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 年/月

第6840号

【主な記事】

日本郵政、イオン 協業を推進
トール社 タスマニアビーフ輸送


 日本郵政とイオン(千葉市、岡田元也社長)は7月8日、日本郵政グループとイオングループの協業を、日本郵便の業務に関する新たな分野で推進することを明らかにした。両グループは2006年9月に包括的業務提携し、協業を進めており、今年で10年を迎える。イオンが生産・販売するオーストラリアのタスマニアビーフをトール社が日本などに輸送するほか、イオンモール内への郵便局の出店や受取ロッカー「はこぽす」の設置などを進める。タスマニアビーフの輸送は7月9日にタスマニア島の港を出発する便からトール社が輸送しており、第1便が月末に大阪に届く。

 主な協業は①オムニチャネル(実店舗やネット上の店舗などの販売チャネルと流通チャネルを統合すること)②イオングループ店舗への郵便局の出店③みまもりサービス④アジア圏を中心とした物流サービスの4分野。
 両社は「地域に密着したサービスの開発・展開」という共通の価値観の下、これまでにミニストップでのゆうパック引き受け・受け取り・郵便物の差し出し、日本郵便の買い物サービスの実証実験へのイオンの参加、イオン店舗への郵便局の出店(現在14店舗)、イオンが取り組む「地域エコシステム」への日本郵政グループの参画(第1弾は千葉市の幕張・稲毛地区)など、各分野で協業を進めてきた。
 新規の協業としては、イオングループがオーストラリアのタスマニア島で生産している「タスマニアビーフ」の輸送をトール社が引き受ける。冷蔵・冷凍の特殊コンテナを使い、タスマニア島(北海道と同じくらいの面積)の牧場(精肉加工所)から島内の港・バーニー港、メルボルン港、通関手続きを経て、大阪港、イオンの冷凍倉庫まで、一貫してトール社が輸送する。同社の船は毎日、メルボルン―タスマニア間を往復している。
 岡田イオン社長は「トール社にお願いしたおかげで、輸送期間が2日間短縮したほか、コストも25%削減された。我々の輸送とはネットワークのレベルが全く違い、これまでできなかったことができるようになった。ASEAN諸国の輸出入も、トール社1社に絞ることで効果が出る。今後、増加が見込まれる日本とASEAN間の輸出入の輸送は課題だったが、トール社は頼りがいがある」と評価している。
 タスマニアビーフは成長ホルモン剤を使わず、エサも遺伝子組み換え作物は与えないなど安全な方法で育てられ、国内をはじめアジアでも需要が高まっている。現在、1万8000頭いる牛を2万5000頭にまで増やす計画だ。
 岡田社長は「今後はタスマニアビーフを香港やマレーシア、ベトナムにも輸送するニーズが高くなる。その輸送も引き受けてもらえれば便利だ。ベトナムのマンゴーを日本に輸出し、青森のリンゴをベトナムに輸出することも進めている。一つひとつは小さなことだが、これからも助けてもらいたい」と今後の協業についても積極的に進めたい考えだ。
 トール社の輸送量は、当初は年間で長さ20フィートコンテナ約360本を予定している。売上は年間で数億円規模となる。
 日本郵政の長門正貢社長は「タスマニアビーフの輸送自体は小さいビジネスだが、今後のアジア圏での物流ビジネスにもつながる一歩だ」と協業に期待を寄せる。
 日本郵便とトール社では、アジア・オセアニアで事業を展開する日系企業に積極的に営業活動を展開しており、すでに輸送機器メーカーや事務機器メーカー、中古車事業者、鉄鋼商社などから輸送の発注を受けているという。
 また、イオングループ店舗への郵便局の出店も進められており、すでに14店舗がイオンやイオンモールなどに出店している。
 土日の営業もイオンモール名取内郵便局(5月27日移転オープン)など3店舗で実施しており、主にライフプランの相談業務を行っている。ニーズの高いところを中心に今後も土日の営業を増やす予定だ。
 イオン店舗は来店客も多く、駐車場も広いなどのメリットがあり、日本郵便ではイオングループの店舗の立地にもよるが、老朽化した郵便局の移転先としても検討を進めている。郵便局のみまもりサービスの一環として、買い物サービスの具体的な協業も検討を進めていく。イオングループも「地域エコシステム」で買い物支援に取り組んでおり、日本郵便とは2015年10月から共同で、山梨県(イオン甲府昭和店と郵便局)で高齢者向けのタブレット端末を活用したみまもりサービスを実証実験中だ。
 ボタンを押すだけで買いたい商品を注文できるというもので、両社ではその結果を踏まえて、地域エコシステムでのサービスを含めて協業の具体策を検討していく。


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