「通信文化新報」特集記事詳細

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第6871号

【主な記事】

ダイバーシティ戦略を拡大
日本郵政グループ ゆうちょ初のフォーラムも

 日本郵政グループが経営上の成長戦略に掲げるダイバーシティ(多様性)マネジメントを本格化する。ゆうちょ銀行は2月10日、ダイバーシティという新たなマネジメント手法を成長に活かすために、初のフォーラムを開催した。日本郵政の池田憲人取締役(ゆうちょ銀行社長)が「今年度はダイバーシティ元年で今日は全社的なキックオフ。4月からは行動に移す第2ステージ」と強調。民営化後のゆうちょ銀行の会合で役職や性別、年齢など多様な社員が全国から結集したのは今回が初めて。日本郵便もダイバーシティに取り組んでおり、グループ総力の展開が期待される。

 ダイバーシティ社会とは性別や年齢、国籍などに関わりなく、多様な個性が力を発揮し、共存できる社会。概念が広すぎて分かりにくいが、すべての人が持つ長所を最大限に活かしながら活力を持って人口減少や少子高齢化に対応しようとする発想で、日本は欧州や米国と比べると10年ほど遅れている。
 政府においては内閣府の男女共同参画局や共生社会政策担当などが分野別に関わり、日本の生産年齢人口(国内で行われている生産活動に就いている中核の労働力となる年齢の人口)を増やすための議論が進められている。
 内閣府は「様々な人の価値観を企業の経済活動に入れることで新しい商品やサービスが生まれる。決してそれだけではないが、女性活躍はダイバーシティの一つの柱。各企業は戦略的に顧客ニーズをつかむため、女性の気づきや感性を活かす点でもダイバーシティを年々重視している。ダイバーシティはワークライフバランス(仕事と生活の調和)で実現できるととらえている」と話す。
 ゆうちょ銀行のダイバーシティに係る取組みは2014(平成26)年女性の活躍推進プロジェクトチームの発足からスタートした。さらなる推進強化を図るため、16年7月1日、本社にダイバーシティ推進部を設置。本格的な活動としてダイバーシティ・マネジメント推進に係る方針と施策を検討し、提言する委員会として池田社長をトップするダイバーシティ・コミッティの活動を開始した。
 25人のコミッティメンバーはフロントラインのメンバーを中心に構成。初年度のテーマには「女性管理者を増やすにはどうすればよいか」を掲げた。
 メンバーのうち23人が女性だが、育児休業を1か月取得した男性社員や単身赴任経験を持つ女性管理者、異なる組織経験を持つ社員などを交えた。営業所やパートナーセンター、貯金事務センターなど経歴や役職、地域も異なる社員が「フロントラインの現状や課題は何か、どうすれば活き活きと働ける職場が実現するか」を検討。幅広で新鮮な議論を重ねてきた。
 2月10日にJPタワーで開催された初のダイバーシティフォーラムでは、コミッティメンバーから女性活躍を推進するにあたっての課題として①仕事と家庭との両立の難しさ②今後のキャリア形成に対する不安③管理者などにおいて長時間労働を前提とした風土―の3点があることが報告された。
 同行が各エリアに女性の活躍推進プロジェクトチームを設置した際にも同様の課題が指摘されており、エリアごとに課題に取組んでいた。コミッティメンバーは解決のために、産休や育休の復帰社員のフォローアップセミナーで先輩社員と触れ合う機会を設けるなど相談しやすいきっかけづくりを提供する必要性や、復帰後の上司との面談だけでなく、産休や育休前の面談を充実することにより不安を解消することなどを提案した。
 協議の中で新たに認識されたのは、仮に育児や介護で休んでいても、働ける時には精一杯働きたいと思っているにもかかわらず「育児中だから貴女は無理ね」と一方的に思われてしまいがちな実情がある点。例え、育児部分休業中でも繁忙期などはできるだけ力になりたいことを上司に伝えられる機会を持つ必要性も浮き彫りになった。
 さらに、「管理者などに昇進することに自信を持てない」というキャリア形成に対する不安への対応策として、全国各地で活躍する先輩社員をイントラネットで紹介する方法が考え出された。先輩達がキャリアへの不安をどう払しょくし、仕事と生活をどのように両立してきたのか、誰もがいつでも見ることができるもの。既に紹介されているエリアもあるが、全国に広げることが重要と認識された。
 互いを認め合うことで全員が活躍できる職場を実現するなどの意味を込めた「社員一人ひとりが日々笑顔で輝き、想いを最大限に発揮できる主体性を目指します」とするダイバーシティ・コミッティ活動方針を25人が口を揃えて宣言。やりがいをもって働ける職場づくりを目指し、〝ひときわ輝くゆうちょ銀行の未来づくり〟が呼びかけられた。
 池田社長は「ダイバーシティ・マネジメントの推進と会社の成長は直結している。経営として非常に重要な課題。コミッティの皆さん、様々な協議を重ねた提案をありがとう」と感謝の思いを語った。
 池田社長から、コミッティが提示した三つの課題のうち、長時間労働是正に関しては昨年10月に人事部主導で働き方の見直しに全社的に動き始めたことが報告された。働き方については管理社員の勤務実態に触れながら、無理無駄ムラが無いか検証して変えていくことを重要視しており、経営幹部も全員が同じ認識であることを示した。
 池田社長は「巨大な組織のために簡単に羅針盤を変えるわけにはいかないが、変わらなければならない部分もある。まずは、このフォーラムで周囲の方たちと、『どう考え、どう行動しているのか』をぜひ聴きあって欲しい。そして、お互いに口に出そう。口を出すということは、自ら行動していくということ、この行動こそが“チャレンジ”だ。積極的なチャレンジ精神で、ゆうちょ銀行を『自らの銀行』として皆さんが動かしていくことに心から期待したい」と強調した。
 牧野洋子執行役は「営業が得意な人もいれば、検査監査が完璧という人もいるし、字がきれいで手紙を書くのがうまい人、電話応対が抜群の人など、職場の社員それぞれに強味があるはず。全員の可能性を引き出してチーム力を武器に、厳しい競争社会で勝ち残らなければならない。来年度はエリア版コミッティに広げ、多くの社員同士が価値観を共有する機会を拡げたい。今日を『ゆうちょダイバーシティの日』とし、全社員がチェンジエージェント(改革の推進者)として、地域社会の元気のため、選ばれるゆうちょ銀行になるため、何より社員すべてが幸せな人生を創るために、未来に向かって前進しましょう」と締めくくった。
 フォーラムでは、ゆうちょ銀行社外取締役で、内閣府の男女共同参画推進会議の有識者委員の一人でもあるNPO法人日本マナー・プロトコール協会理事長の明石伸子氏とNPO法人ファザーリング・ジャパンの尾形和昭氏も講演したほか、参加者のグループ討議も行われた。(講演の詳細は後日掲載)



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