「通信文化新報」特集記事詳細

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第6849・6850合併号

【主な記事】

実証実験スタート
鉄道で荷物を輸送
[日本郵便]東京・江東区から埼玉・和光市まで

 日本郵便が参加する「鉄道施設を活用した物流実証実験」が9月9日から始まった。実証実験で取得したデータや旅客輸送への影響などを検証し、トラック輸送から旅客鉄道を活用した貨物配送に転換させるモーダルシフトにつなげる。日本郵便をはじめ、ヤマト運輸と佐川急便の物流3社に加え、東京地下鉄(東京メトロ)と東武鉄道を含む5社が協力して行う。
 実証実験は、車両基地間の輸送のみの「拠点間輸送」と車両基地で積んだ荷物を駅で下ろす「拠点~駅間輸送」の2種類。会社ごとに実施し、混載は行わない。実際の荷物の重量に相当するものを段ボールに入れた模擬荷物を台車ごと積載する。すべて実証実験専用ダイヤで運行する試運転列車で乗客は乗せない。
 実験初日は、東京地下鉄とヤマト運輸による「拠点間輸送」の一部が行われた。午前9時過ぎ、模擬荷物を積んだトラックが新木場車両基地(東京都江東区)に到着。普段は旅客鉄道として利用されている「有楽町線・副都心線 10000系」車両に、荷物を積み込むための専用架台を設営した。
 車内の養生を済ませた後、荷物を積載。荷物が動かないように、手すりなどに荷物を固定するラッシング作業を行った。列車は出発後、和光市駅を経由し、和光車両基地(埼玉県和光市)に到着。当日は荷物の積み下ろしはせず、新木場駅に戻った。
 日本郵便は、9月30日昼と10月1日早朝の2回、大型の地域区分局の新東京郵便局、東京北部郵便局が近い新木場車両基地と和光車両基地の間で「拠点間輸送」の実証実験を行う。
 東京23区にある新東京郵便局が新木場車両基地から3.4キロ(車で8分)、東京北部郵便局が和光車両基地から2.8キロ(車で8分)の所にあるため、その間の物流量は多い。新東京郵便局から新木場車両基地、和光車両基地から東京北部郵便局の間は日本郵便のトラックで運ぶ。
 新木場車両基地から和光車両基地間は40キロで、電車での所要時間は130分。トラック輸送に比べて、2か所で荷物が積み込まれることから、積載時間や人員、荷物の安全性、車両には養生を施すが傷がつかないかなどを検証する。
 ヤマト運輸と佐川急便は、新木場車両基地で積んだ荷物を新富町駅や銀座一丁目駅、有楽町駅でそれぞれ台車1台程度を降ろし、駅構内から地上まで運ぶ実証実験も行う。
 実証実験は10日間を予定。10月15日まで1日1本ずつ計10本列車を運行させる。貨物輸送の問題点や課題を洗い出すことで、モーダルシフトの実現可能性を検証する。交通渋滞の減少やCO2排出量の削減、トラックドライバーの不足といった社会的課題の解決策として期待されているが、各社の荷物の混載などの課題もある。


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