「通信文化新報」特集記事詳細

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第6817号

【主な記事】

地域貢献は郵便局の原点③
東京都東京多摩東地区会
〈発表者〉狛江岩戸南局 星野真樹局長
〈補助者〉狛江駅前局 鈴木勝幸局長
絵手紙を貴重な財産として

 東京都狛江市は絵手紙発祥の地。創始者の小池邦夫氏は初めて狛江郵便局で親子絵手紙教室を開催した。東京都東京多摩東地区郵便局長会の狛江部会は、この絵手紙を狛江市の貴重な財産として、局長、社員、家族も巻き込みながら様々な事業に参加し、地域とのコミュニケーションを築いてきた。狛江市との太いパイプも構築、郵便局ファンの拡大に取り組んでいる。=全特地域貢献活動発表会の取り組み事例を紹介=





絵手紙を貴重な財産として
 狛江市は東京でも緑が多く残る多摩地域にあり人口は約8万人。面積は東京都の市では最も小さく、全国でも埼玉県蕨市に次いで2番目。観光名所は映画やドラマ撮影でよく使用される五本松が有名。特産品は枝豆で、それを活用した枝豆ビールは一度飲んだらクセになる味。観光大使は『カドノ タクゾウ じゃねーよ!』でおなじみのお笑い芸人、ハリセンボンの近藤春菜さんだ。
 絵手紙の創始者・小池邦夫氏は狛江市内に仕事場を持ち、昭和56年7月23日に狛江郵便局で全国初の親子絵手紙教室を開催した。平成16年には「ふみ」にちなんで絵手紙発祥から23年を記念し、狛江局と狛江市が共催し「絵手紙マラソン」を開催した。同時に「わたしのまち」をテーマに絵手紙を募集、全国から1600枚が集まった。
 また、絵手紙が狛江市の貴重な財産になるとして、活性化を目的に19年2月に『絵手紙発祥の地―狛江』実行委員会が設立され、絵手紙普及活動を行っている。
 夏目漱石、正岡子規、会津八一など昔から絵を添えた葉書を送る人はいたが、それを絵手紙と名付け、世に広めたのが小池氏。いくつもの出会いや経験が現在の絵手紙へと繋がっている。小池氏の功績、郵便局との関わりなどは次の通り。
 ▽昭和16年=松山市に生まれ、32年に17歳で武者小路実篤の『人を活かし自分を生かす』精神に影響を受け書家を志す▽36年=19歳から中学時代の友人、正岡千年あてに手紙を書き始める▽53年=『季刊 銀河』に特集され1年間で6万枚の絵手紙を書く▽63年=東京中央局で一日絵手紙局長を務める▽平成元年=手紙の普及拡大の功労に対して郵政大臣表彰▽10年=NHK教育テレビ『趣味悠々~心を贈る絵手紙入門』に出演▽11年=歌手・長渕剛さんとの絵手紙交流が始まる▽13年=札幌中央局で絵手紙千人講座▽16年=前島密賞を受賞▽17年=『絵手紙発祥の地―狛江』23周年記念講演会を開催。絵手紙メモリアルポストが狛江局に設置▽22年=狛江局一日局長を務める。
 たった一人で親友へ手紙を書き始めた運動は全国に及び、海外にまで広がっている。絵手紙愛好者は100万人にもなった。小池氏は全国各地で講演会を開き、本を出版するなど情熱は衰えることなく、絵手紙の原点「心を込めて書いたものは、例え下手でも見る人の心を動かす」を大切に、1日も欠かさず書き続けている。
 私も参加した平成26年度の絵手紙普及活動を紹介する。
〈絵手紙ひろば〉
 「誰でも気軽に手を取って始められる」を合言葉に、狛江駅に隣接するエコルマホール狛江市役所2階ロビーで年間18回開催。市役所ロビーでの開催は、別件で来庁した人へもPRができ、多くの未経験者の参加を増やすことができた。絵手紙教室連続講座の参加に繋げることができた。
〈絵手紙教室4回連続講座〉
 絵手紙ひろばでは行えない内容をテーマに、初心者から中級者向け講座を年2回実施し合計65人が参加した。季節の野菜や果物を画材に、はがきサイズの画仙紙に絵手紙を書いた。中でも好評だったのが、絵手紙に押す世界に一つだけの消しゴムハンコ作りだった。
〈第5回元祖☆親子絵手紙教室〉
 市内小中学校全校児童へチラシ配布した結果、14組34人、郵便局からも2組5人が参加。リピーターの親子が複数組いたことはたいへん喜ばしかった。参加した社員からも「ゆっくりとした時間の中で手紙の温かさを感じ、家では甘えてばかりの子どもが真剣に取り組む姿に、成長を感じた」との声をもらった。
