「通信文化新報」特集記事詳細
第6854・6855合併号
【主な記事】3種・4種の見直し議論
ユニバWG 日本郵便にも方針の検討を
「郵便のユニバーサルサービスに係る課題等に関する検討会」(座長:村本孜・成城大学名誉教授)の「第3回現状と課題等に関するワーキンググループ」(主査:米山高生・一橋大学大学院商学研究科教授)が10月17日、総務省で開かれた。
第3種・第4種郵便物の政策的低廉料金サービスや郵便事業の収支状況の情報開示などについて審議された。「第3種・第4種郵便物は制度の意義を精査した上で見直す」「国民の理解を得るためにも情報開示は必要」という意見が相次いだ。
郵便事業の収支状況の情報開示については、日本郵便法などにより毎年、総務大臣の報告と公表が義務付けられている。東條吉純・主査代理は「民営化後の成長戦略を描く上でも情報開示は重要。赤字になった場合、どこが赤字なのかを国民に開示しなければ理解が得られない」、村本座長は「現状の収支報告では、特殊郵便は258億円の利益が出ているが、どれがユニバーサルサービスなのか分からない。ユニバーサルサービスとそうでないサービスがどういう仕分けになっているのか。それを理解した上でないと正確な議論ができない。ディスクロージャーに向けて改革をしてもらいたい」、佐々木委員からは「郵便事業の第1種・第2種について、その収益は明確だが、費用はどのように実態的に分けているのか」といった意見があった。
第3種・第4種郵便物については、総務省が所管省庁に対して制度についての意見を求めたところ、どの省庁からも低廉な料金は必要との回答。その理由として第4種の通信教育については、「勤労青年の数は減っているが、不登校経験者らの受け皿として活用されており、制度発足当時とは異なる重要性が高まっている」(文部科学省)。点字・盲人用録音物は「視聴覚障害者には高齢者層も多くインターネット環境が十分に普及していない」(厚生労働省)、植物種子は「我が国の農業は少量多品種品目生産が特徴で、農家は作期ごとに種子を入手する必要があり、TPPを受け農業生産資材の低コスト化が強く求められている」(農林水産省)、学術刊行物は「未だ半数は紙媒体で発行しており、割高な民間事業者に切り替えると学術研究の振興に支障をきたす」(文部科学省)などが挙げられている。
これに対して「植物種子は実際には2社が利用の大半を占めている。公益性という観点から望ましい環境ではない」(東條吉純・主査代理)、「学術刊行物については、重量によっては他の事業者の方が安いからそちらに、というのではいいところだけ取って利用するのではマーケットが歪んでしまうのではないか」(米山高生・主査)、「通信教育の低廉料金を残すとICTへの移行が遅れるデメリットもある」(大橋弘・構成員)などの意見もあった。委員からは、第3種・第4種郵便物を所管する省庁へのヒアリングの要望があった。
東條・主査代理は「諸外国の状況を見ると、盲人用は大半の国が無料だが、植物や通信教育の低廉サービスをしている国はない。メリハリをつけたい。社会福祉とその他に分けて、必要性について精査したい」、大谷和子構成員からは「競争にさらされているものと低料郵便物は区別して議論した方がよい」、村本座長は「第3種・第4種の歴史の中で、高齢化社会という変化の中で、医薬品のようなものも考えなければならないものもある。制度の意義を精査する必要がある」、米山主査は「日本郵便は第3種と第4種の政策的意味は、政府の方で決めてくださいということだったが、CSRの一環としてサービスをするのか、社会政策として必要なものはやっていくが、産業政策については行わないなど日本郵便の方で検討してほしい」など制度全体に対する意見もあった。
事務局からは法的義務はないものの独自で障害者割引を行っている、JRやJAL、NHK、NTT、NECO東日本などの事例が報告された。
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