「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6868号

【主な記事】

郵便局長の移住サポート
北陸支社の開始から2年
[山本地方創生大臣]全国展開に意欲

 東京一極集中を是正し、県内への人の流れを生み出し、地域を活性化しようと石川県と北陸支社が「移住・定住人口の確保に関する協定」を締結してからまもなく2年。山本幸三地方創生担当大臣は1月20日の記者会見で「郵便局のそうした取り組みは知らなかった。非常にありがたい。良いものであれば全国展開したい」と意欲を示した。ここ数年、移住サポーター制度は全国の自治体でわずかに増え始めたが、郵便局長がサポーターを務めているのは石川県のみ。過疎地を含めてより地域に密着する郵便局と自治体との連携強化の一環として今後の展開が注目されている。

 山本地方創生担当大臣は、通信文化新報の「石川県と北陸支社が協定を結んだ移住定住サポーターの取組みを、地方創生の観点でどのように見ているか」との質問に、「移住定住を各地方で進めていただく意味で、サポーターが必要な情報を提供することは東京一極集中を避けるためにとても良いことではないかと感じていた。郵便局にも協力いただいているのは聞いていなかったが、非常にありがたい話で、大いにやってもらいたいし、良いものであれば全国展開に持っていけるような形ができればと思う」と強調した。
 山本大臣は「株主資本主義といってよいか分からないが、利益を全部株主が独占してしまうような資本主義が極端に進み過ぎ、今日の所得格差や社会問題、地方の疲弊を生んでしまったのではないか。ドイツの社会学者だったマックス・ヴェーバーの倫理観を引用させてもらうと、日本型の公益資本主義は単に株主だけのものではない。取引先も、商品製造業者も地域社会や地域全体への貢献を考えなければいけない。そうでなければ地方が崩壊の道筋を辿る。そういう考え方をしていけば、地方創生に向けて資本を地域に還元していくことができると思う」とも語った。
 石川県と北陸支社の「移住・定住人口の確保に関する協定」は2015(平成27)年3月30日に締結された。人口定着を図りたい石川県は、地域に根を張る郵便局ネットワークに着目。能登地方など農山漁村部を中心に、地域の風習や環境に溶け込みづらいといった声が移住者から寄せられていたことから、郵便局長が生活相談に乗ってアドバイスする仕組みの構築を目指した。県内254局ある郵便局長に移住者を世話する移住サポーターを委嘱した。
 同県は地方創生に向けた地方版総合戦略の中に、移住定住の促進のための移住相談窓口開設や移住専門誌と連携した情報発信、移住体験モニターツアーの開設などの施策に加え、郵便局長を地域移住サポーターに委嘱する取組みを掲げている。
 郵便局長の移住サポーターを周知するために15年度にはA4判のチラシを作り、県の窓口などで紹介。16年度にはさらに名刺型のチラシを作成したり、県内の直営局254局にポスターを配布し、掲示することで周知を高めていった。
 全国郵便局長会(青木進会長)の山本利郎副会長(北陸地方会長)は「始まったばかりだが、既に移住者との対話を重ね、信頼を得ており、更に希望者が増えるよう、移住を希望する大都市の方々にもっと知っていただきたい」と話した。
 北陸支社総務・人事部の岡本渡CS担当部長は「サポーターになってもらっているのはエリアマネジメント局長の皆さん。2016(平成28)年度には東京から移住してきた方から2人、神奈川県から3人、千葉県から1人、関西方面から3人、福岡県から1人、計10人の石川県に越してきた20代後半から40代前半の方々から依頼の申し込みがあった。昨年9月から新住民の住まい付近にある郵便局の1~2人の局長が担当者となる形で地域と県の橋渡し役を務めている」と説明。
 石川県地域振興課の永下和博課長は「もともと、地域に根差したネットワークにより移住のサポートができないかと考えていた。この中で、地元の風習や地域に根差した情報や知識を持っている郵便局にやっていただくことを思いついた。移住希望者の方に安心感を持ってもらえると思ったためだ。多くの人にまずは仕組みを知っていただき、活用してもらいたい。仕事と暮らしをワンストップで相談できるような窓口も設けているが、そこでも移住サポートの周知を図っている。安心感のある移住につながればと思う」と期待感を示した。
 兼六園郵便局の浅間智幸局長は「移住者が局付近に越していると聞いて担当者の任命を受けた。サポートは『心のサポート』だと感じている。移住者が地域にある程度なじんでくれば、それからは地域内の人と話ができるようになる。なじむ期間は人によって異なるため、特に期間は定めていない。見知らぬ地域はやはり心細い。これまで金沢菊川局長と一緒に3人で4度打ち合わせ、普段、相談事があればSNSを使いながら対応している」と語った。
 金沢菊川局の福村明子局長は「移住者の方の住まいに局が一番近かったため、やらせていただくようになった。兼六園局長と3人で顔合わせをして就職の悩みも聞いた。通常の窓口の仕事とサポートという地域貢献を更にうまく両立していけるような仕組みができていけばより一層よくなると思う。郵便局が地域貢献できることにやりがいを感じている」と話した。
 移住サポーター制度について、京都府綾部市は市内の空き家物件を調査し、所有者から承諾のあった物件を公開。地域活動実践者で組織する「あやべ定住サポート隊」がノウハウを活かし、定住に向けた質問や相談に応じている。就農に関する相談受付や研修のほか、正社員になるための相談や支援、転職や再就職の相談を受け付けている。
 新潟県は移住希望者の求める情報発信と相談機能の強化や移住後の新生活をサポートするための「新潟市HAPPYターンサポーター」を設置。市民を挙げて移住者の受け入れ体制を整備し、更なる移住促進につなげるために個人登録の募集を行っている。


>戻る

ページTOPへ