品質な農林水産物の新たな販路拡大を図ろうとする取組みと承知している。政府も2016(平成28)年度の地方創生推進交付金による支援を行っている。県の地方創生が加速的に進むことを期待している」と説明があった。
 自民党の古川康衆院議員は2月22日の衆院予算委員会第四分科会で「地方創生が叫ばれる今、もう一度地方への流れ、あるいは地方に生まれ育った人が学びも地方で続けられるようにしていくことが何より必要ではないか」と質した。内閣府が「地方を担う人材の育成と確保の観点からも重要なテーマ。2月6日には、山本幸三地方創生担当大臣のもと有識者会議を設置し、初会合を開催した。自治体や産業界、大学関係者などの意見を伺い、検討を進めている」と答えた。


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