「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6873号

【主な記事】

単マネ、エリマネ交流研修で総合力
自治体との大がかりな包括協定へ
雪野誠二 北陸支社長


 移住・定住サポートなど個別案件で石川県と協定を締結している北陸支社は自治体とのさらなる連携強化に向けて、経済活性化貢献施策や観光振興を含む大がかりな包括協定を年度内に結ぶ。比較的小規模な支社だが、貯金と保険で現在1位。どのような取組みが成果の源泉となっているのか。雪野誠二北陸支社長は「単独マネジメント局とエリアマネジメント局の交流研修が社員一人ひとりの営業力の向上につながっている。ライフプラン研修も一つの研修につき3回フォローアップを行っている」ことを強調する。
(園田万里子)

■三事業別の施策展開の状況と成果が上がった取組みを教えてください。

 1月末現在、貯金と保険は全国13支社の中で1位を走っている。特に保険は4年ぶりの全国1位を狙っている。今年度末まで勢いを保持しようと、今、支社管内が非常に活発化している。
 一方、全国的に厳しい郵便の営業収入は年度当初から苦戦。何とかムードを盛り上げていこうと施策を打ってきた。昨年6月にはリオオリンピックに引っかけて「ほくりんピック リターンズ」を開催した。獲得商品の件数などをポイント換算してメダルが獲得でき、競い合うことでかなり盛り上がった。1月期はゆうパック、ゆうメール約180万個、特約は683件を獲得。現在は年度の総仕上げということで、「やるぞ! 目標達成『V5』~燃え上れ北陸魂~」をスローガンに掲げ、5年連続の目標達成にまい進している。
 ゆうちょ銀行は年度の最重要課題となる集中満期の再預入率が昨年10月以降、全国1位。お客さまにお渡しする「事前予約活動セット10品目」を北陸独自で定め、全局で「ありがとう訪問」を実施した。これが定額定期新規預入の獲得にもつながった。1月末時点の累計で全国1位となっている。
 かんぽ生命は昨年8月の料額改定以降、貯蓄話法から転換ができない社員が苦戦しているようで、推進が低迷している。このため、実績階層別研修と管理者マネジメント研修や週管理の徹底などに取り組んだ。その結果、現在は全ての局種が回復傾向。5月末から継続して1位で推移し、総力を結集して4年ぶりのV奪還を目指している。

■昨年4月に本格的にスタートした機能重視のマネジメントで成果が上がった点は。一方、残された課題とは。

 着任以来、北陸は小回りが利くことが特徴と感じている。単独マネジメント局とエリアマネジメント局がまとまり、全社員一丸で取り組む姿勢が随所で見られる地域だ。機能重視のマネジメントも、地区統括局長と部会長や単マネ局の窓口営業部長が連携して施策を展開することで面的な営業活動が図られている。四半期ごとに部会長から報告をもらっているが、部会数56と少ない中で、第3四半期報告でも一体営業が図られている部会が95%(53部会)。着実に成果が現れている。北陸支社は単マネのすべての営業窓口部長が部会に入っているが、ほとんどの部会でうまく機能している。
 社員のスキル向上を目指し、金沢南部会では単マネ局、エリマネ局の窓口相互研修を実施した。エリマネ局の窓口社員が単マネ局に行き、単マネ局の窓口社員がエリマネ局に行き、交流研修を行った。単マネ局社員は基本的な三事業のスキルを習得し、エリマネ局社員は専門的営業スキルの向上に取り組んだ。その結果、社員一人ひとりの営業力向上が総合力へとつながっている。
 ただし、課題がないわけではない。専門性をさらに高める管理者のマネジメント力には濃淡がある。新任の窓口営業部長は今もその局になじめないケースも出ている。機能重視のマネジメント効果を最大限に発揮するためにも、管理者のスキルやマネジメント力の向上が一番必要と痛感している。

■全国に先駆けた郵便局長の移住・定住サポーターも注目されています。

 2015(平成27)年3月に石川県と「移住・定住人口確保に関する協定」を締結し、石川県内の郵便局長が10人の移住者の方のサポートを行ってきた。移住者の方々からは「地域に詳しい郵便局長に風習など気軽に聞けるのでありがたい」との声も上がっている。一方、県からは「郵便局長は地域に精通し、地域の風習や文化など様々な情報を持っているため、サポートするには最適」と評価を受けている。
 先般、東京銀座2丁目の石川県のアンテナショップ「いしかわ百万石物語」に行ってきたが、3階建てのフロアはいずれも満員の盛況ぶり。移住紹介をするコーナーも設置されている。経済誌の「住みよさランキング2016」でベスト10に石川県野々市市、能美市、河北市と3市が入り、30位までに白山市と小松市が加わり5市が入っている。住み良さをアピールすれば定住する方も増えるだろう。
 北陸支社は、道路の損傷状況の市町村への報告や移住定住サポートなどで県と協定を締結している。加えて、観光振興や特産品の流通振興など経済活性化に貢献できる施策と併せて大がかりな「包括協定」を結ぼうと2月6日に本格的な調整を開始した。年度内の締結を目指している。

