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第6867号

【主な記事】

郵便局ネットワーク維持へ
具体策の議論開始、議員立法も視野に

 郵便局ネットワークを最善の形で維持し、地域住民に三事業のユニバーサルサービスを継続的に提供していける仕組みづくりの議論が始まる。郵便局の利活用を推進する議員連盟(郵活連=野田毅会長)は、今国会会期中に役員会と総会を開催し、政府(国)の支援措置などの具体案を作成する。郵政事業に関する特命委員会、さらには総務会へと議論を持ち込み、民進党や公明党などとも郵政支援策を協議、株式売却の第2段階への動きが始まる中で、議員立法なども視野に税制改正に盛り込まれた日本郵政グループの経営基盤の強化支援に本腰を入れる

 郵政事業の将来に向けて、三事業のユニバーサルサービスコストの捻出は郵便局ネットワーク維持の問題に突き当たる。
 厳しい経営環境の中で、地域住民の生活動線と連動させるネットワーク再編が着々と進められ、直営局数は既に2012(平成24)年10月から16年9月まで全国で82局、簡易局は46局減少した。簡易局は過疎地ではむしろ増えているが、その中には直営局の簡易局化の数も含まれている。
 ユニバーサルサービスを局数で見るのではなく、水準という質的評価も水面下では浮上。コンビニエンスストアなども含めた簡易局の受託者範囲を広げる考え方も出ているが、採算のとれない過疎地ではコンビニも金融機関の農協なども撤退しているのが実情だ。地域の灯台のような役割を果たす郵便局の存在は、少子高齢化が一層進む日本で、地域住民や町村など小規模自治体から強く求められている。
 仮に郵便局が急速に減少していくと、郵便のユニバーサルサービス義務は様々な手段を使って補完できても金融ユニバーサルサービスは現状のまま継続することが難しい。
 郵便局の経営にかかる年間約1兆2000億円のうち、約1兆円はゆうちょ銀行とかんぽ生命の委託手数料で賄われるため、金融2社と日本郵便を引き離すと必然的にネットワークが維持できなくなる状況が予測されている。
 全国郵便局長会(青木進会長)の「平成29年新春の集い」に出席した郵政事業に関する特命委員会の細田博之委員長(総務会長)は「JRの場合は新幹線というドル箱があって、ローカル線の赤字分を補てんし、原則黒字を達成しているが、日本郵政グループにはそのようなドル箱がまだ見つかっていない。三事業のユニバコストをどこで的確に補うのか、何らかの制度が必要ではないか、冷静な議論を行わなければならない」と強調した。
 郵活連幹事長の山口俊一衆院議員も「ユニバコストをどう賄うか、議論をそろそろ始めなければならない」と2人共に公の場で問題提起した。細田委員長は、昨年末にも郵活連と懇談する中で「株式の50%以上を国が持っている間はユニバコストは政府が負担すべき」と訴えている。
 二階俊博幹事長も日本郵政の長門正貢社長との和やかな懇談の席上、「ユニバコストの支援は党全体で議論すべき問題」と前向きな姿勢を示した。
 一方、改正郵政民営化法成立から5年を迎えようとしているが、あいまいさを残した文言などを改善すべきとの認識が高まっている。山口衆院議員は「国が支援するか、あるいは株式の売却益をユニバコストに回すようにするかなど、様々な具体案を考えていくのはこれからだ。会社間窓口の委託手数料に係る消費税の特例措置は、昨年末に与党税制調査会でかなり協議したものの改正はまたも困難を極めた。むしろそれ以外の財政措置を検討する議論を始めようとしている」と明かした。さらに「限度額の次の引上げも進めていくべきだ。マイナス金利で引き上げても会社の収益が高められるわけではないが、地域住民の利便性を考えなければいけない。本来、上場したのだから規制があるのはおかしなこと。新規業務も会社と相談しながら進める。プロジェクトチーム(PT)の立ち上げも検討し、まずは郵活連で何種類か案を作る」と方針を示した。
 柘植芳文参院議員は「改正法を三党合意するために、やむを得なかった隙間部分をしっかりとさせなければ将来危ういことになる。株式も100%処分を『目指す』という文言はいかようにも解釈できるが、完全処分した時に郵便局ネットワークの維持は厳しい。金融2社と日本郵便の委託代理関係を、株主から『儲からないところとなぜ代理契約を結ぶのか』と問われ、断ち切られる可能性もある」と説明。
 「三事業のユニバーサルサービスを維持するには、最低限一定の株式を日本郵政が持ち続ける法律にしなければ、安定的に国民へのサービス提供はできなくなる。ユニバーサル義務の観点で、一定の政府の関与を残せる形づくりをすべきだが、政局の具にされないようにオール郵政でネットワーク維持の形を徐々に作っていかなければならない。郵便法も旧郵政省時代に作られ、改正されないまま今日を迎えているが、郵便局は営業会社のため、民間として収益を上げていけるよう必要のない規制は撤廃し、作り直すべきだ」と強調する。
 城内実衆院議員は「ネットワーク維持の仕組みづくりはしっかりとしたものを構築すべき。税制面で過疎地や離島を優遇し、支えることが重要」と指摘。瀬戸隆一衆院議員は「ユニバコストをどんな主体がどういう形で補うのか、検討しなければならない。与党税調では党全体で議論しようという話になった」と語った。
 民進党郵政議員連盟事務局長の奥野総一郎衆院議員は「郵政事業は例えば、配達部分で何らかの効率化を図るなどできるかもしれないが、金融業務はそうはいかない。金融サービスの新規業務を強く推していきたい。国の支援措置は補助金というやり方がふさわしいのかなどを民進党も国会会期中に議連を開催し、協議したい」と話した。
 藤末健三参院議員は「改正法7条3項に、公益性と地域性を活かすために『政府が支援措置をしなければならない』と明記されている。自治体と日本郵政グループが連携してサービス提供できるための交付税を政府から出せるように、補助を国経由で自治体にやっていただくのはどうか。加えて、三事業一体を維持するためにも金融2社の売却益を郵政グループの成長に投資できるようにしていただきたい」と提案する。
 公明党郵政問題議員懇話会長の斉藤鉄夫衆院議員は「財政支援措置を自民党と共に協議していきたい」と意欲を示した。


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