〈絵手紙 七夕かざり〉
 狛江市内局の局長、社員から1人3~5枚、家族も巻き込み楽しみながら七夕かざりの短冊を作成、狛江市役所ロビーに設置された笹へ結びつけた。社員からは「普段は葉書や便せんに書くことに慣れているため、筆を使い細長い短冊を作成するのは難しかった」との声も聞かれた。狛江市役所ロビーに特設ブースを設け、季節の野菜や果物、あじさいなどの夏の花を画材に、楽しそうに願い事を書いて笹に飾る姿がとても印象的だった。
〈絵手紙 街角ギャラリー〉
 絵手紙教室などで作成された絵手紙を狛江市内局や商店で展示し、街行く人の目を楽しませている。季節ごとに入れ替え、自分の作品を探しに普段利用しない郵便局へ足を運んだり、郵便局や商店で絵手紙を知り絵手紙教室に参加した人もいた。郵便局の新たな活用方法を見出し、憩いの場として利用いただいている。
〈駅ナカギャラリー〉
 狛江駅構内の壁一面、自動改札機前などの目立つ場所へ絵手紙を展示するとともに、バスロータリーにそびえ立つ排気塔には巨大絵手紙が飾られている。現在は残念ながら走っていないが、絵手紙のラッピングを施したコミュニティバスも大活躍していた。
 27年2月8日、狛江駅に隣接するエコルマホールで来場者が1200人を超えた絵手紙イベント『ふらっとエコルマ オープンハウス ボリューム ファイブ』が開催された。
 郵便局も臨時出張所を開設、隣では絵手紙が体験できるブースを設け、記念切手を貼ってポストに投函できるようにした。当日しか押印できない小型記念日付印も作成、世界で1枚しかない貴重な絵手紙を体験する多くの笑顔が溢れた1日となった。
〈絵手紙講師派遣〉
 市内小学校6校のうち5校で実施した。3年生以上を中心に絵手紙講師を派遣、絵手紙の面白さを伝えるとともに、相手のことを考えながら想いを込めて書く手紙の大切さを知ってもらう良い授業となった。狛江岩戸南局も狛江第三小学校の隣にあり、登下校の折りには絵手紙先生と呼ばれ、郵便局にわざわざ顔を見せにくる児童もいる。郵便局と学校の関係が薄れつつある昨今、先生やPTAにも顔と名前を憶えていただけた貴重な機会となった。
〈狛江市内郵便局の役割〉
 『絵手紙発祥の地―狛江』実行委員会メンバーに口岩洋伸局長(狛江東野川)と私が参加し、毎年2月ごろに来年度の事業内容を策定し、毎月、事業内容の評価・反省をしている。狛江市内局も絵手紙ひろば、絵手紙教室、元祖☆親子絵手紙教室、絵手紙七夕かざりなどのポスターを掲出、チラシ配布、説明や案内をしながら少しでも市内外の皆さんが絵手紙に触れる機会を多く作り、記念切手、はがきなどの販売を行っている。
 年間行事は土日曜に行われるため協力しやすいが、毎月の事業はなかなか時間が取れず協力が難しいのが課題。局長だけでなく社員全員が勤務している地域を知り、興味を持つことで意識が変わり、お客さまに誇りを持って接することで「我がまちの郵便局として支えたい。なくてはならない郵便局。必要な郵便局」となるように活動を継続、さらなる活動の場を増やしていきたい。
 仕事をしていく上で仲間としてお互いに新しい発見があり、認め合うことでチームとして結束力が高まった。社員も絵手紙を書く楽しさや苦労話など、販売するだけでなく、お客さまと会話することによって信頼関係の構築にも繋がっている。
 局長、社員、家族も巻き込みながら様々な絵手紙関連事業に参加し、地域の皆さんとコミュニケーションを築くことによって、郵便局ファンの拡大に繋がり、「行きたい」と思っていただける郵便局作りを継続していきたい。
 また、何年も続けてきた絵手紙の普及活動で出会った多くの皆さんに協力してもらい、絵手紙への取組み、行政との太いパイプが構築されている。絵手紙を通じて様々なことを教えてもらい、感謝の気持ちでいっぱいだ。
 この感謝の気持ちを少しでも地域、仲間に還元できるよう何事にも前向きに挑戦していこうと思う。


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