■タブレットを使った郵便局のみまもりサービスも含めて、郵便局が自治体とどこまで連携できるかが勝負どころです。

 その通りだと思う。国営時代は自治体とタイアップして様々なことをやってきた。やむを得ないが、民営化以降はその部分が希薄になった感は否めない。能登は過疎化がとても著しい。その意味で郵便局ネットワークをさらに活かしたい。みまもりサービスについても自治体の理解を得るべく積極的にアプローチしている。
 ところで、金沢港発着のクルーズ船は年間約40本あるが、イタリアの船が金沢に来て3泊4日で釜山やウラジオストック周りの航路で観光する。金沢市民だけではなく、北陸新幹線で首都圏から多くの方々が集っている。谷本正憲知事が力を入れているが、今、そのフレーム切手を作成しており、4月上旬には完成させる。

■厳しい金融情勢の中でも投資信託は全国的に見ても比較的伸びているようですが。

 販売状況は1月末現在で推進率78.36%と全国7位(2月7日時点)。販売額は48億5800万円で前年同期に比べて110.8%。「貯蓄から投資へ」の多様なニーズに対応するため、昨年6月に北陸独自で「資産運用推進室」を立ち上げ、体制強化を図っている。横山邦男社長ももちろん、日本郵政グループ全体が資産運用に非常に力を入れている。営業推進体制の強化を図るとともに、投信取扱者のすそ野を拡大するため、階層別研修の充実や高度なコンサルティングセールスのできる社員の育成に努めている。
 新規顧客を拡大するため、投信取扱局と非取扱局との連携(トスアップ)も強化している。これら施策展開によって昨年12月期は今年度最高の月伸13.2%を確保した。この勢いで早期目標突破を目指している。

■金融庁も顧客目線を最重視するなど環境も変化していますが、1月末にネット専用商品として発売されたセゾン投信の商品をどうご覧になられますか。

 北陸支社も資産形成セミナーで4回セゾン投信に講師をしていただいたが、投資の必要性や長期投資の重要性など大変分かりやすい説明に参加者からは好評だった。長期の資産運用を考える投信選びという点で信頼感と“安心感”がある。安心感は、お客さまが最も欲しているものだと思う。

■ライフプランに応じられる窓口社員の力が必要とされる昨今ですが、どのような研修や施策を展開されていますか。

 お客さまの多様なニーズに対応できる社員の営業力向上のため、かんぽでは年間販売実績350万円以上のルビー優績者を育てる研修や年間100万円以上を目指す登竜門100研修などを実施し、ライフプラン相談に応じるスキルの定着を確認しながらフォローしている。研修すればそれで終わるのが一般的だが、北陸ではフォローアップ研修を3回行っている。研修で培った技術と感動を忘れないようにフォローしているのが特徴だ。
 施策面では、北陸独自のものとして、10月期にライフプラン相談会の実績に応じて表彰を行う「ライフプラン・コンテスト」を実施した。650局という管内のほぼ全局が参加し、大変好評だったため、11月期も第2回を開催した。さらに、北陸全体の自主研究会も年2回開き、600人前後の社員が休日返上で参加。お客さまのライフプランをうまく聴きだし、それに応じた最適なプランの提供ができるようスキルを磨いている。

■現場の声を吸い上げるためにどのような工夫をされていらっしゃいますか。

 郵便局を訪問し、管理者や一般社員を問わずに「生の声を聴く」ように心がけている。「メールでもよいからどんどん意見や箴言を」といっても文字にはどうしても脚色がつきまとう。直接会って話すことが王道だ。2~3度会話すれば大体性格もわかり、本音で話してくれるようになる。
 支社管内の郵便局社員は約4800人と他と比べると少ないが、既に数百人と話してきた。機マネの取り組み、旧集配センターの統合など足を運ぶことで見えてきた課題もある。また、女性社員の感性は尊重すべきものがあると感じた。650局のうち77人が女性局長。女性のエリマネ局長だけでなく、郵便営業専門要員や集配営業社員、支社の社員も女性が多数いてくれる。集客力は女性の方が優れる面もあるため、様々な職種の女性社員から「意見を聴く会」も開催している。

■郵便局長へのメッセージをお願いします。

 社員への気配り、目配りを忘れないでほしい。
現場の局長の一声が社員のやる気を引き出し、交通事故防止や防犯にもつながる。交通事故には「まず自分を守れ」と声かけをしていただきたい。自分を守ることがお客さまを守り、ひいては会社も守ることになる。
 郵政事業は20年間で経営形態や組織形態が大きく変わった。あと5年で郵便創業150周年。国民利用者の方々に支持されてこそ、今に至った。どのような過疎地であろうとも生活する人がいる限り、郵便は配達しなければならない。過疎化が進む地域では農協も矢継ぎ早に撤退。そうした地域の金融サービスは三事業のユニバーサルサービス義務を持つ日本郵便しかできない。どれほど少子高齢化が進もうとも、郵政事業のサービスを全国あまねく公平に提供していくことが責務であり、これを使命と肝に銘じて一緒に業務を遂行していきたい。


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