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 年/月

第6845号

【主な記事】

コスト算定WG(ワーキンググループ)が初会合
郵便のユニバサービス検討会
日本郵便に効率化目標提出も

 「郵便のユニバーサルサービスに係る課題等に関する検討会」(座長:村本孜成城大学名誉教授)の「コストの算定手法等に関するワーキンググループ」(主査:関口博正神奈川大学経営学部教授)の初会合が8月2日、総務省で開かれた。昨年8月の情報通信審議会の答申で示された同コストの費用の算定方法を基に、専門的な意見が交わされた。

 初会合では、まず総務省情報流通行政局郵政行政部の安藤英作部長が「郵政事業のユニバーサルサービスは国民にとって大きな意味を持っている。コスト算定を国民にどのように分かりやすくするか。このワーキンググループで、議論を深めていただきたい」とあいさつ。主査代理に竹内健蔵・東京女子大学現代教養学部准教授を選任した。
 事務局は答申に基づきユニバーサルコストの現状を説明。構成員からは質問や忌憚のない意見が出され、初会合から専門的で活発な議論がなされた。
 関口主査からはコスト分析モデルについて「日本郵便に対してどこまで効率を求めるかが決まっていないが、いずれは日本郵便に効率目標を出してもらいコスト分析ができるモデルの構築もする必要があると考えている」との意見、髙橋賢構成員(横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授)からは「経営ツールをどの辺まで踏み込むのか」との質問もあった。
 松岡幸治郵政行政総合研究官は「電気通信のユニバーサルサービスでは効率的なデータを基にしていたが、郵便は今の段階では日本郵便からのデータを基にしている。もっと効率的なモデルを基にすることも考えたい」と述べた。
 外部環境変化の要因については髙橋構成員が「人口減少や高齢化の進展についての将来予測はできない。人口減少が急激な場合もあるがそうでない場合もある。国民の期待によっても変わる。シナリオによって変化させるもの(いくつかのパターンを示す)を提案していきたい」との意見を出した。
 また、地域別のコストについて、髙橋構成員は「郵便物を出した場合の収入は引き受け郵便局で生じるが、ユニバーサルサービスの収支算定では、工程別に収入として割り振られる考え方になっている(経由地域別収支)。地域をまたがって収益と費用を配分しているので、地域別にするのは意味がないのではないか。貯金窓口と保険窓口であれば地域別は分かる」と述べた。
 事務局からは「ネットワークの密度によって配達効率に差が出て、コストが違ってくる。それぞれの地域の費用の対になる収益をどのように配分するのか。収益をその割合で分けている」と現状の考え方について説明があった。
 今後は、コスト算定の意義や必要性、活用の可能性などについて検討する。具体的には▽日本郵政と日本郵便の経営効率化やコスト削減などの経営努力を前提としたコストを明らかにする▽同サービス維持に影響を与える外部環境変化要因を考慮することも可能なモデルの構築▽コスト算定方法については、国民が期待するサービス範囲・水準の中長期的な変化を踏まえた分かりやすい説明をする▽算定に当たっては日本郵政と日本郵便の決算データを用いるが、秘密保持に配慮しつつ、そのデータの整理方法を検討し、コスト算定プロセスや算定結果の透明性を確保するなど、多方面から算定手法を検証する。12月には親会に検討状況を報告する予定となっている。



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