「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6873号

【主な記事】

24時間即時決済を拡充
ゆうちょ銀 証券会社と連携

 近年、若年層で職業も多岐にわたる顧客が増えていることをにらみ、ゆうちょ銀行がインターネットを介した入金や支払いなど決済の利便性を高めている。2014(平成26)年から開始した即時振替サービスの収納機関(支払先となる提携企業)を段階的に増やし、1月にはマネックス証券、4月からは野村證券など初めて証券会社とも連携。ゆうちょ口座を持ち、キャッシュカードの利用顧客であれば、翌営業日でなく24時間365日(収納機関のサービス提供時間内)即時決済できる。リアルな店舗の郵便局、パソコンやスマートフォンを使うバーチャルな店舗の両方で収益を生み出す体制整備を進めている。

 ゆうちょ銀行がここ数年進めてきた即時振替サービスは、顧客とゆうちょ銀行、収納機関の三者が事前に口座振替契約を締結することで、顧客がゆうちょ銀行や郵便局の窓口、ATM、インターネットバンキングでの振込手続きをせずに振替入金が可能になる。
 入金のみ即時にできる「即時振替サービス」と、入金だけではなく、顧客側への払戻金が即時に振り込まれる「双方向即時振替サービス」の2種類がある。キャッシュカード利用のゆうちょの総合口座を登録することで手続きが完了。インターネットで即時に入金ができる。
 顧客側から見ると、決済の度に口座情報を入力する必要がなく、24時間365日、都合の良い時間に支払うことが可能で、貯金残高の範囲内で決済される安心感も得られる。収納機関側にとっても顧客がその都度決済することから代金などの回収漏れが発生せず、事後負担が軽減。ゆうちょ銀行の総合口座を利用し、キャッシュカードを持つ顧客であれば使えるため、顧客層を広げていける可能性もある。
 ゆうちょ銀行は2014(平成26)年10月、日本郵便の「郵便局のネットショップ」での商品支払いと楽天Edy(アプリを利用した電子マネーのチャージ)で即時振替サービスを開始。
 翌15年9月には、パソコンやスマホからインターネットを通じて外貨を購入し、送料無料で自宅に届ける「ゆうちょの外貨宅配トラベルwith You」に即時振替サービスを導入した。
 16年1月からは、即時振替サービスだけでなく、顧客側に対して入金の必要性が生じた際に口座へ返金する双方向即時振替サービスもスタート。
 南関東4競馬場の「SPAT4」(ネットバンク・ネット決済銀行の口座を持っていれば加入手続き後、すぐに馬券に投票できる)サービスでの勝馬投票券購入口座、日本中央競馬会の「即PAT(JRAインターネット投票サービス)」における勝馬投票券購入口座への入金と払戻しという双方向のサービスを開始した。その後、競輪でも同様のサービスを始めている。
 10月からは、コミュニケーションアプリ「LINE」上で展開される電子マネー「LINE Pay」へ、ゆうちょ口座からのチャージが可能となり、今年1月からは、ゆうちょ口座からマネックス証券の総合取引口座への即時入金が可能となった。ゆうちょ口座で入金指示された金額が即座にマネックス口座の「買付可能額」に反映されるため、夜間や急ぎの買付に利便性が高まった。次いで、野村證券とも連携し、即時振替サービスの提供を予定している。
 さらに、2月7日からは、「Yahoo!ウォレット」の決済機能として提供される「Yahoo!マネー」(ヤフオク!などでの買い物やユーザー同士での売買時に送金することができる電子マネー)へのチャージと預金払い(ウォレットに登録した銀行口座を利用した支払い)で即時振替サービスを開始した。
 日本郵政の長門正貢社長は2月22日の記者会見で、通信文化新報の「ゆうちょ銀行がマネックス証券と連携し、即時振替サービスを始めたが、さらに他企業に拡大していく方針は」との質問に対し、「賛同いただける企業があればどのようなことも検討したいと思う。マネックス証券だけに限定してサービスの提供を行うということでもない。フィンテック(金融とITの融合)やeコマース(インターネットなどを介し契約や決済を行う取引形態。ネットでものを売買する総称)絡みでいろいろな動きが起きているため、ビジネスとしてプラスになる提案であればぜひ連携していきたい」と答えた。
 ゆうちょ銀行は「お客さまは入金や支払いが即座に確認でき、インターネットによる支払い方法の選択肢の幅が広がることで利便性が高まった。支払うタイミングは24時間365日夜間も含めて可能で、即座にゆうちょ口座から引き落とされる。多様化するお客さまのニーズに応えるサービス」と説明する。
 金融庁は「決済手段の選択肢が増えるのは顧客利便性を高められる。間接的だが、貯蓄から投資を後押しすることにもつながる。金融庁として、国民一人ひとりの生活が地に足をつく安心感ある金融サービスを拡げていってほしい」と強調した。
 マネックス証券は「初回登録後の2回目以降は、お客さまが口座登録や口座番号入力をせずにスムーズにサービスを活用できる。オンラインの証券会社が何社かある中で、初めに即時振替サービスが導入できたことを嬉しく思っている。マネックス証券のお客さまにとってもゆうちょ口座が使えることは喜ばしい」と意欲を示した。
 野村證券は「いわゆる振り込め詐欺などを背景に、ATMやネットバンキングでの振込限度額が引き下げられ、振込み手続きは厳格な本人確認が必要などお客さまの負担が増加傾向にある。サービス開始で入金手続きの利便性は格段に向上する。今後も新しい金融サービスの企画や開発に積極的に取り組み、貯蓄から投資を通じた資産形成に貢献していきたい」と語った。
 銀行の場合、自行内の即時決済サービスは既にりそな銀行が行い、三菱東京UFJ銀行が2月、三井住友銀行も4月から始める。しかし、銀行と自行ではない銀行でやりとりする振込は午後3時を過ぎると翌営業日扱い。全国銀行協会は「自行内だけでなく、他銀行と即時振替ができるような稼働時間の拡大に向けて、2018(平成30)年度後半をめどに全国銀行資金決済ネットワークが全銀システムの整備を進めている」と話している。


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