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第6854・6855合併号

【主な記事】

再引上げ議論を開始
郵政特命委 税制改正も協議

 ゆうちょ銀行とかんぽ生命の限度額引き上げを集中的に審議するために立ち上げられた自民党の「郵政事業に関する特命委員会」(細田博之委員長)は10月12日、今年初の役員会を開き、第2段階の議論を開始した。金融庁と総務省に委ねられる検証のうち、資金シフトの影響が現時点では確認されないため、早期に結論を出すべきとの意見が出される一方、日本郵政グループからボーナス商戦を見据えてほしいとの意向も示された。委員会は年末に向けて三事業のユニバーサルサービスコストねん出のために税制改正も並行して協議する方針。民進党もネクスト内閣から郵政支援策を発信していく。

 再開された特命委員会では金融2社の限度額引き上げ後の資金シフトの有無に関して意見が集中。中川雅治参院議員は「党の最高決定機関である総務会で決めた限度額。特にシフトが著しいわけではないのだから、年末に向けて決着すべきだ。政府としてユニバーサルサービスの費用を負担すべき、とする意見も強い。会社間窓口に係る消費税の仕入れ税額控除も実現できるように委員会として頑張る必要がある」と指摘した。
 山口俊一衆院議員は「6~7月のボーナス期にシフトしていないのであれば、早急に更なる限度額見直しを委員会で考えていただきたい。税制改正要望は今年度、過疎地域に絞った以上の仕組みを獲得できればと思う」と強調した。
 徳茂雅之参院議員は「今年4月に長年の懸案だった限度額引き上げが実現したことで、現場の郵便局長や社員の皆さんが勇気付けられた。地域住民の方々が郵便局を安心して利用できるように、年末に向けてしっかりした議論を行い、第2段階引き上げも含めて、あらゆる制約を取り除いていく助力を願いたい」と要望した。
 瀬戸隆一衆院議員の「資金シフトの検証はいつ頃まで見ていくイメージなのか」との質問に、日本郵政の池田憲人取締役(ゆうちょ銀行社長)が「我々の商戦はボーナス貯金。個人的な考えにはなるが、その結果を見ていきたい。いつまでと申し上げられないが、夏と冬のボーナス商戦を見て、様々議論をいただけたらと思う」と語った。
 山口泰明衆院議員は「新潟で行われた集会で引き上げ第2段階について1500万円と公言してきた」と報告した。 
 川崎二郎衆院議員は「日本郵政グループは、IT部門で民間企業と相当差が開いている。IT化の長期計画を立てるべきだ。不動産部門の都市開発にも目を向けるべき。財産を持つかつての国営企業は有利な立場にあるため、不動産開発をどう活かすかは一番大きな課題になる。(過疎地に絞った)税制改正要望の内容そのものが良い形とは必ずしも思わないが、過疎地域の問題をどうするのかは深刻な課題として我々が受け止めて取り組まなければならない」と強調した。
 柘植芳文参院議員は「情報関係でマイナンバーカードを活用したビジネスが描かれていないように見える。ぜひ日本郵政グループに作っていただきたい。5~10年という長期的スパンではなく、もう少し短期にそうしたビジネスを起こせていけたらよいのではないか」と期待感を示した。
 山口俊一衆院議員からも「マイナンバーカードをにらみ、郵便局ができるIT絡みのサービス強化を長期計画の経営戦略に組み込んでほしい」と提案された。
 細田委員長は「金融2社の引き上げが他から文句を言われるような影響が出ていないことも証明されつつある。委員会再開により、できる限り早期に結論を出したい。ゆうちょ銀行は融資業務ができないなど不利な点が多くある。ほかの民間金融機関とのイコールフッティング(商品・サービスの販売で双方が対等の立場で競争が行えるように基盤と条件を同一にする)を打ち出す必要がある」と強調。
 また「三事業のユニバーサルサービスコストの手立ても考えなければならない。野田毅税制調査会長に引き続き知恵を出してもらうことを期待している。ヤマト運輸やJA、中小の地域金融機関や生保など様々な企業とどんどん連携して地方に手足を持つ郵便局ネットワークの有利さを活かしていくべきだ」と締めくくった。
 10月14日に行われた郵政民営化委員会後の記者会見で、岩田一政委員長は、記者団からの「限度額に関する現時点での考えは」との質問に、「大きな資金シフトは起きていない。まだ分からないが、その後に出ているデータをある程度の時間をかけて判断すべきではないかと思う。金融庁と総務省が状況をモニターしている。それを踏まえながら考えていく」などと答えている。
 通信文化新報の「マイナス金利の中で引き上げても影響は少ないと思われるが、早期に進める方針は」には、「マイナス金利は日銀が決めることなので何ともいえないが、いくらか中長期目標に組み替えられたようにも見える。ただちに(情勢が変わる)風には考えにくい。このため、マイナス金利の間に進めるというタイミングと直接的にはリンクしてこないと思われる」と見通しを示した。
 金融庁は「限度額の問題だけではなく、例えば、ゆうちょ銀行は復興ファンドの運用先なども含めて多くの課題が金融2社にはある。総務省との情報交換も継続的に行い、モニタリングを進めている」と語る。
 総務省も「資金シフトは偶数月に年金日があるなど、単純に比較ができないことから今後見ていかなければ分からない。2005(平成17)年成立の旧民営化法でも12年施行の改正郵政民営化法も限度額の条文は変わっていない。法律に則り、進めていく」との方針を示した。


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