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第6860号

【主な記事】

全特臨時総会 徳茂議員を顧問に
[地区会長研修]「地方創生」の担い手


 全国郵便局長会(青木進会長)は11月26日、TKPガーデンシティ品川で臨時総会と地区会長研修を開催した。12地方会から238人の地区会長が出席。総会では柘植芳文参院議員と徳茂雅之参院議員から郵政事業の課題解決に取り組む状況が報告され、青木会長の発議により徳茂参院議員が相談役から顧問に推挙された。研修は「地方創生」をテーマにJTBの鹿野英克氏が講演し、超高齢化社会に向けて全国津々浦々に張り巡る郵便局ネットワークの役割はさらに増し、地域の人や企業、自治体との連携を深化させながら町づくりの一翼を担う認識を共有した。
 臨時総会は議長の南埜昭敬局長(堺浜寺船尾/近畿)、副議長の村上退介局長(楯山/東北)の進行で進められた。
 冒頭、青木会長は「11月25日は局長会の結成記念日。1953(昭和28)年に誕生して満63歳を迎えたこととなる。この機会に原点を思い起こしてほしい。全特は団結によって郵政事業と地域社会の発展に寄与し、会員の勤務条件の向上を図ることを目的としている。これらが実現できているか、歴史をひもときながら検証していただきたい。時代の変化に迅速に対応するために教本『礎』の一部見直しを進めている。原点回帰は局長会活動を考える上で有効なヒントを与えてくれるだろう。全特ネットにも掲載されている。力を合わせて困難を乗り切っていこう」と呼びかけた。
 柘植芳文参院議員は「『公の魂は失わず』を読んでくれてありがたい。この本を書いたのは、局長会が改正郵政民営化法に深く関わってきたことを知らせたかったためだ。詳細な部分まで局長会の思いがにじんでいる。改正法は全特が作ったと言っても過言ではない。法律は十分ではないが、我々が求める郵政事業の骨格はできている。前進したことは間違いない」と強調した。
 「実は嬉しい出来事があった。参議院自民党の吉田博美幹事長が『赤いポストはないか』と机の横に貯金箱を置いてくれた。「君たち、赤いポストのバッジをつけろよ」と呼びかけもしてくれた。早速、東京地方会から購入して先生方に渡した。党はそれほど局長会へ期待と信頼感を持っている。皆さんの地道な活動の成果に違いない。我々が求める本来の郵政事業に向かって会社も動き始めた。今後、改正法で足りなかった部分を徳茂議員と埋める仕事をしたい。1プラス1は2ではなく、3にも5にも発展できる」と意欲を示した。
 徳茂参院議員は「就任して4か月。金融事業に携わった時期が長かったことから財政金融委員会に所属し、10月27日と11月10日に麻生太郎財務・金融担当大臣に質問させていただいた。年末に近づき、様々な法案が審議され、党税調でも会社間窓口委託手数料に係る消費税の仕入れ税額控除など税制改正要望が議論されている。麻生大臣から『検討していく』との返事もいただいた。改めて応援いただいた皆さんに深く御礼を申し上げたい」と感謝の意を表した。
 また、「郵政事業発展への大きな流れを作っていくのが年末期。キーワードは地域貢献と地方創生。人口減少や高齢化が進む中で、郵便局への期待が高まっている。みまもりサービスも含めて、地域のために汗する局長がさらに地域発展に向かって働けるように精一杯努力する」と決意を述べた。
 地区会長研修では、地方創生関係の講演会が行われた。
 JTB法人事業部観光戦略担当マネージャーの鹿野英克氏は「増田寛也前郵政民営化委員長のレポートで示された将来の消滅自治体896という数字は衝撃的だった。日本の人口ピークは2008(平成20)年で現在は1億2000人。約30年後には1億人を割るとされる。人口減少を打開するには、地域の属性に応じた取組みが求められ、それが地方創生だ」と語り始めた。
 鹿野氏は観光を通じた町づくり体験のいくつかを報告。「星のブランディング」で注目される長野県下伊那郡阿智村について「昼神温泉という有名な温泉があるものの顧客数は増えないから活性化したいとの相談を受けた。まず資源を深堀してみると、主にスキーによる冬場しか営業できていなかった。眠っている夏場も普遍性を加味した何かができないかと地域の方々と一緒にプランニングをスタート。温泉だけではなく、星空を鑑賞するツアーのデザインを町全体で取り組んだ。案内者のコスチュームにもこだわりながら、照明を消すと広大な星空が広がる星降る里ができ上がった」などと紹介した。
 また、「鬼怒川温泉でも地域の方々と協議会を立ち上げた。ツアーは一過性のものが多く、持続的なものがないのが課題。まず、地域資源を体感してもらうことが地域のブランド力につながる。地域の自立のために何をしていくべきなのか、地域の皆さんと一緒に創り上げる協創という概念が大切だ。継続できる事業づくりは結構難しく、合意形成をしていかなければならない。この地域資源はどのような魅力があるのか、食や生活、歴史などを話し合い、成功すれば新たな雇用も生まれる」と指摘した。
 「例えば、農業も販売だけに焦点を当てるのではなく、人を呼び込める農業への変革を促そうと提案。そのために観光が必要で、フーズツーリングマイスターという資格認証制度に取り組んだ。僻地にあって、なかなか人が訪れることのなかった酒蔵をその地域にある酒蔵同士で連携して観光してもらうための『パ酒ポート』もそうした発想から誕生した。北海道から今や全国に広がっている。自治体と連携し、『食農観光塾』も立ち上げた」とやり方を伝授した。
 結論として、「地方創生を進めるには①稼ぐ力②地域の総合力③民の知見―の3点が必要になる。それらの視点を確保しながら、新たな枠組みと担い手、圏域を作り出す。町づくりに重要な地域の人づくりの鍵は、育てるというよりも人材発掘。やる気が充分ありながらくすぶっている人間に声を掛けていく。どれだけ多様な方々と一緒に取り組むかが勝負どころ。様々な企業が頑張っている」と締めくくった。
 会場からの「産業を興すことはとても難しい。自治体は人を呼び込むノウハウまでは持っていないと思うが」との質問に、鹿野氏は「いきなり商品などを作っても売れない可能性が高いため、地域の多くの人と共感するプロセスを利害関係も含めて逆計算して調整し、合意形成しながら3~5年後のビジョンを共に考えることが大切」と語った。


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